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「膝を言い訳にしない」水がたまり、力入らず…満身創痍だった大津DF福島隼斗、涙の終戦

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右膝に痛々しいテーピングを巻いてプレーする大津DF福島隼斗(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[1.3 選手権3回戦 青森山田高3-0大津高 等々力]

 もう限界だった。今大会を通じて右膝に痛々しいテーピングを巻き、強行出場を続けてきた大津高DF福島隼斗主将(3年、湘南内定)。青森山田高(青森)に0-3の完敗という結果にピッチ上で男泣きしたキャプテンは試合後、右膝を大きな氷のうでアイシングしながら、足を引きずるようにミックスゾーンに姿を見せた。

 平岡和徳総監督によると、選手権の県大会が終わったころから福島の右膝には水がたまり、「力が入らず、可動域も狭くなっている」状態だったという。それでも昨年12月14日、16日に行われた高円宮杯プレミアリーグプレーオフの1回戦・静岡学園戦(○3-1)、2回戦の矢板中央戦(○3-1)にも連続フル出場。チームをプレミアリーグ昇格に導くと、昨年12月31日の全国選手権1回戦・桐光学園戦(○5-0)ではU-19日本代表FW西川潤(2年)を完封した。

 前日2日の2回戦・大分戦(○2-2、PK4-2)はPK戦にまでもつれ込む激闘。平岡総監督は「満身創痍だった。12月に入ってから静岡学園、矢板中央、桐光学園、青森山田と、タイトルマッチを4試合やってきた。体調が万全でない選手もいた。今日も松原を使えなかったし、今日勝っていても、次は福島を含めて3、4人は使えなかったと思う」と過酷なスケジュールを嘆き、「いいときと比べると、ランニングスピードもパススピードも遅かった。桐光学園戦がピークだったのかなと。あのダメージがずっと残っていた」と指摘した。

「膝は思ったようには動いてくれなかった」。そう認めた福島だが、「膝を言い訳にはしたくない」とキッパリ言った。水を抜き、ヒアルロン酸注射を打ち、だましだましプレーを続けてきた。自分の力を出し切れなかった悔しさもあったはずだ。それでも「ベストは尽くしたし、膝が完治したからといって勝てる相手でもなかった。チームも個人も、うちは青森山田より一つ甘かった」と、一切の弁解をしなかった。

 福島にとっては初の全国選手権。「初めての経験で、あこがれの舞台に立てたのはうれしかった。3年間、一緒にきつい思いをしながらやってきた仲間と全国で2勝して、青森山田には負けたけど、一度やってみたかった相手とやれた。楽しかったけど、やっぱり悔しい」。赤い目を腫らしたキャプテンは卒業後、湘南ベルマーレに入団する。「全国優勝という目標は高校年代で果たせなかったけど、プロで日本一を経験したい。Jリーグを経験して、世界にも行きたいし、もっと上を目指してやりたい」。福島はそう言って顔を上げた。

(取材・文 西山紘平)

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