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下級生起用で活性化。「失点の多いチーム」から成長遂げた一条が3連覇達成!:奈良

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[11.17 選手権奈良県予選決勝 一条高1-0奈良育英高 橿原陸上]

 17日、第97回全国高校サッカー選手権大会の奈良県予選決勝が橿原公苑陸上競技場で行われた。大会3連覇を狙う一条高と、夏のリベンジを果たして7年ぶりの優勝を目指す奈良育英高が対戦。後半3分にMF石川航大(3年)のCKにDF酒本哲太(3年)が頭を合わせ、一条が1-0で大会3連覇を果たした。

 ゲームの主導権を握っていたのは、巧妙なポゼッションでボールを支配した奈良育英。対する一条は、「相手に上手くボールを回されることは、承知の上で臨んだ。ブロックを敷き、相手の隙を突いてカウンターを仕掛けるつもりだった」(前田久監督)。「狙い通りにカウンターから得点できなかった」がCKのチャンスから決勝ゴールが生まれた。

 前田監督がこの決勝で最も驚いたのは「得点したあとに失点しなかった」こと。「これまで失点の多いチームだったので、正直なところ、まさか失点しないとは思っていなかった。延長戦に入ることも想定していたので、大会を通じて彼らが成長してくれていたことを感じた」という。

 8月末以降の県リーグでは、五條高を相手に6失点。香芝高には2点リードしている戦況から4失点して敗れた。今大会の前に行ってきた練習試合でも、失点が目立っていた一条。前田監督は「あまりにも不安定な守備を、まず安定させなければいけない」と考え、3年生主体だったチームの中に育ってきた2年生を起用。すると、得点に繋がるプレーができるようになり、「得点できるようになったら、なんとかその得点を守りたいと守備も踏ん張れるようになってきた」。葛藤の末に決断した選手の入れ替えだったが、下級生を入れたことがチームの活性化に繋がった。

 今大会でも準々決勝では香芝、準決勝では五條との対戦になり、苦しい試合を強いられた。「負けも覚悟しながら勝てる可能性を探るような状態の決勝戦が3回続いたような感じ」(前田監督)だった中で1点を守りきり、追いつかれても逃げ切る。粘り強く最後まで諦めない逞しさを持った選手たちに成長した。決勝では「これはもう入れられるな」と前田監督が感じたシーンにおいても、体を張った守備で耐え忍んだ。

 今大会で最優秀選手賞を授与されたFW八木三郎(3年)は、チームスローガンの「巧みに守り、果敢に攻めよ」を最前線で体現。クロスバーを叩き、惜しくもゴールとはならなかったものの、後半8分に目の覚めるような豪快なミドルシュートを放った。守備面では奈良育英が回すパスコースを限定させる役割を担い、プレッシングに手を抜くことはなかった。

「どうしても勝ちたい」という気持ちとともにあったのは、仲間への想い。「試合に出られなかった仲間たちの中にも、良い選手はたくさんいる。試合に出してもらっている自分がもったいぶって走らないなんて失礼なこと。それで負ければ、一生悔いが残る」(八木)と思い、苦しい表情を浮かべながらも最後の最後まで走り抜いた。

 八木が挙げた“試合に出られなかった仲間たち”に前田監督も期待を寄せる。「今回試合に出られなかった3年生たちが、どれだけ頑張って全国大会までに巻き返してくれるかを楽しみにしている。きっと彼らがチーム内で良い競争を作ってくれ、またみんなで成長できる。全国の壁が厚いことはよくわかっているが、その分チャレンジしがいもある。選手たちと一緒にまた一からやり直し、良いチームに仕上げていきたい」と意気込んだ。

 9回目の全国への切符を掴んだ一条。過去2大会は3回戦敗退となっているが、「泥臭く戦った」今日よりもさらにブラッシュアップし、再び全国に挑む。

(取材・文 前田カオリ)
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