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4年越しの思い、家族も見守る中…“地元”決勝弾の塩谷「忘れられない一日になった」

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決勝ゴールを決めた日本代表DF塩谷司

[1.17 アジア杯F組第3節 日本2-1ウズベキスタン アルアイン]

 地元スタンドからの「シオ!」という温かい声援を受け、4年越しの鬱憤をぶつけてみせた。本職ではないボランチで先発した日本代表DF塩谷司(アルアイン)は後半13分、持ち味の強烈なミドルシュートで決勝点をマーク。家族や友人が見守る中での活躍に「本当に忘れられない一日になった」と感慨深い様子で語った。

 異例のUAE移籍から1年半が過ぎ、本拠地として使用してきたシェイク・ハリファ国際スタジアムで迎えた日本代表戦。先発が告げられたのは試合前ミーティングだった。「こっちでやっている試合も見ているから、いつもどおりのプレーをしてほしい」。広島で共に戦った森保一監督の初起用を受けて、ホームのピッチに立った。

 与えられたポジションはボランチの一角。相方を務めたのは広島でも共にプレーしたMF青山敏弘(広島)だった。「ボランチはアルアインでもやっていたので、自分にできることをやれれば」。立ち上がりこそ役割が曖昧になる場面も見られたが、時間が経つにつれて関係性は向上。次第に「(青山とは)ずっと一緒にやっているような感覚」を味わうほどになっていった。

 チームは1-1で前半を終え、後半も拮抗した展開でスタート。すると後半13分、己の一振りで試合を動かした。「ボランチだったのでチャンスがあればミドルを打っていこうと思っていた」という想定どおり、味方の右クロスからのこぼれ球に迷わず左足を一閃。「コースが見えたので枠を外さず、低く押さえて強く」との意識で放ったシュートが、まっすぐにネットへと突き刺さった。

「もう、頭が真っ白になりました」。取材陣に対し、開口一番にそうこぼした30歳。現地ファンの「シオ!」という歓声も聞こえ、家族や友人が見守る中での勝ち越し弾に感激を隠せなかった。「代表への思いは常に持っていたし、どこに行こうが自分を高めるだけ」。日の丸への意識を絶やさず、遠く中東で戦い続けていた男にとって、これが記念すべきA代表初ゴールでもあった。

 前回のアジアカップでは招集されたが出番なし。「前回は自分が未熟だったので出られなかったし、コンディションも良くなかった」と振り返る。ただ、この4年間で成長してきた自負はあった。「追加招集で呼ばれて、一日一日できることをしようとやってきた。その結果が今日のパフォーマンスにつながった」。今度は自らの力で出番をつかみ、目に見える結果で4年前の鬱憤を晴らした。

 このゴールが決勝点となり、日本は3連勝でのグループリーグ首位通過が決定。「今日の試合で不甲斐ないプレーをすると、これからの過密日程で選手を変えることが難しくなる。やれることを示さないといけない試合だった」。現状では控えに甘んじている選手たちが先発に並んだ中、重要視されていた『日本代表の総力』を誇示する勝利だった。

 とはいえ、この喜びに浸り続けるつもりはない。「もう少し攻撃に顔を出せれば良かったし、失点の場面でもカバーに行っていれば違う結果があったはず」。4年ぶりに日本代表のピッチに立ったことで「90分間通して良かったかというとそうじゃない。代表で試合に出続けようと思ったら、もっともっと高めないといけない」と新たな野心も芽生えたようだ。

「日本代表でのゴールや勝利は格別」という得難い体験を経て、「最後まで全部勝つチームが強い。それを目指すだけ」と力強く語った塩谷。「代表はすごくレベルが高くて、こういうところでプレーし続けたいと思うし、代表で通用するプレーをまだまだしたい」。“地元開催”でつかんだ大きなチャンス、最後に歓喜を迎える時までその挑戦を終わらせるつもりはない。

(取材・文 竹内達也)

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