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「7年前」同様の力と「7年前」には無かった力。両方を備えた尚志が激戦ブロック勝ち抜き、準々決勝進出

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尚志高が7年ぶりのベスト8進出を決めた

[1.3 選手権3回戦 前橋育英高 1-2 尚志高 浦和駒場]

「震災の時と同じ。県民の皆さんがパワーをくれた」。7年ぶりの8強入りを決めた尚志高の仲村浩二監督は、7年前と同じ力を感じていた。東日本大震災が発生した11年の冬に行われた大会で尚志は快進撃。福島県勢初の4強進出を果たし、震災からの復興を目指す福島県民の“希望の星”となった。

 今大会は神村学園高、東福岡高、そして前回優勝の前橋育英高と初戦から3試合連続で実績のある高校との強豪対決。「全部決勝戦のつもり」(仲村監督)で戦ってきた尚志は、地元の後押しもパワーに激戦ブロックを勝ち抜いた。

 この日は今大会3試合目。1試合消化試合の少ない前橋育英に押し込まれる時間帯もあった。だが、尚志は0-0で相手に食い下がると、前半終盤から積極的な交代策。これが当たった。後半開始から「彼は野性的。能力は半端ないです。(投入する際に)『オマエが何かしてくれないと勝てない』と言いました」とDF高橋海大(3年)をFWとして投入すると、その高橋が獲得したFKを左SB沼田皇海(3年)が直接決めて先制する。

 その3分後にはMF加瀬直輝(3年)のドリブル突破から、U-17日本代表FW染野唯月(2年)のゴールによって2-0。前橋育英の猛反撃を全員で凌いで競り勝った。

 尚志は本来の主力CBが怪我で離脱中。苦しい台所事情だが、選手層の厚さも強みに8強入りした。仲村監督は各選手のチームに貢献しようとする姿勢含めて「一戦一戦成長が手に取るように見える」と頷く。同じく全国制覇を目指したインターハイでは2回戦でPK戦の末に無念の敗退。だが、12月のプレミアリーグプレーオフ突破から続く勢いが今のチームにはある。加えて、勢いも大きかった7年前と異なる部分は、強敵との連戦を勝ち抜く自力も身につけているところだ。

 加瀬は「自分たちの目標は本当に全国制覇。“史上最強”と言われている代なので、口だけでなく力で全国制覇して証明したい」と語り、染野は「この後も厳しい試合が続いてくると思うので、一戦一戦チームの団結力を深めて、成長していって、福島に優勝を持って帰れればいいと思っています」と力を込めた。

 18年夏には震災後休業していたJヴィレッジ(福島)が再開。地元の恩恵を受ける尚志はプレミアリーグプレーオフ、選手権開幕前にそれぞれJヴィレッジの天然芝ピッチでトレーニングを積んできたという。そのJヴィレッジ再開の年に再び躍進。色々な力に支えられている尚志は感謝しながら、これからの戦いに臨む。「7年前」と同じ勢いと、「7年前」にはまだ無かった自力や選手層の厚さ。成長し、両方を兼ね備えるチームになった尚志が、今大会で歴史を塗り替える。
 
(取材・文 吉田太郎)

●【特設】高校選手権2018

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