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史上初の世界トップ10入り。アンプティ日本代表のスタミナ源となった”地獄”の宮崎合宿

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同点弾を決めた川西健太(右)とエンヒッキ松茂良ジアス

 待望の長い笛を聞いた瞬間、エンヒッキ松茂良ジアスはピッチに仰向けに倒れ、メキシコの夜空にクラッチ(杖)をつきあげた。2試合連続となった延長戦の決勝ゴールをあげても、エンヒッキには立ったまま喜びをかみしめる余力が残っていなかった。

「アフリカ勢は体力もスピードもとてもあって、とても厳しい試合だったが、逆転して勝ててよかった。1点取られた後も2点返せたのは、チーム一丸となって、みんな一生懸命に戦った結果だと思う。今日の試合で世界のトップ10には入れたことは嬉しいが、明日の試合もしっかり勝って、日本に帰りたいと思う」

 これまでの最高順位は前回2014年の11位。世界のトップ10入りを初めて確定させても、ベスト4に入れなかった悔しさの方が募る。1点を先制された後、後半12分に同点弾を決めた川西健太も「冷静に当てて、決めるだけのシュートだったと思うので、今後のためにもしっかり決められてよかった。あと1勝すれば、ひと桁順位になるので、気を引き締めて頑張りたい」と語ったように、一つでも順位をあげて終わりたい、という雰囲気が充満している。

 疲れていても何とか体を動かす気力は、灼熱の宮崎で培われたといっても過言ではない。今年7月14~16日にW杯にむけた1回目の合宿が行われた。宮崎の気温は32度。最低気温でも26度あった。主将の古城暁博が振り返る。

「2泊3日だったんですが、初日は本当にきつかったです。影もひさしもなくて逃げられない。足を動かさずにいると、熱でやけどしてしまうのではないか、というぐらい暑かった」。

 最終日は健常者のジュニアユースの選手と試合を行い、1-0で勝った。エンヒッキも「運動量が求められた試合で1-0で勝てたのは日々の練習の結果だし、自信になった」と明かした。休みなしで6試合戦う準備は、決して間違っていなかった。

 日本代表・杉野正幸監督にも、はじける笑顔はない。

「なかなか決められなくて、50分間で決着がつけられなかったのは非常に残念だった。ただ、苦しい中でも勝ち越しの1点を全員で守りきることができてよかったです。1点先制された後に、少しばたついたけれども、追いつく力、追い抜く力がここにきてできたと思う。明日は我々ができる最大限の9位を掴み取り、実績を残して日本に帰りたいですね」

 日本代表は、「史上初のひと桁順位」の扉に手はかけた。後はどれぐらい力を振り絞って、開けられるか。きょう5日のハイチ代表戦で、日本代表戦士の思いの強さが試される。

(取材・文 林健太郎)

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