打倒・志村学園の秘策はドイツW杯戦士から授かった「金言」

　第4回全国知的障害特別支援学校高等部サッカー選手権「もうひとつの高校選手権」が16日、静岡県藤枝総合運動公園サッカー場で開幕する。代表10校を紹介する連載の2回目は、前回の準決勝で王者・志村学園に敗れた大阪府立たまがわ高等支援学校。

　いきなりのリベンジマッチだ。昨年3位に食い込んだ大阪府立たまがわ高等支援学校は1回戦で王者・東京都立志村学園と激突する。北川力也監督は言葉に力が入った。

「去年も仕上がりはよかったんです。それなのに準決勝で志村学園に0-5ですから。少し次元が違いました。今年も例年同様、ウチは攻撃陣にいい選手がいますが、志村学園を倒すには特にディフェンスが大事になってくると思います」

　キーワードは「こだわり」だ。北川監督が続ける。

「相手ボールを奪いにいった選手が奪えなかったら、カバーリングに行った選手が行く。その選手が抜かれそうになっても、今度はチャレンジにいった選手が戻ってカバーする。そういった組織的なディフェンスを重点に置いてやっています」

　1月19日、大物ゲストを招いたときにその「こだわり」の大切さを見直すことができた。たまがわ高等支援学校は文部科学省が推進する“「学校における交流および共同学習」～「心のバリアフリー」の実現に向けて“のモデル校に選ばれており、この日はなにわ高等支援学校、府立山本高校(普通科)のサッカー部を招き、知的障がい者と一般の人の交流を深める目的でサッカー教室を開催。2006年ドイツワールドカップに出場した元日本代表DFの加地亮氏やガンバ大阪のスタッフを招いた。

「プロ中のプロの方に教えていただけるのは初めてでしたが、とにかく雰囲気がよくて…。メーンはガンバのスタッフの方にやっていただき、加地さんに後からアドバイスをいただく形でしたが、『ゴールをしたら絶対に喜べ!　喜びが足りなかったらゴールとは認めません』なんていう面白いルールを作って、点をとったら生徒たちは胴上げまでしてました。サッカー教室を機に、生徒たちの点を決める喜び、決めたい、という思いが前よりも強くなりました。今までは頼れる子にパスを預けちゃうところもあったんです」

1月19日のサッカー教室に姿を見せた元日本代表DF加地亮氏(提供:大阪府立たまがわ高等支援学校)

　サイドバック(SB)出身の加地氏はサイドからクロスをあげる練習の実演指導もしてくれた。

「『どのボールを、どんなイメージで、どういう回転のボールを蹴るか、いつも考えて蹴りなさい。結構、なにげなくやりがちだ。自分が蹴ろうとしたボール、意識したボールを蹴りなさい。それが積み重ねになるから』とアドバイスをいただきました」(北川監督)

　勝つことにこだわる。だから、守備のしつこいカバーリングに、練習の1本のクロスにこだわる。その先に、志村学園から奪う金星が待っている。

(取材・文　林健太郎)

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■学校紹介
2006年(平成18年)創立。同年、サッカー部(チャレンジスポーツ部)を創部。開校と同時に入学検査(選抜試験)を大阪府で最初に実施した高等支援学校。週11時間は職業に関する学習を実施し、外部講師として企業の方を頻繁に招き、より高い技術・技能の習得を目標としている。
　職業教育はものづくり科(産業基礎、食品生産)と福祉園芸科(福祉、園芸)と流通サービス科(オフィスサービス、バックヤードサービス)に分かれる。また、全学科共通科目として清掃と販売がある。清掃を通して働くための作業態度やマナーを学び、販売を通してお客様に対する基本的なマナーや元気な挨拶、正しい姿勢を学ぶ。
　また、府立の高等高校(府立金剛高校、府立枚岡樟楓高)と連携する、「共生推進教室」が設置されている。1学年に3人の生徒が在籍し、籍はたまがわに置きながら、週4日は連携するいずれかの学校の授業や行事に参加し、様々な生徒との交流を図る。知的障がいのある生徒は、限られた場所でしか学べなかったが、高等学校の生徒との交流の機会を通して機会や能力の可能性を広げていく目的がある。

■校長
長谷川陽一

■サッカー部監督、スタッフ
監督　北川力也　
コーチ　薮田大輝　今村優
応援教員　今坂真悟

■主将
中原太律(2年)

■予選成績
(大阪府予選)
●0-1大阪府立なにわ高等支援学校
〇3-0大阪府立すながわ高等支援学校

(関西代表決定戦)
〇5-0兵庫県立姫路特別支援学校
△1-1兵庫県立東はりま特別支援学校
△1-1(PK3-5)大阪府立なにわ高等支援学校
※関西準優勝

■過去の全国大会成績
第1回(2015年度)1回戦敗退
第2回(2016年度)関西大会敗退
第3回(2017年度)3位

■出場選手登録一覧
Pos　名　前　学年
GK1坂本和樹(3年)
DF2出口宏紀(2年)
DF3早川神生(1年)
DF7近藤享佑(1年)
DF5秋山侑輝(2年)
MF4三宅一輝(2年)
MF6松村龍之介(2年)
MF8三宅大嶺(1年)
MF9小笠原亮(3年)
MF12武田大斗(1年)
FW10中原太律(2年)★
FW11山口汰一(1年)
【注】番号は背番号、★は主将

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