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[MOM2673]高岡一MF大矢達輝(3年)_自慢の右から得意な頭へ。“従兄弟ホットライン”で決勝進出

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2ゴールの起点となった高岡一高MF大矢達輝(3年)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.3 高校選手権富山県準決勝 富山工高0-3高岡一高 小矢部市陸上競技場]

 キックオフ直後の“従兄弟ホットライン”が決勝戦への扉を開いた。富山工高との準決勝に臨んだ高岡一高は前半1分、MF大矢達輝(3年)の左CKにDF大矢隼登(3年)が頭で合わせて先制点を奪取。同じ姓を持つ同級生2人は父親同士が兄弟という間柄。「どこか繋がっているのかなと思う」(達輝)という阿吽の呼吸が導いた決勝弾だった。

 この日、ピッチに立った達輝の頭部は試合前から包帯でグルグル巻きだった。準々決勝の富山東高戦で相手選手の頭と接触し、途中交代を強いられていたことによるもの。6針ほど縫ったという傷は1週間では癒えず、ホッチキスが残っているためいまも包帯は外せない。ヘディングはボランチの相方のDF稲垣岳(3年)に委ねるしかないという状態だった。

 だが、そんな手負いのキッカーはこの一戦でひときわ大きな輝きを放った。本来は左足のキックを担うMF水落健斗主将(3年)が準々決勝での負傷によって欠場したこともあり、あらゆるセットプレーが達輝の任務。すると前半1分、ベンチに控えるリーダーに代わってキャプテンマークを巻いた副主将の隼登とともに、得意のセットプレーでさっそく先制点を導いた。

「隼登はヘディングが強くて、今年のチームの特長」(達輝)。そんな武器を生かすため、西村コーチが相手マーカーを外すためのトリックを入念に準備していた。この場面はバスケットボールで主に使われる戦術で、ロシアW杯ではイングランド代表が見せていた『ピック・アンド・ロール』が奏功。うまくマークをはがした隼登がファーサイドできっちり合わせた。

 さらに達輝は前半20分、同じ左CKを今度はファーサイドに蹴り込むと、MF稲垣隼(2年)の折り返しに合わせたFW山本優太(1年)が追加点を奪い、2点目の起点ともなった。「キックだけは自信がある」と胸を張ったように、いずれも鋭く落ちるボールが相手の守備陣を翻弄した形。「足に当たる時だけ意識して蹴っているんですが、あのボールは自信がある」と自画自賛の働きで試合の行方を決定づけた。

 この勝利により、0-1で惜しくも敗れた夏のインターハイ予選に続いて富山一高との対戦権を獲得。高校年代最高峰のプレミアリーグEASTに所属し、冬の選手権予選では3連覇中という県内の王者であり、高岡一にとっては「絶対に全国に行きたい。あの時は苦しかったので必ずリベンジしたい」(達輝)という因縁の相手だ。

 学校にとって史上初の全国大会出場は、従兄弟2人にとって共通の悲願でもある。3年前、達輝は中体連の出町中、隼登は強豪街クラブのスクエア富山と別々のチームに在籍していたが、進路選択の際に達輝が隼登に相談。「一緒に行って全国を狙おう」とそろって高岡一高を選択し、そこから「全国を目指して3年間やってきた」のだ。

 そんな夢の舞台まであと1勝に迫った。「できればゴールに絡みたい。アシストとか、チャンスがあったらゴールも狙っていきたい」(達輝)。決戦は1週間後の11月10日。「ずっと呉東のチームが全国に出ていて、富山一高はプレミアリーグにも行っている。そこで呉西のチームが全国に行ったらきっと盛り上がると思う」という故郷・呉西地域の思いも背負って挑む。

(取材・文 竹内達也)
●【特設】高校選手権2018

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