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選手の良いところに目を向けて実況、涙も……。日テレ系アナウンサーが「選手権座談会」vol.1

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座談会に参加したアナウンサーの面々

 第97回全国高校サッカー選手権が12月30日に東京・駒沢陸上競技場で開幕する。高校日本一を目指す48校の選手たちが、19年1月14日に埼玉スタジアムで行われる決勝戦まで熱戦を展開。数々の名勝負やドラマを生み出してきた「選手権」は今冬も多くの人々に勇気と感動をもたらすだろう。

 その戦いをサポートするのが、民間放送43社のアナウンサーたちだ。全国大会を担当するアナウンサーたちは12月に過密スケジュールの合間を縫って各地の担当校を取材。蓄積した“どのメディアよりも充実した情報”をアナウンサー間で共有して全国大会を迎える。そして、年末年始は都内に泊まり込んで“本番”。データ整理と身体のケアに務めながら、放送を迎える。

 試合後にまた準備して最大6試合。全国大会の組み合わせ抽選会が行われた11月19日に、日本テレビの中野謙吾アナウンサーを司会に同社の川畑一志アナウンサー、テレビ岩手の渡邊雄介アナウンサー、テレビ金沢の越崎成人アナウンサー、讀賣テレビの立田恭三アナウンサー、山口放送の高橋良アナウンサー、四国放送の榎本真也アナウンサー、福岡放送の福岡竜馬アナウンサーの各氏が座談会形式でどのようにして取材をしているのか、苦労話などを教えてくれた。

中野「高校サッカーは各都道府県からアナウンサー1人ないし2人3人と送り出してもらい、各チームを実況します。2回戦、3回戦、準々決勝、準決勝と民放各社から選ばれし精鋭が6人ないし7人、「メイングループ」と言われるメンバーを構成して、勝ち上がりを喋っていく。今年の初戦は東の県が実況すると決まっているので、東京対福岡だったら今年は東京のアナウンサーが実況する。来年でいうと、西が1回戦を実況するとなっています。それ以降の2回戦、3回戦はメイングループのメンバーが実況していくことになっています。今年メイングループに入っているのが、ここにいる方々。まずは、自己紹介をお願いします」

渡邊「テレビ岩手の渡邊と申します」

中野「渡邊さんは今年1年目のメイングループです」

立田「(メイングループ)2年目になります。讀賣テレビの立田です。よろしくお願いします」

榎本「同じく2年目の四国放送の榎本と申します」

高橋「山口放送の高橋良です。よろしくお願いします」

中野「メイングループプラス、(福岡アナを紹介しながら)この座談会には我々の良き兄貴、かつて準決勝も実況し、もちろんメイングループも経験されている、会社でいったら相談役みたいなポジションです(笑)」

福岡「かつての精鋭です(一同笑)。よろしくお願いします」

中野「メイングループを2年毎くらいに交代しながら、各都道府県の民放43社の皆様と一緒に最後まで放送していくのが我々の高校サッカーです。それと、今回は今後メイングループを目指す若手、テレビ金沢の越崎くんに参加してもらいました」

越崎「はい。今日は若手代表という意味でも頑張ります(一同笑)。テレビ金沢の越崎です」

中野「今日抽選会が終わり、組み合わせが出て、このあと我々にもどこを実況するかというシフトが発表されます。発表まで2〜3日以内です。発表されたあと、それぞれがここからの1か月を使って取材へ行くという流れになります。それは業務によっても、取材の内容が変わってきます。去年、メイングループを担当した立田くんはどのようにここからの1か月を過ごしましたか?」

立田「そのグループでどこの都道府県が担当なのか。自分のスケジュールもありますので、その中でどのような取材ツアーを組むか考えます。去年だと僕は高知西と松山工が同じブロックに入ったので四国ツアーへ。あとは、直前になって御殿場で合宿するチームがあったので、そこでまとめて取材したところもありました。ただし、極力、普段練習している環境を見に行きたい。普段ここで練習をしてこういうサッカースタイルになったのか、実際に自分の目で見たいということで学校に行くようにはしています」

中野「福岡さんは準決勝の実況も」

福岡「去年準決勝を担当させていただいて、担当校が24校でした。ちょうど(手元で)12月のスケジュールを開いてあったんですけれども、恐ろしいスケジュールですね。ある1週間はまず福島に入って尚志高校を取材して、翌日に(富山一高の取材のために)富山に飛んで、その翌日に午前中(石川県の)星稜高校を取材して午後に群馬(前橋育英高校)に入って、その翌日には大阪(大阪桐蔭高)に入って、最後、広島(広島皆実高)に飛んで福岡に戻ると。6日間で6校を取材しました。素敵な1週間を組んで、社内では旅行会社さんよりすごいツアーを組めると(一同笑)。そんなウリもあった去年でした」

