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普通じゃなかった3年生!? 宇和島東MF立木耕貴「2年生からしたら微妙かもしれない…」

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優勝カップを高々と掲げる宇和島東高MF立木耕貴(3年)

[11.10 選手権愛媛県予選決勝 宇和島東高2-0八幡浜工高 ニンスタ]

 本来ならサッカー部を引退している時期だった。しかし、夏に味わった悔しさが原動力となって、まだ高校サッカーの舞台に立ち続けている。そして、迎えた愛媛県予選決勝。宇和島東高MF立木耕貴(3年)はキャプテンマークを巻いてピッチに立ち、8年ぶりの選手権出場に大きく貢献した。

 今夏、全国高校総体に出場した宇和島東だったが、初戦の米子北戦を0-4で落として大会から姿を消すことになった。立木は語る。「普通だったらインターハイ後に3年生は引退する」と――。しかし、「『今年はもう一回全国狙おう』と皆で集まり、引退しそうな選手には声を掛けて説得した」結果、「16人中14人が残った」(FW豊田湧)という。

 当時、チームキャプテンを務めていた立木だったが、「インターハイが終わったら、毎年キャプテンはしっかり世代交代して、選手権には新チームで挑むことになっている」ため、チームキャプテンには2年生のMF岡崎翔が就任。本来なら身を引く状況だった立木は、「最初の方は気を使っていた」と今までとは違う立場に戸惑いもあったようだが、「でも、それではチームのためにならない」と何のためにプレーを続けているのかを考えた。なぜかと言えば、選手権に必ず出場するため。そのためには、気を使っている自分は必要なかった。

「チームのために自分が伝えたいことはしっかり伝えなければいけない。チームとして良い方向に少しでも向かうようにと意識して、岡崎キャプテンを支えようとした」

 迎えた愛媛県予選決勝では、ベンチスタートとなった岡崎に代わってキャプテンマークを巻いてチームをけん引。後半26分に豊田との鮮やかな連係から先制点をアシストするだけでなく、終始声を出して仲間を鼓舞し続け、チームを2-0の完封勝利に、そして8年ぶりの選手権へと導いた。

 引退を伸ばしてまで目指した選手権の舞台。見事に全国行きの切符を手に入れて安堵の表情を浮かべる。「2年生からしたら、3年生の多くが残ったのは少し微妙な感じだったかもしれない」と苦笑しつつも、「でも、『3年生の力を借りながら自分たちも成長していきたい』と言ってくれたので、チームとしてすごくまとまった。少しでも、このチームで長くできるように選手権でも一つずつ勝ち進んでいきたい」と視線を上へと向けた。

 本当に最後となる高校サッカー。最高の仲間と一日でも多くの時間を過ごすため、チーム一丸となって全国の猛者に挑む。

(取材・文 折戸岳彦)
●【特設】高校選手権2018

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