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屈辱の“10年前”は東京Vユース生…決勝ゴールの平智広「あの光景は忘れない」

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決勝ゴールを叩き込んだ東京ヴェルディDF平智広

[11.25 J1参入プレーオフ1回戦 大宮0-1東京V NACK]

 10年前の屈辱をその目で見ていた28歳が“下剋上”の狼煙を上げた。東京ヴェルディDF平智広は数的不利で迎えた後半26分、右側頭部に当てるトリッキーなヘディングシュートで決勝点を記録。ゴール直後、そして勝利後の喜びは控えめだったが「自分にとってはオーバーすぎるくらい」と照れ笑いを浮かべた。

 MF内田達也の退場で数的不利となり、それでも1回戦突破のためには1点を取らなければならないという状況。しかし、ピッチ内の選手たちに迷いはなかった。「相手のほうが、攻めるのか、守るのか、やりづらかったと思う」(平)。ゴール左の角度のない位置でのFK、カウンターを受ければ失点リスクも高まるところだが、背番号5はゴール前に走った。

「セットプレーは強み。ニアのボール、触るだけのボールは良いキッカーがいるし、信じて入るだけだった」。MF佐藤優平の鋭いキックに反応すると、ニアサイドに走り込みながらのヘディングシュート。「頭に当たっただけ」と謙遜したが、絶妙なインパクトでゴールを射抜いた。

 直後は控え目なゴールセレブレーションとともに、ゴール裏のアウェーエリアを埋め尽くしたサポーターの元へと向かった。「あんまり点を決めていないので、喜び方がわからなかった。でも、感謝の気持ちを伝えたいと思って、自然に体が動いた」。緑に染まったスタンドはこの日一番の大音量チャントで応えた。

 東京Vユース出身の平は高校3年時の2008年、J2降格を目の前で経験していたという。「ユースの時に見たあの光景を忘れることはない」。翌年のトップチーム昇格を逃した平だったが、法政大、FC町田ゼルビアを経て、16年に再び緑のユニフォームに袖を通した。「そこでいま戦えていることが幸せ」とクラブ愛は隠さない。

 あれから10年、一度も手が届かなかったJ1の舞台に自身の手で導こうとしている。「長い歴史のあるクラブで時代をくぐり抜けてきた人たちのためにも勝たないといけない」。必勝を期して臨む2回戦・横浜FC戦に向けて「前線にすごく強い選手がいるけど、チャンスがないわけではない。勝ちに行くには戦いやすい相手」と勢いよく意気込んだ。

(取材・文 竹内達也)

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