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「謙虚さ」「感謝」「信じる」をテーマに戦った駒澤大高が帝京撃破!2年ぶりの全国へ:東京B

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駒澤大高が2年ぶりに全国へ

[11.17 選手権東京都Bブロック予選決勝 帝京高 1-2 駒澤大高 駒沢陸]

 駒大高が2年ぶりV! 第97回全国高校サッカー選手権東京都Bブロック予選決勝が17日に行われ、FW羽鳥陽祐(3年)とCB齋藤我空主将(3年)のゴールによって駒澤大高帝京高に2-1で勝利。駒大高は2年ぶり4回目となる全国大会出場を決めた。

「謙虚さ」「感謝」「信じる」の3つのテーマを持って戦った駒大高が東京制覇を果たした。前半7分、駒大高は右SB山田英生(3年)のロングスローからニアのMF江藤惇裕(3年)が左ポスト直撃の右足シュート。跳ね返りを狙ったMF涌井蓮(3年)のヘディングシュートもクロスバーを叩いたが、ゴール前で待ち構えていた羽鳥が頭でゴールへ押し込んで先制点を挙げる。

 駒大高は畳み掛ける。26分、江藤の右FKに対し、相手のクリアが甘くなったところを見逃さない。ファーサイドの涌井が鋭いラストパスをゴール前へ通し、これを齋藤が右足シュート。早くも2点のリードを奪った。

 帝京はMF三浦颯太(3年)やFW佐々木大貴(3年)を中心に複数の選手が連動し、テンポよくボールが動き始めていた中で痛恨の2失点目。28分にはMF中島涼太(3年)、31分にもMF石川航大(2年)を投入し、巻き返しに出る。そして、コンビネーションで狭い局面を打開し、PAまで押し込んだ。だが、駒大高の堅い守りに阻まれ、逆にカウンターから羽鳥に抜け出されるなど、前半を0-2のまま折り返すことになった。

 ただし、東京朝鮮高との準決勝を0-2からの4ゴールによって制している帝京の士気は全く落ちない。佐々木も「慌てることなく、2点だったらひっくり返せるだろうというのがあった」。だが、駒大高が帝京の前に立ちはだかる。

 この日、駒大高の大野祥司監督は詩人・相田みつを氏の言葉から、「謙虚さ」「感謝」「信じる」を決勝のテーマとして選手たちに与えていた。これに対し、昨年から主軸の山田は「2点で奢らない。2点あるから大丈夫とか、そういうの無しで、自分たち力無くてまだ何があるか分からないから、しっかり集中してやろうという謙虚さは持っていた」と振り返っていたが、テーマとされたその言葉が選手たちの集中力をより高める要因に。そして、勝ち切る力になった。

 後半、帝京は流動的な攻撃で反撃。だが、駒大高はボールを奪うと、前線やオープンスペースへの配球からFW原田大渡(2年)の献身的にキープするなど相手を押し返す。それでも、20分、帝京は敵陣PAやや外側でボールを奪い返した佐々木が右足シュートを右隅に決めて1点差。駒大高にプレッシャーをかけた。

 帝京の連動して崩す力は全国上位と言えるほど。彼らはそのテクニックで相手選手をいなし、ゴール前まで侵入しようとするが、駒大高は穴を作らない。帝京は終盤へ向けてクロスの本数を増やしたものの、駒大高は齋藤、CB稲井宏樹(3年)の両DFやMF細川竜征(3年)、GK宮崎雅崇(3年)が献身的に跳ね返す。ファーサイドへのボールも右SB山田と左SB島田竜汰(3年)が役割を怠ることなく絞って対応。守勢となり、運動量自慢の駒大高にとっても苦しい時間帯となっていたが、それでも中盤、前線の選手が献身的に走り続けた。

 終盤は相手コーナー方向へボールを蹴り出して原田やMF小林蒼太(2年)がキープ。帝京の佐々木が「勝負強さがあった。前半に2点取られたのも痛かったんですけれども、そこからの守り方や時間の使い方が上手かった」と評す強さを持っていた駒大高が2-1で逃げ切り、全国切符を掴んだ。

 14、15年度大会で2年連続全国8強入りした駒大高も、昨年は東京都予選初戦敗退。今年も関東大会予選は準々決勝で敗れ、インターハイ予選も2次トーナメント初戦で姿を消していた。だが、「力がある訳ではない。良く成長してきた」(大野監督)というチームは応援も含めてまとまり、一戦必勝の姿勢で戦ってインターハイ16強の國學院久我山高や、関東大会出場の駿台学園高を撃破。そして、決勝では前評判の高かった帝京を勝利への執念で上回った。

 山田は「去年、自分出たけれども何もできなくて交代してすごく悔しくて、今年は自分の選手権ではなくて、去年の3年生のために戦おうと思っていて、それで自分の限界を超えてできたかなと思います」。試合後には珍しく足を攣らせ、倒れ込む選手が複数いた。悔しい結果に終わった先輩たちへの思いも込めて、体力が尽きるまで戦い、走り抜いて掴んだ出場権。齋藤は「駒澤の歴史としてベスト8以上へ行けていない。そこの歴史は絶対に塗り替えてやろうという意識があります」。優勝しても、まだまだ自分たちに力があるとは考えていない。謙虚に、一日一日成長することに集中して全国を迎える。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2018

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