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[MOM2762]丸岡MF宮永任(3年)_不安消し去り、仲間を信じて走り切った主将、後半ATに劇的同点弾

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後半アディショナルタイム、丸岡高MF宮永任が右足シュートを決めて同点。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.31 選手権1回戦 丸岡高 2-2(PK5-4)東山高 ニッパ球]

 後半29分の失点で1-2。その時点で丸岡高の10番MF宮永任主将(3年)は「時計を見たらあと10分あったので、10分の中でドラマを起こせると思っていましたし、信じて走るだけでしたし、仲間にも『信じてやろう』と言っていました」と振り返る。

 だが、時計の針が進み、残り時間が減っていく中、「ああ、負けるんじゃないか……」という思いが、頭の中に過ってしまう。それでも応援席で声を張り上げ続けてくれる仲間の姿を見て、主将は不安を頭から消し去っていた。

 そして、自分たちを信じて走り続けた宮永が後半アディショナルタイムに劇的な同点ゴールを決める。左サイドからMF川中浩夢(1年)が中へ入れたパスはややずれたが、MF馬場脩介(3年)がスライディングで前方の宮永に繋ぐ。これを受けた10番は、切り返しでDFを外してから右足シュート。鮮やかな一撃がゴール右隅を破り、2-2となった。

 小阪康弘監督は「あれはかなり練習していた。アイツは絶対にやってくれると思っていました」と振り返る。そして宮永本人は「ずっと練習、紅白戦の時からああいった形をイメージしていたんですけれども、(普段は)なかなかうまく行かなくて……。でも、こういった中でできるのが選手権という素晴らしい舞台だと思います」と語った。

 大観衆の中で感覚が研ぎ澄まされていた。頭でイメージしていた通りのゴール。宮永は選手権という特別な舞台が引き出してくれたゴールであることを強調していた。「思い切ってやらせてもらえる。それが選手権なので、一番憧れてきた舞台ですし、こういった舞台でゴールを決められたのは、続けてきた結果だと捉えて次に繋げていきたい」。

 小阪監督は宮永について「2年生までは自分の嫌なことから逃げていた」と説明する。だが、彼を主将に任命し、選手権予選の7番から本大会では10番に変更した。責任感を持たせようという意図に応えて人間的に成長した宮永はこの日、諦めずに戦い、チームを救った。

 80分間終了後、丸岡の選手たちは円陣を組んだ全員が空を見て、PK戦へ向かっていった。「(小阪監督の指示で)この舞台を楽しんで、この空を忘れないというのが、あるんじゃないかと思います」と宮永。自身の劇的なゴール、PK戦勝利後のみんなの笑顔……この日、彼にとって忘れられない空が一つ増えた。

(取材・文 吉田太郎)

●【特設】高校選手権2018

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