中野「去年は何チームを大会前に取材されましたか?」

福岡「大会前に取材したのは24校のうち19校です。もちろんスケジュールが合わないなどの理由で取材できないところもあったんですけど、それは大会期間中にご挨拶に行って練習を見させてもらって取材していく形ですね」

中野「竜馬さんのように取材スケジュールを組んでいる方を「今日ここ行くよ」というのをSNSなどで確認しながら、「じゃあ僕もそこに行きます」のように。多い時には6〜7人で学校に行って、選手全員と監督に話を聞いて帰ってくる、ということもあります。榎本くんは去年どうでしたか?」

榎本「みなさんとなるべく予定を合わせて行かせて頂きました。竜馬さんはそんなに厳しいスケジューリングの中でも東福岡高校に行った時に取材の方法をまとめてくださって、クラブハウスの中で選手たちに話をみっちり聞かせてもらったりしました。各学校もすごく協力的です。常連の学校になると先生が教室を1個用意しておいてくれて。一番驚いたのは前橋育英高校のクラブハウスが凄かったですね。人工芝が床に敷かれていて、通されたアナウンサー4人のところに選手が一人ずつ待っていてくれて、取材をさせていただき、手厚い歓迎もしていただきました」

中野「高校サッカー選手権を通してどんな事を感じていますか?」

渡邊「(岩手)県勢として盛商(盛岡商)が85回に優勝して、次の年遠野がベスト8になったんですけど、僕はその次の年に入社して、そこから8年連続初戦敗退で……。(取材で感じることは)こういう(アナウンサー同士の)横のつながりというのは他の競技ではなくて。唯一、高校サッカーの民放43社集まるという瞬間があり、この絆を一番感じるのが、1月3日です。3回戦が終わる1月3日までは全員いるのですが、3日が終わると結構なスタッフが地元に帰るんですよ。3日は、試合終わった瞬間に10何人のアナウンサーが一人ずつ選手を呼んでインタビューをして、そのあと一斉に調べたことを連絡し合う。これが、ネタの宝庫であり、1月3日の絆をすごく感じますね」

榎本「みんなで同じホテルに泊まるなんていうことはないですしね」

中野「(大会期間中は)一つのホテルに各局のアナウンサーがほとんど宿泊し、合宿しているんですよ(笑)」

榎本「関東の局の方の中には自宅から通う方もいますが、ほとんどみんな(一つのホテルに)います」

中野「我々日本テレビの中にも、東京在住なのに宿泊するアナウンサーもいます。家まで15分なんですけど泊まってたりするので」

高橋「実況の相談をしつつ、普段会場で見せる仕事とはまた違った人となりが見えたりする交流の為の部屋があって、そういう人だったんだ、面白いところがあるんだね、という話が出てきたりもします」

渡邊「一度、その場でサッカーならではの用語問題が出てきまして。スカパーやDAZNでは使っていいけれど、高校サッカーだと視聴者に伝わりづらい、例えばリトリートだったり、それをすんなり言い換えてあげたり、そういう部分をどこまで地上波で使っていいかをずっと話し合ったりしています」

榎本「(合宿には)担当じゃないアナウンサーが来たりしますもんね。今年は担当外れちゃってお役御免になったはずなのにいる、みたいな方も結構いて。そういう人たちからいろいろ(高校サッカー)イズムを教えてもらったりしています」

中野「取材でいうと、よく我々は『リサーチャーがいるんじゃないかとか、会社のディレクター陣が取材してきたネタをもらって実況してるんじゃないか』って言われるんですけど、全てアナウンサーが取材しています。例えばメイングループを担当している人も、レギュラーとサブまでは話を聞くんですけど、そのお膝元の局の方はそれこそ出られない選手全員にも話を聞いて。マネージャーや応援団、ご家族まで話を聞いて。その状態で全国大会にやってくるんです。その人たちの情報を共有させてもらいながら、どんどん情報が集まってきて、決勝戦まで行くという」

―情報量的には3回戦でみなさんが情報を集めたあとの試合が要チェックですか?

