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[MOM2696]岐阜工MF羽鳥大貴(3年)_優勝導くPK奪取!勝敗分けた判断とファーストタッチの精度

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先制点を挙げるだけでなく、決勝PKを獲得したMF羽鳥大貴(3年)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.10 選手権岐阜県予選決勝 中京学院大中京高1-2岐阜工高 長良川]

 過去3年半もの間、固く閉ざされた全国の扉をこじ開けたのは、右サイドの高速アタッカーの岐阜工高MF羽鳥大貴(3年)だった。

 縦への仕掛けが得意な羽鳥にはずっと意識をしていたことがある。それはファーストタッチの精度だ。「ボールを受ける前に相手の位置や味方の位置、ボールの回転など細かい部分まで確認して、ファーストタッチの時点で自分が優位に立てるようにプレーすることを意識しています。ウチのチームは(攻撃の際に)セカンドボールを拾って仕掛けることが多いので、いかにワンタッチでいい状態にして前を向いて仕掛けられるか。ここは普段の練習からずっと意識をしています」。

 中京学院大中京高との決勝では、このファーストタッチが試合の勝敗を分けた。前半は相手の攻撃に対して、この試合に向けて準備してきた組織的な守備を忠実に実行すると、0-0で迎えた後半は持ち味である縦への仕掛けを積極的に行った。後半7分にMF熊澤瑞希のシュートのこぼれを押し込んで、羽鳥が均衡を崩す先制点を叩き出すと、14分には前述した勝敗を分けたシーンが訪れる。

 右サイドのタッチライン付近でFW森龍がボールを持つと、中にポジションを取っていた羽鳥は縦パスを受けるべく、相手SBの前に出ようと走り出した。その動きを見て、森が右足インフロントでインカーブを描く縦パスを送ると、ボールは相手DFの手前でバウンド。このとき、ボールがスリップする形で加速をした。

「最初は相手サイドバックの前でボールを受けようと思ったのですが、森のパスがちょっとスリップして加速したのを見て、サイドバックの前より裏で受けた方が良いと咄嗟に判断を変えました」

 走る軌道を変えて、相手の裏に抜ける形で森のパスを引き寄せると、「サイドバックの前に出ることができたので、あとはファーストタッチを前に出せば、中にいるセンターバックもこっちに食いついてきて、中央にいる熊澤がフリーになれると思った」と、折り返しのイメージを持ちながらワンタッチで中へ切れ込んだ。

 すると、入れ替わる形となったDFの足が背後から掛かり、羽鳥は前のめりで倒れ込んだ。次の瞬間、主審のホイッスルが鳴り、岐阜工にPKが与えられた。これを森がきっちりと決めて2-0。後半アディショナルタイム4分に1点を返されたため、このゴールがチームを優勝に導く決勝弾になった。

 1ゴールと決勝点を生み出したPKを獲得。羽鳥が積み重ねた日頃の練習の成果がはっきりと形になり、チームを4年ぶりの選手権出場に導いた。「もっと自分のところからチャンスを作りたい。もっと精度の高い仕掛けをして、全国で岐阜工のサッカーを多くの人に観てもらえるようにしたい」。

 待ち望んだ全国大会では、さらに進化したファーストタッチからの決定的なプレーを披露すべく、重い扉をこじ開けた勢いそのままに、羽鳥は『岐阜の盟主復活』の狼煙を上げる役割を率先して引き受ける。

(取材・文 安藤隆人)
●【特設】高校選手権2018

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