beacon

フットサル日本代表招集歴持つ監督に導かれた初出場瀬戸内高の奮闘「またゼロから」

このエントリーをはてなブックマークに追加

涙を流す選手たちを労う安藤正晴監督(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[1.12 選手権準決勝 瀬戸内0-5流経大柏 埼スタ]

 力の差を見せつけられた。流通経済大柏高の本田裕一郎監督も真っ先に1週間のインターバルがあったことを勝因に挙げたように、コンディションは万全。Jリーグ内定選手らを擁するタレント軍団は、初出場の瀬戸内高(広島)に容赦なく襲い掛かった。

 開始10分で2失点。「選手は緊張していなかったと思うけど、そこで勝利するのは難しい展開になってしまった」。素直に5失点完敗を認めるしかなかった安藤正晴監督(46)だが、「県予選を突破してからさらに成長し続けてくれた」とイレブンの労をねぎらった。

 広島大時代にフットサル日本代表招集歴を持つ安藤監督。瀬戸内を率いて19年目だが、今年度のチームは近年でも例をみないほどの弱小チームだったという。例年、一学年40名ほどで構成しているが、今年の3年生は27名。そのためにどうしても下級生に頼らざるを得なかったからだ。

 プリンスリーグ中国を戦ったが、一時は降格圏に低迷。しかし夏場に「蹴って走るサッカー」から「ボールを回すサッカー」に180度転換したことで、一気にチーム状態が上向いた。そしてそんな“弱小チーム”は学校の歴史に名を残す、高校選手権ベスト4という最高の成績を残してみせた。

 ただし安藤監督が「今回はたまたま」と強調したように、組み合わせに恵まれていたことは自他ともに認めている。さらに優勝候補にこてんぱんに打ちのめされたことで、「またゼロから謙虚な気持ちでやっていきたい」とより現実を直視することが出来た。

 学校に戻れば教頭先生。昨年春の新人戦ではチームのルールを守れなかった主力をメンバーから外すなど、厳しさも併せ持つ。「今年を経験した子が半分以上ある。磨きをかけていきたい」。ようやく踏み出した一歩。それでもこの一歩は確実に未来に繋がった。昨年JリーグでブレークしたFW安部裕葵を輩出した新興校の今後に注目していきたい。

写真協力『高校サッカー年鑑』

(取材・文 児玉幸洋)
●【特設】高校選手権2018

TOP