beacon

“三角形、ひし形”パスワークで東邦を圧倒! 大分が「格上」との九州対決へ

このエントリーをはてなブックマークに追加

先制点を沈めた大分高FW谷川海翔(3年)(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[12.31 選手権1回戦 東邦高1-3大分高 等々力]

 第97回全国高校サッカー選手権は31日、1回戦を各地で行い、等々力陸上競技場の第1試合では大分高(大分)が東邦高(愛知)を3ー1で破った。2年ぶり10回目の出場で初戦突破を果たした大分は、来年1月2日に行われる2回戦で優勝候補の大津高(熊本)と対戦する。

 試合前のコイントスに勝利し、ゲームプランどおりに風下を選択した東邦は、地区予選でもエース封じを担っていたMF藤原颯(3年)が大分の10番MF山口卓己(3年)をマンマークで抑えにかかる。攻撃では1トップのFW河邊雄大(3年)にアバウトなボールを送るなど、低リスクの戦法を取った。

 ところが、大分がスーパーゴールで試合を動かした。前半7分、右サイドをえぐったMF菊地孔明(2年)のクロスをFW谷川海翔(3年)がゴール前でトラップすると、ややコントロールを失ったものの、素早い反転から左足を振り抜く。これが右ポストに当たり、ゴールマウスに吸い込まれていった。

 東邦は前半19分、左サイドを駆け上がったMF杉山祐輝(3年)のクロスは味方に通らず、すると大分がリードを広げる。同20分、DF佐藤芳紀(2年)のロングフィードから山口が突破。東邦守備陣が対応を誤り、ボールが最終ライン裏へと転がると、落ち着いた右足シュートでゴールに流し込んだ。

 東邦は前半27分、杉山のクロスに藤原が頭で合わせたが、惜しくも枠外。それでも同33分、敵陣左からのFKをDF伊藤晃瑠(3年)がペナルティエリア内に蹴り込むと、170cm台が並ぶ大分守備陣の壁を超えたボールがゴール前に落ち、落下点に素早く走り込んだMF仲井涼太(3年)がワンタッチで決めた。

 勢いに乗る東邦は前半アディショナルタイム、鋭い突破を見せたDF沼田祐輝(3年)の折り返しをMF豊嶋宥達(3年)がダイレクトで合わせるも、コントロールシュートは右ポストに阻まれる。繊細なパスワークで試合を優位に進めた大分が1点リードでハーフタイムを迎える形となった。

 前半を「なんであんなに引いてしまったのか。スタートの陣形も違っていた。ふわっとした感じで、本来の守備ではなかった」と振り返ったのは東邦横井由弦監督。一方、大分の小野正和監督は1点を返されたことを悔やみつつ、「気持ちを切り替えて次の1点を取ろう」と選手たちを送り出した。

 東邦は後半開始時、河邊に代わってMF中道竜生(2年)を2列目に投入。得点を挙げた仲井を最前線に上げた。その後も小気味良くつなぐ大分が主導権を握り続けたが、MF吉岡翼(3年)、山口のシュートを立て続けにGK木下堅登(3年)がブロックし、伊藤が惜しいヘッドを見せるなど、東邦の奮闘も目立った。

 ところが後半27分、ついに勝負を決める3点目が大分に入った。時間を追うごとにパフォーマンスを上げたMF重見柾斗(2年)がスルーパスを送ると、PA内右寄りに抜けたのは先制点を導いた菊地。勢いよく相手を振り切りPA内に侵入すると、飛び出したGKの頭上を越えるループシュートを流し込んだ。

 東邦は後半アディショナルタイム、ゲームキャプテンのDF河合康太郎(3年)を前線に上げてパワープレーを試みたが、MF野瀬翔也(1年)のシュートが枠を外れるなどチャンスを生かせない。大分は負傷しながら懸命に競り合ったGK板井孝太(3年)が決定機を許さず、2点リードのまま試合を締めた。

 大分は前回出場した2年前に続く初戦突破。就任2年目の小野監督は「ずっと積み重ねてきたものが出せた」と目を細める。大半のメンバーは附属校の大分中出身で、長年にわたって共に過ごしてきた間柄。「三角形、ひし形(の陣形)を作って、トップに当てて落としてサイドに散らす」(小野監督)という連携は息ぴったりだ。

 また、この関係性はピッチ内でのコンビネーションにとどまらず、オフ・ザ・ピッチのムードも良好。開会式ではリラックスした行進を見せ、プレーの切れ目には笑顔も溢れるなど、「中学生から一緒にいるので、日ごろから仲が良い」(小野監督)ことが緊張感の緩和に役立っていたようだ。

 年明けに控える2回戦の相手は同じ九州の強豪校である大津。指揮官は「強い学校なので胸を借りるつもりで頑張りたい」と敬意をのぞかせつつも、「格上だけどウチのサッカーをしたい」と磨き上げてきたスタイルに疑いはない。プロ内定者も擁する隣県の優勝候補に対し、堂々のアップセットを演じるつもりだ。

(取材・文 竹内達也)

●【特設】高校選手権2018

TOP