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[アルゼンチン戦まであと2日]ブラサカ日本代表・高田監督の猛ゲキ「釜本さんのために勝て!」

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 勝たなければいけない理由がひとつ加わった。日本代表・高田敏志監督が自ら切り出した。

「代表理事が変わることになったので、そのためにも4日は絶対に勝つ。それはみんなと確認しました。ブラインドサッカー(の監督)をやってきて『誰かのために勝て』と言ったのは初めてです」

 日本ブラインドサッカー協会の釜本美佐子代表理事が体調の不安等もあり、退任したことが1日、同協会より発表された。釜本代表理事は言わずと知れた日本屈指のストライカー、釜本邦茂氏の姉。50歳すぎてから網膜色素変性症の診断を受けた後、視覚障害を持った人とともに、すでに韓国で行われていたブラインドサッカーを現地に見に行った。帰国後にはじめた体験会が、日本国内に広まるきっかけとなった。いわば「日本のブラサカの母」とも言える存在だ。高田監督が続ける。

「弟さんもレジェンドですが、お姉さんもサッカー界にとってものすごい重要な方。僕が言葉にするのもおこがましいぐらいの方だと思っています」

 尊敬する釜本代表理事の言葉に、高田監督は救われたことがある。

「2015年に監督に就任後、欧州遠征でドイツやイングランド代表に勝ち、自信満々で帰ってきたのですが、昨年12月のアジア選手権に負けて今年6月の世界選手権すら出られなかった。勝っているときはいいけど、負けが込むと周囲もメディアも厳しい見方になる。サッカーの監督というのはそういうものです。そんなときに釜本さんは『自分の志を貫きなさい。あなたが折れてしまうと選手はついてこれない』と言ってくださった。監督を続けられるかどうか厳しい状況になっても、『志を信じてやれ』と言ってくれる人はいません。世界のブラインドサッカー界の誰も、日本がアルゼンチンに勝つと思っていないでしょうが、その試合で勝つ姿を示して、少しでも釜本さんに喜んでもらいたいと思います」

 「絶対に負けられない戦い」ではなく、「どうしても勝たなければいけない戦い」になった。

(取材・文 林健太郎)

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