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[MOM2668]東京朝鮮MFホン・リジン(3年)_「絶対に入る」。10番が狙い通りのFK弾

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後半26分、東京朝鮮高の10番MFホン・リジンが直接FKを決めて2-0

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[10.28 選手権東京都Bブロック予選準々決勝 東京朝鮮高 2-1 修徳高 実践学園高尾G]

 後半26分、東京朝鮮高の10番はFKになった瞬間、「絶対にこれ、入るな」と思ったのだという。ほぼ正面だったものの、距離は25m強。加えて、修徳高のGKは190cmの長身を持つGK下田響生(3年)だった。決して簡単なシチュエーションではなかったはずだ。

 キッカーのMFホン・リジン(3年)はロングスローでボールを手で触った際に、気温低下と夜露でピッチがスリッピーになっていることを感じていた。また、壁を越えてくるボールを警戒してか、GKが壁側に立っていたため、足元に蹴ればボールへの反応が遅れるはず…。「速いボールでGKの手前に落としてファーに入れれば、絶対に入る」。そう確信を持って右足を振り抜くと、壁を越えて1バウンドしたボールは予想通りに伸び、GKの上側を抜けてゴールに突き刺さった。

 それまではなかなかボールに絡むことができていなかった。1-0でリードしていたものの、むしろ思うようにプレーのできないイライラ感を抱いていた。だが、「イライラで強気になっていたかも」と笑うホン・リジンは、「オレが」と言ってきたCBチョン・ユギョン(3年)を制してボールをセットし、集中すると見事にゴールネットを揺らしてみせた。

 東京朝鮮のカン・ジョンジン監督は「(ホン・リジンのFKは)めっちゃ、調子が良かった」と明かしていた。前日のFK練習で名手GKカン・ブラマ(3年)相手にしっかり決めて良い感覚で試合に臨んでいた。そして見事に決めたホン・リジンについて「彼はウチのエース」と改めて信頼を口にしていた。

 ボランチを務める10番がゴール前の崩しにかかわるシーンは少ない。本人もそれを自覚しているが、「今までの10番に比べたら足元にも及ばないですけれども、チームが勝つのが大事なので徹することができれば。一瞬の攻撃の時とかに自分の持ち味を出せていければいい」。インターハイ予選準決勝の関東一高戦でミドルシュートを決めている10番は、黒子役に徹しながらここぞの場面で仕事をする。そして、エースナンバーを渡されている期待にも応えていくつもりだ。

 昨年度の準決勝は1ボランチとして先発したが、押し込まれ、声も出ず、足を攣らせて途中交代。「去年は自分のせいで負けた」と感じている。味の素フィールド西が丘での準決勝は自分にとって雪辱の舞台でもある。

 緊張も口にするホン・リジンだが、その一方で「思い切り楽しんでやれたらなと思っています」という。自分たちに期待している部分もある。「朝鮮が東京都代表で全国大会に出たって面白い話題じゃないですか。確実に高校サッカーとかに目が向くと思いますし、自分たちの学校にも注目が行くと思う。そういうことを楽しみつつ、自分たちの代は凄くサッカー、ボールを追っかけることを楽しんでいるので、難しいことを考えずに楽しめたらいい」。夏は代表決定戦(対関東一)でPK戦の末に惜敗。今冬はより楽しみながらプレーし、自分たちの力を発揮して壁を突破する。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2018

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