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「高校でやめる考えだったけど…」王者・富山一に挑んだ富山中部、191cm守護神が語った『心境の変化』

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試合を終え、悔しさを隠せなかった富山中部高GK細岡玄

[11.3 高校選手権富山県準決勝 富山一高6-0富山中部高 小矢部市陸上競技場]

「決勝に行けるかなというか、最初から行くつもりでやってきた。対等に戦い合おうと思っていました」。準決勝の相手は県予選3連覇中の富山一高。高校年代最高峰のプレミアリーグEASTに所属する絶対王者だが、富山中部高の選手たちに気後れする雰囲気は全くなかった。191cmの長身を生かし、攻守で大きな存在感を放ったGK細岡玄(3年)はチームのメンタリティーを冒頭のように語った。

 実際、試合の立ち上がりは理想的な展開だった。「蹴ってハイボールで来るだろうなというのは予想していた」(細岡)という言葉どおり、リスクを負わずにボールを蹴り込む富山一に対し、4-4-2でコンパクトな布陣を敷く富山中部は盤石な姿勢で迎撃。前半30分ごろまで決定機をほとんど作らせず、藤澤昌史監督も「予定通りに進んでいた」と思い返す。

 前半38分、クリアボールが複雑に跳ね返るアンラッキーな形で先制点を献上したが、それでも「ハーフタイムは0-1でも良かった」と指揮官。しかし、運命を分けたのは2失点目だった。「少しプレッシャーが弱くなってしまった」ことでミドルシュートを決められ、そこからは「相手が余裕を持ってしまった」。2点差が開いたことで「選手層の違いもあり、ひっくり返すのが難しかった」と振り返った。

 以降は相手の勢いに押される形が続き、終わってみれば0-6の敗戦。細岡も鋭い反応で何度もビッグセーブを見せたが、25本のシュートを浴びせられ、いくつかの場面でゴールを明け渡すしかなかった。試合終了直後、何度も何度もピッチに倒れこみながら整列に向かった守護神だったが、取材時には「こういう悔しい思いができるのも高校サッカー」とすっきりとした表情で語った。

「ベスト4は総体と同じ結果。本気で優勝しようと思っていたし、選手たちはよく頑張ってくれたけど、アイツらはもっとやりたかったんじゃないかな」。ここまでチームを率いてきた藤澤監督は目を細めながら述べ、選手たちの悔しさを推し量る。

 そんな“もっと”の思いは細岡の言葉にも表れていた。

「もっとキックの精度を上げなければいけなかった。強い人のところに行くと跳ね返されるので、サイドラインのギリギリのところとか、味方がいるところに正確に飛ばす技術があれば……」。高校サッカー生活はこの試合で幕を閉じたが、自身の成長意欲を率直に語った細岡。「ただ、ハイボールはだいたい負けないですね。競り負けて入れられたってことはないです」と自身が持つ武器に矜持ものぞかせた。

 高校卒業後は関東圏の大学に進学予定。「前までは高校でサッカーをやめる考えだったけど、周りの人たちが良くしてくれて、本当に楽しかった。こんなにサッカーで楽しい経験ができるとは思いませんでした」。そうはにかんだ細岡は「ずっとやめるんだろうなって思ってきてたので、まだ決めることができないですね」とぽつり。高校サッカー生活の終わりを迎え、心境の変化に直面しているようだ。

(取材・文 竹内達也)
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