中野「そう思うじゃないですか。でも3日のあともメイングループは全員残っている。3日の後も会場には勝ち残ったチームの担当アナウンサーが1人、2人。もう一つのチームが1人、2人。プラスメイングループが3〜4人いるので合計7〜8人いるんですよ。その7〜8人が一斉に散らばっていって、終わったあとのミックスゾーンでほとんどの選手の話を聞くんです。帰りのバスの中で一斉にそのメモを起こし、ホテルについた時には綺麗な文章で情報を共有できているんです(笑)。それが積み重なって、決勝になるとA4の紙、12〜13枚の情報量が、それまでの蓄積も含めて集まっています。だから一人じゃもうできないというか、みなさんがいて成立している高校サッカーという感じです」

高橋「1月3日が終わってベスト8が出揃って、残らなかった学校のアナウンサーはみんな地元に帰ります。僕は今回メイングループに初めて入らせてもらうんですけど、自分が高校サッカーに来るようになってから山口代表が1月3日を勝ち残ったことがないんです。聞くところによると1月5日(の準々決勝)に向けて残ったチームが少ないから、みんな地元に帰ってしまい、(ホテルも)寂しい、ちょっとがらんとした、『夏草や強者どもが夢の跡』じゃないですけど、強者たちが皆去ったような……ということを聞きます」

川畑「星稜は近年勝ち上がる事が多いから、どちらかというと残り組のほうじゃないですか」

越崎「僕は今回4年目なんですけど、星稜が優勝したのはちょうどその1年前の代で、僕が担当してからなかなか勝ち上がる事ができなくて、河崎先生にちょっと指摘されたこともあります(笑)」

福岡「仲間という話の続きをすると、去年は準々決勝、準決勝を喋る前日などに、3日で帰ったアナウンサーからどんどん自分はこういうことを調べたんですけど使いませんか、みたいな連絡が来たりとか。あと、去年は準々決勝と準決勝の間、中ゼロ日というタイトなスケジュールだったんですけれども、自らの休日を投げ打って取材についてきて、取材の手伝いをしてくれたり……。そんなの泣いちゃうよ、みたいな。そういう仲間感が結構あるのが高校サッカーです」

立田「(試合では)負けた瞬間、地元校のリポーターをやっていることが多いんですけど、もう号泣です」

高橋「高校サッカーあるあるで、負けたところのリポーターがよく泣いているというのがありますね(笑)」

立田「帰りみんなでバスに乗って帰るんですよ。バスの中でもずっとまた泣いてる。なかなか止まらなくて、あんなのは初めてなんですよ。3年前くらいの履正社が負けた時で、もう止まらなくなって。こんなに泣いたことあったっけって」

榎本「メイングループをやると地元校への愛が強いので、初めは戸惑うかなと思ったんですよ。全く別の学校との対戦を実況しなきゃいけなかったりするし、自分の県と対戦チームの取材もしないといけないんですけど。監督は本当にいい人ばかりで、行くと(実況で)逆にアウェー頑張って感を出す時があって。(そのような監督さんは)全国各地、挙げていったらきりがないです」

渡邊「地元よりもよく喋っているパターンもありますよね。(対戦相手の監督さんが)凄い好きになっちゃっている」

中野「普通の公立高校で土のグラウンドで4時から6時までしか練習していないのに選手権に出るチームもあれば、人工芝のグラウンドで凄く完備されたジムがあったりとかする中で選手権に出てくるチームもあるわけです。そういうのを実際に学校に行ってみることが大事だと思っています。僕もある先輩から「取材は旅だ」という風に教えてもらいました。やっぱり実際に見て、学生たちがどういう表情でグラウンドに飛び出してくるのか。練習が終わった時に、もっとやりたかったのにという顔を実際に見ることで放送の熱が変わる、と言われました。だからここにいるみなさんも、(直前合宿が行われる)御殿場に行けば何十チームも取材できると分かってるんだけど、あえて学校に行く。そういうのはありますよね」

高橋「去年、静岡の清水桜が丘高校(清水市立商の伝統を受け継ぐ高校)にお邪魔したのですが、ちょうど僕は小野伸二選手と年が同じで、ここでやってたんだ、と“聖地巡礼”みたいに感じるんです」

中野「皆さん、担当の都道府県の学校だったり、いろんなタイミングでこんな話が聞けた、というのはありますか?」

立田「最近はマネージャーとか選手じゃない方から出てきた情報からヒントを得て本人にぶつけてみる。そしたらもっと出てくる、という方法が一番面白いネタが出てきて。ルーティンの話とか、本人はなかなか恥ずかしがってあまり自分から積極的に言ってくれる選手は少ないけれど、違う人から聞いたんだけど、というと言ってくれます」

