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創部5年目の星槎国際湘南、初の決勝で初優勝!6年ぶりの頂点狙った常盤木学園はインハイとの2冠ならず

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創部5年目にして初優勝まで駆け上がった星槎国際湘南(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[1.13 女子選手権決勝 常盤木学園0-1星槎国際湘南 神戸ユ]

 13日、第27回全日本高等学校女子サッカー選手権大会決勝が神戸ユニバー記念競技場で行われ、星槎国際湘南(関東3/神奈川)が常盤木学園高(東北1/宮城)を1-0で下し、創部5年目にして初の選手権決勝進出で初優勝を飾った。昨夏のインターハイとの2冠、そして6年ぶり6度目の優勝を狙った常盤木学園は終盤の猛攻も実らず涙をのんだ。

 試合開始から出足の早い星槎国際湘南がペースを握りかける。前半15分、今大会5ゴールのFW加藤もも(3年)のミドルシュートが常盤木学園GK今井佑香(3年)の指先をかすめてバーを直撃。だが、常盤木学園も落ち着いて対処し、徐々に押し返す展開となった。

 そんな中、試合が動いたのは前半23分だった。ゴール正面だが距離のある位置でFKを獲得した星槎国際湘南。キッカーのDF黒柳智世(2年)の右足がボールの芯をとらえたシュートはストレートの弾道で常盤木学園ゴールに突き刺さった。「後悔がないように気持ちで打ちました。蹴る前にボールに下を蹴ると浮くと言われたので、ボールの中心を蹴ることだけ意識しました」と本人が振り返る一発が結果として決勝点になった。

 後半、サイドを中心に攻勢を強める常盤木学園だが、星槎国際湘南の出足は衰えない。「理屈じゃない体の寄せがあった」と星槎国際湘南の柄澤俊介監督が振り返るように、攻撃を許すものの、一度跳ね返したルーズボールでの球際での勝負でも優位に立ち、常盤木学園に2次攻撃、3次攻撃を許さなかった。

 常盤木学園はトップに入るFW中村恵実(3年)が奮闘。フィニッシャーにも起点にもなり打開を図る。さらにボランチに入るMF柴山史菜(3年)も積極的にシュートを放つなど圧力をかける。

 これまでなら、このような圧力に屈して試合を落とすことも多かったという星槎国際湘南だが、この試合は違った。ゴール前ではブロックを形成し、シュートを許してもGK小野葵(2年)が好セーブ。「GK含め全員で体を張って守れた。FWもプレスバックしてくれたし体を張ってくれました」と、キャプテンのDF渋谷巴菜(3年)は振り返る。アディショナルタイムも常盤木学園が左サイドから柴山のクロスにMF西野朱音(2年)が頭で合わせるが、GK小野の好セーブで得点を許さず、インターハイ王者を無失点で退けた。

 試合後、星槎国際湘南の監督も選手も「もう少し落ち着いてボールを動かすパスサッカーをしたかった」と反省が漏れていた。それでも勝てたのは、勝ちたいという気持ちの部分。柄澤監督は「選手権は前年まで3年連続初戦敗退だったということが一番の教訓だったかもしれない」と語る。

 これまでも世代別代表候補の選手を擁するなどチーム力はあった。それでも勝てなかった選手権という経験が、ここ一番での気持ちの強さにつながったかもしれない。渋谷キャプテンも「この大会が始まるまでいいイメージが持てなかった。この大会で成長した」という。特に初戦の大商学園(関西1/大阪)に4-1で勝ち、「初戦の入り方がよかった」ことでその後、成長曲線を描きながら決勝まで戦い切った形となった。

 一方で、登録メンバー30人中15名がOSAレイアFC出身。これは2012年から星槎グループの学校施設を活動拠点として始まった総合型スポーツクラブの女子サッカーチームの名称だ。星槎国際湘南もこのクラブのピースとして、卒業生たちがプレーするトップチームに選手が練習参加するなどし、プレースピードの速い環境の中で実力を磨いてきた日々が今日の結果に結びついたことも確かだろう。

 一方、インターハイとの2冠、そして6年ぶりの頂点を狙った常盤木学園にとっては悲しい結果になってしまった。守護神にして主将の今井は涙。「夏(インターハイ)より冬(選手権)の方が“最後”であるぶん思いが強くなる。簡単に優勝できないということを痛感させられました」。後輩たちに対して残した「サッカーは強いチームだけが勝つわけじゃない。何が起こるかわからない。強いチームでありながら勝ち切るチームになってほしい」という言葉は今後の財産になっていくだろう。

 最後に悔しさを味わったが、インターハイ優勝、選手権は準優勝。この結果は、名門・常盤木学園の歴史を彩る立派な功績であることは間違いない。

(取材・文/伊藤亮)
●【特設】高校選手権2018

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