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[MOM2714]草津東MF森稜真(3年)_“布引”に愛された男。朝練の盟友が導いた劇的同点弾

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MF森稜真(3年)のゴールを喜ぶGK加藤直(3年)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.17 選手権滋賀県予選決勝 草津東高2-1(延長)綾羽高 布引]

 諦めかけた時間帯だった。草津東高は0-1で迎えた後半アディショナルタイム4分、途中出場のMF森稜真(3年)が起死回生の同点ゴールを叩き込んだ。

 森は準々決勝水口戦(○1-0)で腰を打撲して負傷交代となり、準決勝伊吹戦(○6-0)は欠場。この日はベンチスタートで後半11分にピッチに入り、サイドハーフ、本職のトップ下でプレーした。チームは交代策でも流れを引き寄せられず、苦しい時間帯が続くと、そのままアディショナルタイムに突入。牛場哲郎監督が「難しいかなとは考えていました」と振り返れば、森自身も「負けるかな」と覚悟しかけたラストチャンスを仕留めた。

 左CKを得た草津東は主将のGK加藤直(3年)も前線に上がる最後のパワープレー。森自身はこぼれ球を狙おうと考えていたが、加藤に「中で勝負しろよ」と声をかけられ、ゴール前へ。MF山本佳輝(3年)が右足でクロスを蹴り入れると、味方の背後から森がヘッドで捉え、ゴールネットを揺らした。

 2人は1年生のときから自主的に朝練を続けてきた盟友だった。テスト期間以外は6時に起床し、7時40分頃から約45分間のトレーニングに励んでいる。1年生の頃は5時半起床だったが、「量より質だ!」と方針転換。毎朝パス回し、加藤のパントキック、森のシュート練習というメニューを2人で消化している。

 森への助言で密かに得点を“演出”した加藤は「まさかあいつが。シュート練習は“頭”でしているわけじゃないので」と取材陣を笑わせると、「一番長い時間(森と)ボールを蹴ってきた。いつも朝練をやってる相手が決めてうれしかったですね」と表情を緩めた。牛場監督は「普段はおっとりしていて真面目な選手。加藤と黙々と朝練をしていたし、サッカーにかける思いは人一倍持っている。サッカーの神様が力を与えてくれたのかな」とひたむきな姿勢が報われたことを喜んだ。

 皇子山陸上競技場が改修工事中のため、決勝は布引グリーンスタジアムで行われた。森はこの日だけではなく、今年布引で行われたインターハイ予選の準決勝野洲高戦(○2-0)で全2得点。決勝の綾羽戦(○1-0)でも値千金の決勝点を挙げる活躍を見せていた。布引で発揮したその勝負強さは夏冬連覇の原動力となり、牛場監督も「相性がいいのか布引で決めてくれる。もう、森様ですよ」と冗談交じりに称賛した。

 劇的同点弾のシーンは「残り時間が少ないことも分からなかった。気が付いたら入っていた」と、森自身は無我夢中だったようだ。延長戦は勢いそのままに逆転に成功し、チームは2大会連続で選手権の舞台へ。昨年度の選手権は応援席から試合を見守ったが、著しく成長を遂げた今年度はそのピッチに立つ。「自信を持ってやれば強豪とも戦える」と落ち着いた口調の中に覚悟をにじませ、「選手権予選は1点しか決めていない。もっと決めたいです」と大舞台でのゴールも狙っていく。

(取材・文 佐藤亜希子)
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