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前後半でペース一転。バイタルの人数増やし、攻略した北越が新潟明訓に逆転勝ち!:新潟

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後半22分、MF筒井隆斗のゴールを喜ぶ北越高イレブン

[11.4 選手権新潟県予選準決勝 新潟明訓高 1-2 北越高 五十公野公園陸上競技場]

 前半と後半は全く別の試合を見ているようだった。選手権新潟県予選準決勝の新潟明訓高北越高の一戦は、前半は圧倒的な新潟明訓ペースであったのに対し、後半は全く逆の圧倒的な北越ペースで試合が進んだ。

 ともにプリンスリーグ北信越に所属し、リーグの対戦成績は新潟明訓の2勝(3―0、3―1)。だが、「あそこまでやり方を変えて来るとは思わなかった」と新潟明訓・田中健二監督が語ったように、北越はこれまでのフラットな2トップから、エース小林心(3年)を1トップに置き、2年生のMF大井佑馬をトップ下に置く、4-2-3-1でスタート。FW庄内碧(2年)をベンチに置くなど、変化を加えて来た。

 だが、前半はその北越の狙いを打ち消すほど、新潟明訓が迫力ある攻撃を展開した。新潟明訓は北越の4バックに対し、稲見直也(3年)と薗部太郎(2年)の2トップが徹底したプレスを仕掛け、さらにセカンドボールを回収すべく、高橋一誠(2年)と熊木唯人(3年)のダブルボランチも北越のダブルボランチに猛プレスを掛けた。これに北越の守備組織は完全にハマってしまい、ビルドアップが出来ない状況に陥ってしまった。

  31分、新潟明訓は左サイドでスローインを得ると、稲見の特大ロングスローがファーサイドに飛び込んだCB落合毅人(3年)の頭に一直線に届く。185cmの落合の高い打点のヘッドが決まり、新潟明訓が先制をした。

 その後も新潟明訓は181cmのMF石塚琉太朗(3年)、落合、184cmのCB斎藤優貴(3年)の圧倒的な高さを活かしながら、試合を優勢に進めたが、183cmのGK甲斐雅基(2年)を中心に北越が耐え凌ぎ、前半を1点差で折り返した。

 北越にとっては前半を最少失点で終われたことが大きなプラスに作用した。ハーフタイムに「守備よりも攻撃面でアドバイスをした」と荒瀬陽介監督が語ったように、本来の狙いである攻撃の構築を再確認したことで、後半立ち上がりから北越の攻撃力が爆発した。

 1トップ1シャドーにした狙いは、バイタルエリアの人数を増やすことにあった。両サイドからカットインするドリブルをきっかけに、高月創太(3年)と筒井隆斗(3年)のダブルボランチが前向きにバイタルエリアに進入することで、トップ下の大井を含めると、4〜5人の選手がこのエリアに入り込んで、得意のショートパスで崩して行く。

「バイタルエリアの人数が増えることで、相手のボランチやDFラインが食いつくので、1トップの自分がフリーになれる。高い位置でボールを受けて、自分から仕掛けても良いし、湧き出て来る1.5列目をシンプルに使って崩せると思った」。後半40分間はまさにこの小林の言葉通りの展開になった。

 開始早々の1分に小林がカットインから強烈なシュートを放ち、反撃の狼煙を上げると、勝負どころと見た荒瀬監督は9分に大井に代えて、庄内を投入。18分には左サイドハーフの河野一輝(3年)がカットインから裏に飛び出した小林へスルーパス。小林のシュートは新潟明訓GK竹内槙吾(2年)のファインブロックに阻まれるが、22分、バイタルエリア中央でボールを受けた高月が、右サイドから中央に入り込んでいたMF宮川共栄(3年)に縦パスを通す。宮川はさらにゴール前中央に潜り込んでいた小林にクサビのパスを打ち込むと、「僕に相手DFが一斉に食らいついて来ていたので、タメてから落としました」と、小林は背後から走り込んで来た筒井へ落とした。これを筒井が冷静に蹴り込んで、北越が鮮やかな崩しで同点に追いついた。

 さらに攻め手を強める北越は、36分、左サイドでボールを受けた庄内が反転からゴール中央に潜り込んだ途中出場のMF坂本元悠(3年)にクサビのパス。これを坂本が鮮やかなトラップで抜け出すと、GKとの1対1を制し、値千金の決勝弾を叩き込んだ。

 前後半でまったく逆の展開となった激戦は、2-1で北越が勝利し、有田光希(現・愛媛FC)を擁して優勝を果たした09年度以来となる9年ぶりの決勝進出を果たした。「9年前に選手権出場を決めたシーンをビッグスワンで観ていたので、凄く今はワクワクしています。決勝で勝たないと意味が無いので、この一週間を高く持ちたいと思います」(小林)。

 北越にとっては9年ぶりの悲願達成に王手を掛けた。一方で新潟明訓もこれで今年度の戦いが全て終わった訳ではない。プリンスリーグ北信越王者である彼らには、悲願のプレミアリーグ初昇格というとてつもなく大きな戦いが残っている。「選手権で負けてしまったのは悔しいけど、後輩達のためにプレミアリーグ参入戦は絶対に制して、これまでの先輩達が出来なかったことを成し遂げたい」。落合が涙ぐみながらもこう語ったように、新潟明訓サッカー部史上だけでなく、新潟県サッカー界のためにも重要な戦いだけに、気持ちを切り替えて12月の決戦に臨まんとしている。

(取材・文 安藤隆人)
●【特設】高校選手権2018

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