榎本「だいたい取材する時は僕は1対1が苦手なんです。性格的なところもあるのかもしれないですけど」

中野「確かに榎本くんが1対1で来られたら、ガツガツ過ぎて来られた方は嫌だよね(笑)」

榎本「ガードされちゃうケースが多いから。だいたい部員に話を聞く時は2対1か3対1と決めています。何か一言ぽつりといった時に、『お前よく言うよ』みたいなやりとりがあって。『あれあるじゃん』とかって出てくるケースがあるので、複数対1で必ずやりますね。部室に入れて話をさせてくれるチームは最高ですね」

中野「地元だとそうやって密着度があるからできるということですね。面白い場所でこんな話を聞けた、というのはありますか?」

福岡「本当にいい話って懇親会などで出てくる。だけど、いい話が出てくる時って監督もこちらもお酒が回っている時間帯。だから、トイレに行くタイミングで必死にメモを取って、覚えておこうとキーワードだけ書いてるんですけど、翌日になったらそのキーワードの意味がわからない(笑)。泣くくらいいい話なのに。これはすごくよくあります」

中野「懇親会でトイレに行く人結構いますよね」

一同 (笑)。

中野「僕も準決勝をかつて担当した時、京都橘が初めて決勝戦に行った時なんですけれども、御殿場のお風呂で(米澤)監督さんとたまたまお風呂に居合わせて。僕は30分くらい入っていて、ヘロヘロだったんですけど、そこで監督さんが創部した当初の話を始めて。『俺は(部室の)ボードに、登るなら日本一の山に登りたいって書いたんだよ』とめちゃくちゃいい話してるなと思って。絶対に出られないと、1時間以上風呂に入るっていう。でも実際に放送で僕はそれを使ったんです。一番いい話だと思ったので。そういうのがあったりしますよね。こんなタイミングでこんな話が聞けるんだって」

福岡「おそらく、このメイングループの方々、準決勝、決勝を喋るアナウンサーになってくると体力と、いかに風邪を引かないかというところの勝負になってくると思います。部屋に加湿器は必ず置き。当時はホテルの加湿器が少ない時代もあったから、その時は地元で、買って、部屋に持って行き、のど飴を大量に持ち、栄養ドリンクは毎朝しっかり飲み、うがい、うがい薬はもう飲み物のように使い……と、とにかく風邪との戦い。だから、いつ風邪を引いてもすぐに体調を取り戻せるように薬は大量に準備して、ちょっと喉痛いと思ったら薬を飲んで戦っています」

中野「誰かがマヌカハニーを舐め始めると、みんなマヌカハニーになる(笑)。これ効くらしいぜって」

榎本「プリントが配られるんですよ。風邪の気配を感じた人はもう正直に申し出てくれと」

高橋「隠さないようにしましょうってね」

榎本「恐ろしいくらい年末になるとマスクしてますよね」

中野「でもそこは皆さんプロなので、ちゃんと予防もしますし、ダメだと思ったらすぐに撤退しますし。そのあたりはすごくきっちりしています。竜馬さんのようにベテランのアナウンサーがかつてもいっぱいいまして、そういった方たちから伝統の継承みたいな感じで、実況や取材の仕方が引き継がれていっています」

―ロッカールームは聞く側もつらいところがあるんだろうなと思って見させてもらっています。

中野「結構ロッカールームを撮っているディレクターと聞いているアナウンサーが泣いているというのもありますけどね」

高橋「敗戦の弁が一番嫌ですね。終わった直後、ヒーローインタビューをしているうちに監督の横に行って情報を聞かないといけないので、負けた瞬間横に立って一言を聞かなきゃいけないんですよ。あれはね。本当に一番仕事の中でも責任はありますけど、嫌な仕事ですね」

越崎「関係があるから喋ってくれますよね、監督も」

中野「我々の放送の中で敗者もしっかり伝えたい、というのがあるので。勝者だけじゃなくて敗者をしっかり讃える。プロサッカー選手ではないので、アマチュアサッカーを我々は伝えている。学生スポーツ、というのを忘れないように。だから高校サッカーの解説だと、やっぱり選手のいいところを色々ピックアップして、この選手のこれが良かった。キーパーもシュートが外れたのではなくてキーパーがコースを消していた。PKを外した、という実況はあまりないんです。ボールがそれたとか、キーパーよく止めた、とかが多いです。我々はいい面に目を向けていこうという中継を心掛けています」

(取材・文 吉田太郎)
第97回全国高校サッカー選手権は、民間放送43社の共同制作でテレビ放送される。
今大会では、公式ホームページ(http://www.ntv.co.jp/soc/)で全試合フルマッチ配信と、一部の試合のライブ配信が行われる予定。
●【特設】高校選手権2018

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