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[もうひとつの高校選手権・開幕直前]出場校紹介:静岡県立藤枝特別支援学校焼津分校

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提供:静岡県立藤枝特別支援学校焼津分校

ピンチはチャンス!サッカー王国を制した新顔の野望

 第4回全国知的障害特別支援学校高等部サッカー選手権「もうひとつの高校選手権」が16日に静岡県藤枝総合運動公園サッカー場で開幕する。ゲキサカでは本日から代表10校を紹介する連載の7回目は初出場の静岡県立藤枝特別支援学校焼津分校。

 足りないことをプラスに変える。創部6年目で初の全国切符を手にした静岡県立藤枝特別支援学校焼津分校の大石俊一監督は、サッカー王国といえども部員集めに悩む現状をチームをまとめるプラス材料にしようとしている。

「ウチはサッカー部員自体はようやく11人そろうぐらい。ですから本来はバスケット部にいる子を2人ぐらい応援を願って出ることになると思います。ピッチにサッカー経験が浅い子が最大2人いる可能性も出てきますが、彼らができないことを責めるのではなく、その子たちをうまく使いなさい、と言い続けています。彼らはボールをしっかり止めることができるので、パスしたらまたもらいにいけばいい。普段の練習でも、技術のある子とそうでない子を組ませてパス練習するよう、意識しています」

 サッカーはひとりではできない。チームには1年生ながら静岡選抜・東海トレセンの合宿にも呼ばれた有能な選手もいるが、夏は中部予選で静岡北特支南の丘分校に敗れた。しかし、秋の県大会決勝の再戦でリベンジをはたし、初の全国切符を手にした。何が変わったのか。

「技術がある生徒などは入学当初は『自分が、自分が』と言う気持ちが強かったのですが、秋口あたりから周りの選手を使いながら自分が生きることも覚えてくれた。意識が変わりました」

 知的障がい者のサッカー部は、経験者を集めるだけでも苦労する。それはサッカー王国・静岡にあっても同じだ。したがって、部の中で、うまい選手とそうでない選手の力に開きがあり、上手な選手が未熟な選手を「なんでできないんだ」と責めることがあり、藤枝特別支援学校焼津分校も例外ではなかった。お互いの存在を認め、成長を待つために必要な我慢強さは、「朝活」で培われた。毎朝、必ず「朝読書」と「朝トレ」の時間があり、「朝トレ」はラジオ体操の後、生徒全員5分間走を行う。1周250mのトラックを何周回れるか。達成度を毎日記録して、先生が評価する。ここで走力が磨かれたサッカー部の生徒などは、焼津水産高校と合同で行われるマラソン大会でも3位に食い込むほど。日々の自分に対して挑戦する時間が心と体の「スケール」を大きくしている。

「伸びていれば素直にほめてあげるようにしていますし、そのことが結局、自己肯定感につながると思います」(大石監督)

 2回戦から登場する焼津分校の初戦の相手は、前回王者の東京都立志村学園と大阪府立たまがわ高等支援学校の勝者。相手に不足はないが、大石監督はひるむことなく、こう明かした。

「目指すのは堅守速攻です。攻められたときがチャンスだと思っています。足の速い選手が2人いて、中盤・ボランチの選手には攻守に汗をかいてもらって、FWの選手にいかにいい形でボールを渡せるか。志村学園があがってきたらなかなか大変ですけど、ジャイアントキリング、起こしたいですね」

(取材・文 林健太郎)

■学校紹介
 静岡県立藤枝特別支援学校が入学者増によって狭くなり、高等部の軽度知的障害のある生徒への教育の充実のために2013年4月静岡県立焼津水産高等学校内に焼津分校が設置される。同じタイミングでサッカー部もできた。
生徒は1学年18人。焼津水産高等学校の教室を3つ借りている。同水産高校の実習船での乗船体験や文化祭なども一緒に行うことを通して、健常者と障がい者が混ざり合う共生共育も行われる。
 また、障がいのある人が日頃、職場などで培った技能を競う「アビリンピック」にも2年連続で出場している(喫茶サービス部門 オフィスアシスタント部門)

■校長
鈴木和裕

■サッカー部監督、スタッフ
監督 大石俊一
コーチ 金城若菜、冨岡孝宏、伊藤圭太 惣田芳幸

■主将
上畑竜二(3年)

■予選成績
(中部予選)
〇4-2清水特支
●0-2静岡北特支南の丘分校
(県大会・予選リーグ)
〇6-0富士特支
〇1-0浜松特支城北分校 
〇3-0静岡北特支南の丘分校

■過去の全国大会成績
なし

■出場選手登録一覧
Pos 名 前 学年
GK1中川力也(1年)
DF2杉崎竜弥(3年)
DF3齋藤海都(2年)
DF4鈴木彪護(2年)
DF5百々隆聖(3年)
MF6石神琢馬(2年)
MF7奥川大起(2年)
MF8田中颯汰(1年)
MF9津田樺南(2年)
MF13服部凜亮(1年)
MF10上畑竜二(3年)★
FW11森健太(2年)
FW14伊藤真宙(1年)
【注】番号は背番号、★は主将

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