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「綺世は別格」五輪エース候補との定位置争い…法政大のハイタワーFW松澤、先発抜擢で持ち味発揮

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先発に抜擢された法政大FW松澤彰(3年=浦和ユース)

[12.17 インカレ準々決勝 関西学院大1-3法政大 浦安]

 小回りの効く守備陣を揃える関西学院大に対し、最前線に起用されたのは今季わずかリーグ戦4試合出場のハイタワーだった。法政大FW松澤彰(3年=浦和ユース)は身長190cm。インカレ準々決勝で待望の先発出場を勝ち取ると、粘り強いポストプレーで好機を連発し、チームの2点目をアシストした。

 今季の関東大学リーグでの出場記録はわずか4試合。「去年より全然出場機会も少なくなっている」と現状を見つめる21歳だが、その理由は明白。法政大の1トップには、東京五輪代表にあたるU-21日本代表のエース候補、FW上田綺世(2年=鹿島学園高)が君臨しているからだ。

「綺世は別格ですよね。自分とタイプは違うけど、得点能力は高いし、自分にないものを全部持っている。かといって、自分がストロングポイントにしていることも程よくできる。全部の能力が高いので、勝手にライバルだと思ってるって感じです」(松澤)。1学年後輩にあたるが、その力関係に疑いはない。

 ただ、出場機会を諦めるつもりもない。「綺世がいるなかで自分がどうやっていくかを葛藤してきて、自分がやれることをやるしかないと思っている。インカレまでにいろんなことを整理してやってきた」。前回大会ではジョーカー起用で得点を連発。良い記憶もある大会に照準を絞ってきたようだ。

 初戦の新潟医療福祉大戦は後半終了間際からの起用。だが、ここで出場する予感はあったという。対戦相手の関西学院大はCBコンビの身長がいずれも170cm台前半。「相手のCBが高さがないというスカウティングがあったので、自分の役割をやり切ろうと思っていた」(松澤)。指揮官の要求を心に留め、キックオフのホイッスルをピッチ上で迎えた。

「立ち上がりから行くぞ!」——。そんな掛け声が上がった法政大イレブンは序盤からロングボールを松澤めがけて蹴り込むと、開始早々にポストプレーからFWディサロ燦シルヴァーノ(4年=三菱養和SCユース)に決定機。さらに前半2分、ディサロの落としから松澤がボレーで狙った。いずれも得点には結びつかなかったが、ゲームプランを徹底する気概を示した。

 その後も激しいプレッシャーをかけてくる関西学院大に対し、松澤へのミドルパスが一つの逃げ道として機能。相手に身体を寄せてスクリーン役となったり、つま先でピタリと止めるトラップで前線の起点となっていた。そして後半24分、自身のポストプレーからMF大西遼太郎(3年=磐田U-18)に落とすと、これがチームの決勝点となった。

 試合後、松澤は「自分の役割はやり切れたと思う」とこの一戦を総括。「点を取ることは課題だった」と悔いは残しつつも、「綺世と違う持ち味を出す」という最低限のミッションは果たしたと言える。ただ、前回大会を準優勝で終えた法政大にとって、ここは単なる通過点。それは松澤にとっても同じだ。

 昨年12月24日、法政大はインカレ決勝の舞台で流通経済大に1ー5の大敗。松澤自身は後半15分、負傷退場した上田との交代でピッチに立ったが、シュート1本さえ放つことができなかった。「決勝まで行ったけど、結局は綺世頼みだった。決勝で綺世がいなくなって、自分も頑張ろうと思ったけど何もできなかった」。

 悔しい気持ちは受け止めているが、かといって過度に背伸びするつもりはない。「自分はどんな形であっても、身体を張って、ボールを収めて、ゴール前で怖い選手になろうと思っている。それができればチームも勝てる」。すべては昨季わずかに届かなかった42年ぶり戴冠のため。「絶対に優勝できる」という強い覚悟を携え、3日後に迫る順天堂大戦に臨む。

(取材・文 竹内達也)

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