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[MOM2792]秋田商GK山口雄也(2年)_「選手権に出るため」東京を離れ、“人生初”PK戦で秋田のヒーローに!

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秋田商高をベスト8に導くヒーローとなったGK山口雄也(2年)(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.3 選手権3回戦 龍谷高1-1(PK2-4)秋田商高 フクアリ]

 公式大会でのPK戦は人生で初めて。一世一代の大勝負に臨んだ秋田商高GK山口雄也(2年)が快挙の立役者となった。「選手権に出た回数が多かったから」と進学した秋田の名門を32年ぶりのベスト8進出に導き、「ここまで来るのは全然想像していなかった」と朗らかな笑みを浮かべながら話した。

 後半終了間際までは1点ビハインドで敗色濃厚。自身もあわや失点というキャッチミスを犯してしまうなど、流れは決して良いものではなかった。だが、後半40分にDF山本翔太(3年)の同点ヘッドが決まると、そこからムードは最高潮。スタンドが大いに沸き立つ中、ヒーローになったのは東京生まれの守護神だった。

「どっちかっていうとPK戦は苦手で、練習試合では触ってたとしても入っていた」。試合後にはそんな謙遜も飛び出したが、見ていた者は真逆の感想を抱いたであろう。先攻で登場した相手の1本目にドンピシャで飛び込んでストップし、3本目も絶妙な予測で左ポストに当ててかき出した。

 意識していたのは「相手にとって蹴りやすい利き足の対角」という要素のみ。以前は「悩みながら飛ぶことが多かったけど、最初から飛ぶ方向を決めていたほうが良い」という反省からだった。これまで公式戦のPK戦を経験したことは一度もないが、浅い経験こそが迷いをなくさせていたようだ。

 東京都で生まれ育ち、GKを始めたのは小学3年生の頃。フットサルコートでプレーしていた当時、ポジションを担っていた仲間が練習を休んでいたのがキッカケだったという。「自分が手を挙げたらそのまま決まった」。もともと憧れはあったポジションを、ここまで辞めたいと思うことなく続けてきた。

 秋田に越したのは高校入学時。「選手権に出ることが夢だった」こともあり、シンプルに全国で最も選手権出場回数が多い秋田商を見つけて「全国に出るなら秋商」と決断した。「親に甘えることもあったので、一人で自立したいという気持ちもあった」と果敢なメンタリティーも後押しした。

 そんな心持ちは自身のGK観にも大きな影響を与えている。守護神としてのやりがいを問われれば「相手との1対1。形に残らないので難しいところが良い」と即答。大勢の報道陣に囲まれても「たまにシュートを打ってほしいって思う時もあるし、たぶんMなんだと思います」と冗談めかす余裕も見せた。

 首都圏での開催とあり、「友達も見に来てくれた」とアウェーの感覚は全くない。それどころか「ほとんどの人がここまで来ると思っていなかったし、そんなに仲良かったっけって人から連絡が来たりもして嬉しい」と前向きだ。準々決勝の流通経済大柏高戦でも、地元の仲間に自身の勇姿を見せつける。

(取材・文 竹内達也)

●【特設】高校選手権2018

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