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打倒・私立の執念!公立校の松陽が後半ATに追いつき、PK戦制して鹿児島4強入り!

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PK戦勝利を決めた松陽高の選手たちがピッチになだれ込んだ

[11.8 選手権鹿児島県予選準々決勝 鹿児島高 1-1(PK3-4)松陽高 桷志田サッカー競技場]

 “公立の雄”が私立の壁破り、鹿児島4強へ! 第97回全国高校サッカー選手権鹿児島県予選準々決勝が8日に行われ、新人戦準優勝の鹿児島高と新人戦、総体予選4強の松陽高が激突。1-1で突入したPK戦で交代出場のGK吉村虎太郎(3年)がシュート2本をストップし、松陽が4-3で勝った。松陽は9年ぶり進出の準決勝(10日)で鹿児島城西高と戦う。

 近年の鹿児島県の高校サッカーは主に私立勢が牽引してきた。鹿児島実は全国優勝2回の伝統を持ち、過去10年は鹿児島城西高が6回、神村学園高が4回の全国出場。今年は鹿児島が初めて出場した九州新人大会で8強入りを果たしている。加えて、選手権予選では過去8年連続で私立勢が4強を独占。だが、今年、向薗秀隆監督が「公立の負けん気根性を持ってくれている」という松陽が私立4強の壁を破り、今年3度目の4強入りを果たした。

 新人戦準決勝で対戦している両校の再戦は、互いに慎重な序盤に。新人戦の際、2-0で勝っている鹿児島は少ないタッチのパスワークやMF横道俊輔(3年)のハイサイドへの配球でCKを獲得し、そこからシュートシーンを作り出していく。バイタルエリアで前を向く2年生FW原口頼のキレのあるドリブルや左MF宮田尚弥(2年)の縦突破もアクセントにゴールへ迫った。

 だが、向薗監督が「これ(新人戦、総体予選)まで準々決勝までは得点できても、準決勝で得点できませんでした。そこで点を獲れるチームになろうと取り組んできました」と語る松陽も個々の技術が安定し、簡単にはボールを失わない。そして、MF冨ケ原粹(3年)の左足の配球や、推進力ある右MF吉田篤史(3年)の縦突破、左MF山際斗夢(3年)の柔らかいドリブルも交えてサイド攻撃を繰り出した。

 だが、鹿児島はDF田中琉也主将(3年)を中心とした3バック、松陽もGK飯山寛也主将(3年)や4バックが相手のクロスやDFライン背後へのボールに対応。後半4分にFW田之上晴輝(3年)のヘディングシュートがクロスバーをかすめるなど鹿児島が押し気味に試合を進めたが、松陽も食い下がって得点を許さない。

 試合は後半29分、相手の一瞬の隙を突いた鹿児島が先制する。空中戦の強さを発揮していたDF前田怜空(3年)が右サイド後方からPAへ向けてロングフィード。これをFW有木悠也(3年)が頭で競り勝つ。ボールは松陽のDFがガードし、GKがキャッチしようとする。だが、その間に巧みに足を入れた田之上がゴールへ押し込んだ。

 田之上の抜け目のないゴールによって鹿児島が先制。だが、冨ケ原が「自分たち公立でベスト4になると周りは全部私立なんですよ。そういうところで負けられないという執念があったのかなと思っています」と話したように、打倒・私立に燃える松陽は諦めない。

 元々攻撃的なポジションだという左SB上原日々来(3年)を前線に上げた松陽はアーリークロスやセットプレーからシュートチャンス。GK飯山が接触プレーで頭部を負傷し、急遽、吉村に代わるアクシデントがあったが、松陽は気迫の攻守で1点を目指し続ける。そして、アディショナルタイム突入後の41分、MF森脇慶太(3年)の右CKがGKの頭上を越えてファーサイドへ。これを交代出場のDF槐島大介(2年)が左足で折り返すと、CB朝戸隆勝(3年)のシュートのこぼれ球を交代出場のFW田添有真(3年)が頭で押し込んで同点に追いついた。

 劇的な同点ゴールに松陽イレブンは大興奮。そして、前後半80分間終了後に始まるPK戦の直前、松陽の選手からは「頼むぞ、虎太郎!」の涙ながらの声が飛ぶ。その期待にGK吉村が応えた。先攻・鹿児島の1人目、有木のシュートを右へ跳んでストップ。対して松陽は1人目の朝戸から冨ケ原、森脇、そして吉田と4人連続で成功する。最後は鹿児島5人目・田中の右足シュートを吉村が右へ跳んで完璧にストップし、決着をつけた。

 ベンチ、応援席から一斉にピッチへ飛び出した松陽イレブン。負傷交代した飯山をはじめ、何人もの選手が涙を流して勝利を喜んだ。例年、学業に専念するためにインターハイ後に引退する選手が多いという松陽だが、今年は17人の3年生が選手権まで続行。選手権に懸ける選手たちは夏に初めての大阪遠征を経験し、履正社高や大阪桐蔭高といった強豪相手に自信もつけていた。

 そして、何より気持ちの強さで紙一重の勝負を引き寄せた。「気持ちですね。技術では鹿高(鹿児島)や神村学園には勝てないと思うんですけれども、気持ちと運動量だけはこの県内でどこにも負けていないと思っている」と冨ケ原が語り、「私立の壁を越えるという選手たちが集まっていましたし、私立の壁を越えられずに悔しい思いをしたOBの方々からも『次は勝ってね』という強い声がけをもらっていたので、自分たちの代で私立の壁を越えようと話していました」と田添も頷く。指揮官も選手たちの気持ちで掴んだ勝利であることを強調していた。

 ただし、彼らにとって4強入りはまだゴールではない。冨ケ原は「『県で戦える』ではなくて、『全国で戦える』チームを目指しているので、全国の舞台に出て活躍することが自分たちの目標」。準決勝で戦う鹿児島城西をはじめ、4強の残り3チームはいずれも私立勢。その壁を破り続けて、松陽が全国初出場を勝ち取る。

 
(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2018

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