beacon

“30分限定”でチャンス量産も…法政大FW上田綺世「もっと圧倒しないと」

このエントリーをはてなブックマークに追加

チャンスを量産したFW上田綺世(2年=鹿島学園高)

[12.22 インカレ決勝 法政大1-0駒澤大 駒場]

 超大学級のスーパーサブが42年ぶりの快挙を導いた。法政大FW上田綺世(2年=鹿島学園高)は左肩を痛めていた影響で、今大会は後半の30分間を目安とした“時間限定”出場。決勝戦では同15分からピッチに立つと、エースの登場で勢いに乗った法政大はそこから決勝点を奪い取った。

 初戦の新潟医療福祉大戦で負傷し、その後の3試合はベンチスタート。長山一也監督は「スタートで出る力を持っている」と能力を認めつつも、「途中出場で流れを作ったり、勝負を決めるようなゴールを決めたりするのは、法政大だけでなく世代別代表でもしてきたこと」とスーパーサブ起用を続けてきた。

 1年目から期待を寄せてきた指揮官の思惑どおり、準々決勝の関西学院大戦(◯3-1)ではクロスに飛び込む形でビッグチャンスをつくると、準決勝の順天堂大戦(◯2-1)では貴重な先制点をマーク。先発の座はFW松澤彰(3年=浦和ユース)に譲ったものの、2大会連続の決勝進出に大きく貢献した。

 そうして迎えた決勝はパワフルなサッカーが持ち味の駒澤大が相手。出番はスコアレスでの後半15分、これまでと同じく松澤との交代で訪れた。「試合展開的に足りないので、流れを少しでも引き寄せられれば」と積極的に前を向く姿勢を見せ、巧みな反転からのシュートで何度もチャンスもつくった。

 すると後半27分、勢いに乗った法政大はFWディサロ燦シルヴァーノ(4年=三菱養和SCユース)のゴールで先制。リードを最後まで守り切り、大学史上3回目の優勝にたどり着いた。昨季の準優勝の雪辱を晴らす結果に、上田も「僕のおかげかどうかは分からないけど、出てから点が生まれてよかった」と喜んだ。

 自身にとっては昨夏の総理大臣杯以来となる全国タイトル。当時は決勝戦でゴールを奪い、華々しいルーキーの活躍に注目が集まった。「僕がいるのは4年間だけど、その経験を2回もできてうれしい」。インカレ制覇は42年ぶり。1年次から名門のエースを担ってきた21歳は、歴史に名を刻んだことを素直に誇った。

 とはいえ、無得点に終わった自身のプレーには満足しなかった。「決めに行って外れているので自分の実力。今は後悔はしていないけど負けていたら後悔していたはず。4年生の頑張りで優勝できた。自分も年を重ねてそう行った存在にならないといけない」。まだ2年生だが、チームを背負う覚悟をのぞかせる。

 そんな高い意識は“日の丸”を背負う覚悟の表れでもある。上田は東京五輪を目指すU-21日本代表のエース候補だが、大忙しの1年間を「代表の活動では、自分の成長のために何をしたらいいか、刺激が多い年だった」と総括。Jリーグでプレーする同僚を見ながら「プロと大学生の違いを肌で感じてきた」という。

 そこで心に刻んでいるのは“代表の基準”だ。決勝を視察した森保一監督は試合後、報道陣に「天狗になる必要はないが、代表での経験をチームに還元してほしい」と語っていた。これには上田自身も「上から目線になるかもしれないが、代表ではこうだぞというのを伝えていきたい」と同調する。

 来季の目標は「これまでも常に狙ってきた」という全タイトル制覇。「慢心するスキはないし、慢心するほど結果を残してきていない。もっと相手を圧倒するほどの選手にならないと個人の能力が伸びていかないし、そこを追求するべき」。2年連続のタイトル獲得にも甘えず、向上心を持ち続けるエースが法政大の黄金時代を築いていく。

(取材・文 竹内達也)
●第67回全日本大学選手権(インカレ)特集

TOP