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「勝手にだけど師弟関係」…値千金弾の浦和MF宇賀神、引退する平川への思い

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浦和レッズMF宇賀神友弥

[12.9 天皇杯決勝 浦和1-0仙台 埼玉]

 誰よりも強い思いがあった。チームに天皇杯制覇、そして来季のACL出場権をもたらす一撃を沈めた浦和レッズMF宇賀神友弥は、一人の男との関係を感慨深げに振り返った。

 試合が動いたのは前半13分だった。ショートコーナーからMF長澤和輝が送ったクロスは弾かれたものの、こぼれ球に宇賀神が反応。「前日練習でも練習していたし、(オズワルド・)オリヴェイラ監督からも信頼を置いてもらい、あのポジションにいさせてもらっている」。指揮官の信頼に応えるように、右足ダイレクトで合わせたシュートは鮮やかな軌道を描いてゴールネットに突き刺さり、値千金の先制点が生まれた。

「仙台はゾーンで守ってくるので、セカンドボールがこぼれてくるという話をしていた。練習では自分がふかして入らない場面もあったけど、終わった後にも練習をしていたので、それが良い形で実を結んだのかなと思うし、決勝で自分にあんなスーパーゴールが出るのも、監督が持っているからかなと思う」

 自他ともに認めるスーパーゴールで試合の流れを引き寄せると、その後は仙台にリズムを作られる時間がありながらも、体を張った守備でしのぎ切って1-0の完封勝利。「内容が良くない中でも守備陣としては非常に踏ん張れた試合だったと思う」と充実感を漂わせた。

 今季限りで「勝手にだけど師弟関係」という先輩・MF平川忠亮が現役を引退。「ずっと同じポジションで、ライバル選手としてやってきて、やはりヒラさんが引退するのは自分にとっては感慨深いもの。最後はどうしても優勝してヒラさんを送り出したかった」。5日の準決勝鹿島戦での勝利後にも「埼スタで結果を残して、ヒラさんにカップを掲げさせてあげたい」と語っていたように、「その気持ちは人一倍強く持っていたと思う」と長年刺激を与え合い、ともにプレーしてきた平川への思いを明かす。

 その言葉どおり、最後に平川にカップを掲げさせる機会をもたらした男は、「ヒラさんへのそういう気持ちがゴールにつながったのかな」と笑みを浮かべると、ユニフォームを脱ぐ平川に自身がチームにタイトルをもたらす働きを見せたことで、「点を取って、勝ち切る姿を見せられた。宇賀神に自分の後を任せていい、浦和レッズの未来を自分たちに託しても良いと思えてもらえたと思う」と胸を張った。

(取材・文 折戸岳彦)
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