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八戸学院野辺地西が2度のビハインド跳ね返して逆転勝ち。「絶対王者」青森山田の待つ決勝へ:青森

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苦しい戦いとなった八戸学院野辺地西高だが、MF沼倉幸哉(左)の決勝点によって競り勝った

[11.15 選手権青森県予選準決勝 東奥義塾高 2-3 八戸学院野辺地西高 青森県総合運動公園陸上競技場]

 八戸学院野辺地西が宿敵との決勝へ――。第97回全国高校サッカー選手権青森県予選準決勝が15日に行われ、八戸学院野辺地西高が東奥義塾高に3-2で逆転勝ち。決勝(17日)で大会21連覇中の青森山田高に挑戦する。

 今年2度の青森県1部リーグでの対戦は、八戸学院野辺地西が4-1、5-0で2連勝。八戸学院野辺地西優位と見られた試合だったが、東奥義塾が鮮やかな形での攻撃から先制点を奪う。

 前半9分、後方からサイドを変えてビルドアップした東奥義塾は、前線から中盤に降りたFW 増田隼人(3年)がグラウンダーの縦パスを入れる。これを手前で1人がスルーすると、食いついた野辺地西DFの裏を取る形で俊足FW田谷和宏主将(3年)が抜け出す。一気に加速した10番はGKを左側からかわし、左足で先制点を流し込んだ。

 立ち上がりから相手を飲み込もうという狙いに反してリードを許した野辺地西はすぐさま反撃を開始する。ボールを支配してサイドへ運び、そこからMF沼倉幸哉(3年)や交代出場のMF工藤拓人(2年)がドリブルでの仕掛けにチャレンジ。また180cmの長身10番MF佐々木大羅(2年)やCB舘睦人主将(3年)と左SB舘澄人(3年)の“舘ツインズ”のミドルシュートなどで同点を目指す。

 圧倒的に攻められる時間の増えた東奥義塾だが、最終ラインの選手たちが対人のところで粘り強い対応。押し込まれてもゴール前で踏ん張り、簡単には決定打を打たせない。逆に良い形でMF清野咲哉(2年)やMF中村洸太(2年)が前を向いた際には、“要注意人物”の田谷までボールを通してカウンター。一発があるところを示していた。

 だが、前半40分、簡単にセットプレーを与えてしまい、そこから追いつかれてしまう。野辺地西は舘睦が左サイド後方から蹴り込んだFKをファーサイドのMF黒滝創心(3年)が頭で折り返す。これを中央の佐々木が右足でねじ込んで1-1とした。

 それでも東奥義塾は後半2分、相手の一瞬の隙を突いた田谷が増田のパスから抜け出して2点目のゴール。紫色のスタンドに再び歓喜をもたらした。一方、思い通りの展開に持ち込むことのできない野辺地西だが、舘睦が「ビハインドが続いたんですけれども、『自分たちならできる』と再確認して、絶対にできるという気持ちでやっていました」と振り返り、三上晃監督も「失点しても自信を持ってプレーしていた」と分析したように、気持ちを落とさずに戦い続ける。

 すると、7分、中央でのコンビネーションからMF洞内洸哉(3年)のパスを受けた工藤が右足シュート。これが相手オウンゴールを誘って同点に追いつくと、12分には舘睦がPAへ入れたFKのこぼれを沼倉がゴールに押し込んで逆転に成功した。

 後半9分から身体能力の高いMF宍戸勇介(2年)を中盤の底に入れた野辺地西は、危機察知に優れるCB羽立俊理(3年)や舘睦を中心に相手のカウンターに対応。失点シーンの後はシュートを打たせずに試合を進める。攻撃面では突破した後やシュートチャンスでの判断が悪く、粘る東奥義塾から追加点を奪えなかったが、それでも1点差のまま勝利。決勝進出を決めた。

 決勝の相手は昨年の選手権予選決勝、県新人戦決勝、インターハイ予選決勝でいずれも敗れている青森山田だ。00年以降の県新人戦、インターハイ予選、選手権予選で全て優勝している絶対王者に食い下がり、土をつけることができるか。

 今年は佐々木や沼倉、工藤、舘兄弟ら「打倒山田」を掲げて野辺地西に進学した面白い個もいる。三上監督は青森山田の各選手のレベルの高さを認めた上で「個々の部分で負けてしまうと、チーム全体が崩れてしまう。一人ひとりが責任を持って戦うこと」と語り、個々が踏ん張ること、そして失点を最小限に抑えることを決勝のテーマに掲げた。

 三上監督は「今年こそ、山田の牙城を崩したい」と語り、舘澄は「ずっとこの日のために準備してきたので、今までやってきたことを全て出せるように準備したい」と意気込んだ。試合直後のミーティングでは「人生で一番のゲームをするためには、人生で一番いい準備をしなければいけない」という声がけがあった。“波乱”を起こすことの難易度が非常に高いことは確か。それでも最高の準備をして決戦を迎える。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2018

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