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リーグ戦8ゴール目も、まさかの逆転負け。埼玉T.Wings菊島宙の涙

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今季8得点目をあげた菊島宙(右)

[11.25 東日本リーグ第7節 埼玉T.Wings 2-3 buen cambio yokohama 東京・市営福生野球場]

 逆転負けのホイッスルが響いた瞬間、16歳はピッチに泣き崩れた。11月25日、東日本リーグ第7節buen cambio yokohama戦。埼玉T.Wingsと日本女子代表が誇る『天才少女』、菊島宙が東日本リーグ開幕のDerroto Saber茨城戦での7ゴール以来となるゴールとなる8ゴール目を挙げたが、チームは逆転負けを喫した。上位3チームに与えられる来年2月のクラブ選手権出場権も、12月2日に文京区小石川運動場で行われる最終節の他チームの結果に委ねられることになった。

 立ち上がりは、快調だった。前半11分、ゴール中央から右足を振り抜いてゴール。開幕節以来となる歓喜の声を挙げた。
「前半は自分が先制点を入れ、こっちの流れでした(中略)。今日は大丈夫だと油断していたら、失点して2-1になってしまった。後半は、私がゴール前に戻っていないときに決められてしまった。さらに私がドリブルすると真ん中・ゴール前に相手が集まり、そこに突っ込んでしまった。そうしているうちに3点取られての逆転負けで悔しいです。相手は寄せも速く、自分としては、その前にシュートを打っていればと後悔しています」

 試合後、涙が止まらない。もう少し手を伸ばせば届いたはずだった勝利と、クラブ選手権出場権はおあずけとなった。
 とはいえ8ゴールは立派な数字だ。10月27日の第5節、埼玉T.Wings 対 GLAUBEN FREUND TOKYOは、 GLAUBEN FREUND TOKYOの棄権により、埼玉T.Wingsの不戦勝。規定上3-0の勝利となったが、試合は実際行われていない(記録上、得点者はなし)。結果、菊島はリーグ3試合出場で8ゴールという離れ業を演じている。

 監督であり父である菊島充氏はこう語る。
「宙は、普段はあまり考えずに感覚でシュートを打つ。今日は中途半端に考えてプレーしていたと思う。ドリブルの時間が長く、相手を意識し過ぎていたのかもしれない」

 相手に対策を講じられているのは性別と年齢を越えて、加速度をつけて実力を認められ、自らも成長を続けているからこそ。世界ランク2位相手のアルゼンチン女子代表相手に途中出場で6得点を決め、鮮烈な国内での「国際試合デビュー」を果たしたのは今年2月のことで、受験勉強の最中3カ月間サッカーはおあずけだった。

「高校生になったら何がしたいですか?」の質問に「サッカーです!」と即答し、日本代表の黒田智成(たまハッサーズ)が教員を務める八王子盲学校に入学したのが今年の春。サッカーではライバルチームに所属する「黒田先生」は、東日本リーグ7節終了時点で9得点を挙げてリーグ得点王をほぼ手中にしている。まだ高校入学から半年余り。人目もはばからず泣けるのはサッカーが何よりも好きな16歳の若さと情熱ゆえだ。涙とともに残った宿題を片付ける時間も、持てる力を示す舞台もまだ十分過ぎるほどに残っている。


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