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甲府内定の東海大相模MF中山は涙の敗退。予想上回る進化で掴んだプロの世界で1年目から「勝負」

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ベンチスタートとなった東海大相模高のU-17代表MF中山陸と桐光学園高のU-16代表FW西川潤(奥)との注目対決はわずか30分ほどに

[11.4 選手権神奈川県予選準決勝 東海大相模高 0-4 桐光学園高 等々力]

 懸けてきた舞台での戦いは涙の終幕となった。0-4。負傷交代したMF有馬和希主将(3年)から託されたキャプテンマークを左腕に巻いた甲府内定MF中山陸(3年)は、顔を覆ったまま動くことができない。対戦した桐光学園高の選手が2人、3人と歩み寄って声を掛けるが、涙で反応することができず。桐光学園のCB望月駿介主将(3年)に励まされながらようやく整列へ向けて歩み出した中山だったが、挨拶の段階になっても、またスタンドへ挨拶に行く際にもその手はまだ顔を覆ったままだった。

「自分のせいでケガして最初から出られず、チームに迷惑かけたし、だから後半やろうという思いはあったんですけれど、点を決めれず、逆に追加点を……」。万全ではなかった。東海大相模高のU-17日本代表MF中山は9月末に太腿の違和感を感じ、それは回復の兆しが見せていたが、10月のU-17日本代表福島合宿で別の箇所が悪化。全治3週間ほどの状態であると診断された。

 代表チームを離脱し、回復と選手権の準備に務めていたが、10月27日の準々決勝では「30パーセントの状態。(練習で)対人をやっても中山陸じゃない」(有馬信二監督)というコンディションだった。そこから状態は向上したものの体力面の不安もあり、U-16日本代表の注目FW西川潤(2年)擁するインターハイ全国2位・桐光学園との大一番もベンチスタートに。チームは中山投入直前に失点し、2点を追う後半10分から出場することになった。

 出場5分後に再び失点。それでもピッチに入った中山はギャップでボールを受ける上手さ、鋭く侵入していく動きを披露する。そしてPAへ走り込む選手へピンポイントのラストパスを入れ、枠へのシュートも。スタンドがどよめくようなプレーも見せ、チームもゴール前のシーンを増やしていた。

 中山とともにチームのキーマンだった有馬やMF中島優太(3年)がピッチを後にする中、J内定のMFは他の仲間たちと奮闘。だが、逆に突き放され、0-4で敗れた。中山は特別指定された甲府でルヴァンカップ準々決勝(9月)に出場し、ゴールも決めている。プロを相手に結果を残したMFが特別な思いを持ってスタートしていた選手権。だが、自身の怪我もあって悔しすぎる敗退となった。

 東海大相模は中山や有馬監督の息子の有馬主将が入学する前年は選手権1次予選で敗退。7月の段階で選手権が終わっていた。そこから彼らが入学した年は選手権予選ベスト16。昨年はインターハイ予選で優勝し、全国1勝を果たした。また県1部リーグで優勝し、選手権予選も8強。今年は関東大会予選で再び頂点に立つと、選手権予選も4強入りし、等々力陸上競技場という大舞台で試合をするまでになった。

 有馬監督が「彼らが来なければ歴史は作れなかった。感謝ですね」と話す世代の中で最も成長したのが中山だった。「この子は伸びると思っていたけれど、予想以上に伸びました。(人間性も優れており)学校で彼について悪いことを言う先生はいないですよ」(有馬監督)という人間性と日常の姿勢、努力で個を高めてきた。
 
「凄く内容の濃い3年間だった」と中山。選手権での悔しい敗退もエネルギーに変えて、これからはプロの世界で新たな目標にチャレンジする。「この負けは一つしっかり心に残しておいて、苦しい状況でもしっかり自分のプレーができるよう、素晴らしい選手になれるように。甲府でも1年目から試合に出て代表に選ばれるようになって、そして海外でも活躍できるような選手になっていきたい。次の1年目、しっかり勝負していければいい」。甲府の柱、そして代表へ。3年間で周囲の予想を上回る進化を遂げたMFが、プロでその成長を加速させる。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2018

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