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決勝ゴールのアンプティ日本代表・萱島に”あと一歩”を出させた「寄せ書き」

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萱島比呂(右)の決勝ゴールの瞬間

 鉛のように重くなった左足で、目の前に転がってきたボールを思い切り蹴った。0-0のまま迎えた延長後半6分。右サイドのFK。エンヒッキ松茂良ジアスの蹴ったボールは一度相手に当たったが、ゴール前に詰めていた萱島比呂はそのこぼれ球を逃さず、左足を振りぬいた。

「今日の試合が5試合目ということで、疲労があったが、精いっぱい最後まで走り切れたと思います。後ろでボールを回す予定でいましたが、ピッチの状況が悪く、杖が突っかかったりしたので、途中でロングボールに切り替えて攻めました」

 萱島は勝負どころの「あと1歩」へのこだわりを貫いた。前半20分すぎには右サイドのライン際で相手選手とボールを競り、ラインから出そうになったボールを奪って味方選手にパスし、攻撃につなげた。目の前にきたボールを泥臭く奪いにいき、生きたボールにする執念が貴重な決勝ゴールにつながった。

 普段は大分県職員として働く萱島は日本を出発する前、こう明かしていた。

「実は今回、職場の方から寄せ書きを頂いているんです。ワールドカップの出場は3回目になるんですが、今までで一番応援していただけている感じがします。だから、ベスト8、ベスト4といった、いい報告がしたいんですよ」

 1日の決勝トーナメント1回戦でメキシコ代表に敗れ、念願のベスト4、そしてベスト8の可能性は消滅した。それでも萱島は新しい目標を見つけて走り続けている。

「いま私たちが目指すことができる過去最高順位である9位をめざして、一丸となって頑張っていきたい」

 これまでの最高順位は前回2014年の11位。初の一桁順位に入って日本代表の成長の跡を残せれば、職場の人も帰国した萱島をきっと笑顔で迎えてくれるに違いない。


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