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土壇場で一発! 「4度目の正直」でパラ出場を目指す43歳の日本代表・佐々木康裕の執念

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佐々木康裕(中央)は強烈な左足シュートを決めた

 ブラインドサッカー日本代表合宿が12日、千葉県内で行われ、午後は紅白戦を行った。過去3度のパラリンピック予選を経験している佐々木康裕が控え組に入り、アブディン・モハメドと交互に出場。ピッチに立てる時間は他の人の半分で、それまで数回しかボールに触れなかったベテランは最初で最後のチャンスを逃さなかった。試合終了間際にゴール前でボールを持つと、2人をかわして左足で元JリーガーのGK榎本達也からゴールを奪った。3月に品川で行われるワールドグランプリの代表生き残りを猛アピールだ。

「自信になりましたし、ボールがおさまれば自分の強みが出せると思う。ドリブルに持ち込んで相手のタイミングを外してシュートまで持ち込むことが強み。そこに至るまで、ルーズボールの競り合いでうまくボールを確保できれば、もっとチャンスが広がってくると思う」

 11日に発表された日本代表強化指定選手15人の中で、43歳の佐々木康はもちろん最年長。2008年の北京五輪、2012年のロンドン五輪、2015年のリオデジャネイロ五輪といずれも代表選手として予選を戦い、切符をとり切れない瞬間に立ち会ってきた。

「2003年に競技をはじめて2005年から代表に選んでもらっていますが、3大会ともすごい悔しい思いがあります」

 生まれつき目の病気にかかっていたが、片目だけ見えていたため、小学校4年生から当時、はやっていたキャプテン翼にあこがれてサッカーに夢中になった。しかしその後、病気がすすんで、中学からほぼ全盲に。

「目がだんだん見えなくなったことに対しては、ショックを感じたというよりだんだん慣れていった感じでした。視力が落ちてくる過程で、今までは『できる側』だったのが『できない側』に変わってしまった。それが一番悔しくて……」

ゴールを決め、笑顔を見せる佐々木康裕

 理不尽な現実を悲しむどころか、むしろ「悔しい」と思える強さが、43歳のベテランを今でもピッチに立たせる原動力だ。日本代表は現状、主将の川村怜と東日本リーグ得点王の黒田智成に加え、田中章仁佐々木ロベルト泉が主力として固まり、高田敏志監督は彼らに匹敵する5、6番手選手の育成を課題にあげている。高田監督が「川村や黒田とはタイプが違う」と評する佐々木康は、その候補の一人なのだ。

「2014年に高田監督が当時、GKコーチとして守備をシステマチックに構築していたときから、自分はそのチームの中でうまく機能しなくなってしまった。チームにフィットしながら強みを出せるようにしたい。控えの4人を目指すのではなく、試合に出たら点を取るぐらいじゃないと代表に残るのは難しいと思っています」

 佐々木康はこの鼻息の荒さで、「4度目の正直」をかなえるつもりだ。  
 
(取材・文 林健太郎)

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