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ワールドカップで史上最高の10位。アンプティ日本代表に蓄積された「財産」

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川西健太(手前)、萱島比呂(右)、エンヒッキ松茂良ジアス(右)は4年後も目指せる選手たちだ

[11.5 順位決定戦(9-10位) 日本代表1-2ハイチ代表]

 あと1歩が近いようで遠かった。試合終了間際の後半23分に、1-1に追いついた直後の24分すぎ、前線にいたハイチのFW選手に3人が反応する。しかし、シュートコースを消せずあっさりと右足を振りぬかれた。あまりにもあっけない幕切れ。ネットが揺れる瞬間を間近で見た古城暁博はひざから崩れ落ちた。杉野正幸監督がチームを代表してこう明かした。

「前回大会よりも1つランクを上げたということで留まってしまった。これが4年かけての結果としては、物足りない。同時に世界のレベルも上がっていることも感じました。今大会を振り返ると、なかなか我々が主導権を握れる試合はないなと実感しました。失点を抑えて、相手よりも1点でも多く取って勝つ。もしくは、PK戦までもつれこむ試合展開になるようなベンチワークを、もっと強化していく必要があると感じています」

 日本代は7試合戦って4勝。うち3勝は相手を無失点に抑える完封勝ちだった。しかし1点とられると堅守速攻の切り替えをいつも以上に早めて点をとりにいかなければいけない。スプリント能力を繰り返す力が日本はヨーロッパの強豪国より低く、世界とのフィジカルの差をどう埋めていくかが課題だ。

 さらにアシスト、ゴールと点に絡む仕事をし続けたエンヒッキ松茂良ジアスは日本を出発する前、こう明かしていた。
     
「(アンプティサッカーの普及をはじめてから)ようやくここまで来たか、という気持ちもあるけど、世界を目指すにはもっと競技人口を増やさないといけない。競争率が高くなれば、1試合1試合のレベルもあがり、代表の強化につながると思うからです」

 いい成績を残すことでメディアに取り上げられ、そのことが普及をすすめる後押しになる。その思いが、目標としたベスト4に届かなくなっても、モチベーションを維持できた理由のひとつだった。

 幸い、今大会3得点をあげた川西健太はW杯は初参加。ピッチに立つことができなかったが、15歳1か月で代表に選ばれた近藤碧や15歳9か月の秋葉海人も、、突然キックオフ時間の変更を通達される「アウェーの洗礼」を肌で感じられた。副将のエンヒッキは29歳、萱島比呂が22歳とこちらもまだ若い。今大会経験した収穫、試練は4年後、さらに歴史を塗り替えるための、大切な財産になったはずだ。


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