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[新人戦]“テクニカルトライアングル”軸に流動性高いサッカーを展開、高知が頂点に:高知

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後半15分、右SB壬生椎成(左から2人目)のゴールを喜ぶ高知高イレブン

[2.3 高知高校新人戦決勝 高知西高 0-1 高知高 日高総合運動公園]

 平成30年度第2回高知県高校サッカー冬季大会(新人戦) 決勝は高知高高知西高のカードとなった。FW楠瀬海野島唯暉と西森亨弥のツーシャドーの前線のテクニカルなトライアングルを軸に、ショートパスを駆使して崩しにかかる高知。それに対し、アンカーの府川拓渡の展開力から左の岡本青龍、右の宮崎祥亘の両サイドハーフの仕掛けからゴールを狙う高知西の図式で始まったこの一戦は、前半は両者譲らずの白熱した攻防戦となった。

 だが、徐々に高知がペースを握り出した。その流れを生み出したのは、前述した“テクニカルトライアングル”だった。野島と西森が相手のギャップに顔を出して、アンカーの吉尾慎太郎やDFラインから縦パスを収めると、鋭いターンと抜群のキープ力でタメを作る。それに対し、楠瀬がDFラインの裏を狙いながらも、時には2シャドーに寄ってボールを受けては、周囲にシンプルにはたいたり、自らドリブルで狙うなどリズムを変えながら仕掛けた。

 さらに楠瀬がポジションを落とすと、2シャドーがそのまま前に出て、2トップとトップ下の関係になって、楠瀬がゲームメイクをするなど、変化に富んだ仕掛けの前に、高知西の守備陣は後手に回った。

 後半に入ると、さらにギアを上げて来た高知は、9分に右サイドハーフの畠中颯斗がボールを受けると、オーバーラップをして来た右SB壬生椎成にパス。壬生の折り返しを野島が狙うが、これはDFがブロック。同13分にも右サイドを破った野島のクロスに壬生が合わせてゴールネットを揺らしたが、これはオフサイドの判定。それでも15分、西森がドリブルで仕掛けて相手DFを引きつけてから壬生へラストパス。壬生が強烈なシュートを放つと、ボールはGKの手をすり抜けてゴールへ。高知が先制に成功をした。

「1点で満足するな!」。高知・高橋秀治監督の檄に呼応するように、さらに攻め手を強めた高知は21分に左CKから、ファーサイドで長身CB小黒大翔がヘッドで合わせるが、これはサイドネット。31分に西森から左サイドハーフの都築楓太がシュートを放つが、高知西GK石川敦也がファインセーブ。追加点こそ奪えなかったが、最後まで攻撃的な姿勢を貫いた高知が1-0で勝利し、新シーズン最初のタイトルを掴み獲った。

「自分の判断を大事にしています。選手達の判断を重要視し、緩急と駆け引きを持ってやらないと、このようにフィジカルでは劣る選手達が生きないし、大人になってサッカーを楽しめないと思うんです」。

 試合後、高橋監督が語ったように、高知は『テクニカルトライアングル』を中心に、畠中、吉尾、小黒、GK森亮太がポイントとなって、流動性の高いサッカーを展開した。加えてレギュラー11人中5人(楠瀬、野島、都築、吉尾、小黒)が高知中出身と言うのもあり、連携の精度は非常に高かった。

 この試合の中で、高知西がダブルボランチにシフトチェンジした際も、「小黒をボランチに上げて3-4-2-1で対応してもいいぞ」と高橋監督は指示を送ったが、選手達は「このままで大丈夫です」と自らで判断をして、流れを手放さなかった。

「もっと四国のレベルを上げたい。青森山田、流通経済大柏などの全国のトップレベルと戦うためには、守ってカウンターだけでは絶対に通用しない。だからこそ、彼らに自分を活かす『道具』を与えてあげる事が、指導者にとって大事な事だと思います」(高橋監督)。

 昨年の選手権は青森山田の2回戦を選手達とスタンドで観戦し、意識を共有させた。選手権15回、インターハイ出場14回を誇るが、ここ数年は全国から遠ざかっている。今年こそ2大大会での王座奪還と、全国で勝つチームになるべく、S級ライセンスを持つ高橋監督と、技巧派の選手たちが復活のセッションを巻き起こして行く。

(取材・文 安藤隆人)

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