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今季のジャッジ基準は…議論呼んだ12事例をJFA上川氏が説明

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Jリーグの判定基準を説明した上川徹氏

 日本サッカー協会(JFA)は12日、国内サッカーシーズンの開幕前に判定基準を説明する『JFA Media Conference on Refereeing 2019』を開催した。JFAのトップレフェリーグループシニアマネジャーを務める上川徹氏が集まった報道陣に向け、議論を呼びやすいハンドリングやオフサイドなどの事例集を映像で紹介した。

 上川氏は毎シーズンオフ、JFA審判委員らと分担で各Jクラブを巡回し、新シーズンの判定基準を説明している。今回の映像は、来季に向けた説明の場で使っているもの。出てくる事例はリーグ戦試合後の意見交換会でも議論になりやすい、ハンドリングやオフサイドの反則を中心に構成されていた。

「競技規則をすべての人たちに理解してもらうことで、日本サッカーがよりフェアに、よりスピーディーに、よりタフに向上していくと考えている」(上川氏)。ピッチ上の選手がルールを知っておくことはもちろんだが、サッカーを報じるメディア、応援するファン・サポーターにもルールへの理解を求めていく姿勢だ。

 以下、発表会の場で上がった事例を順にお伝えする。

■「接触」ではなく「意図」/ハンドリング
 ハンドリングは「ボールを意図的に手または腕で扱う」反則。単にボールが手や腕に『接触』したというだけでは足りず、『意図』があったかどうかが重要となる。もっとも主審が選手の『意図』をくみ取ることは難しい。そこでは『意図』があったかどうかを判断できる客観的な事実に焦点が当たる。

 特に議論になりやすいのは、攻撃選手がキックした後、反応できない速度で守備選手の手や腕にボールが当たった時。競技規則では『意図』があったかの基準として「手や腕の位置」や「相手競技者とボールの距離」を判断材料に挙げているが、映像でそういった場面を見ても議論が分かれているのが現状だ。

映像にあったのは以下の5場面。
(選手名はハンドが疑われた選手)

①J1第20節 浦和×長崎 後半AT 飯尾竜太朗(長崎)
②J2第5節 東京V×福岡 後半17分 堤俊輔(福岡)
③J1第29節 鹿島×川崎F 後半11分 谷口彰悟(川崎F)
④J2第8節 新潟×岡山 後半44分 赤嶺真吾(岡山)
⑤J2第30節 松本×横浜FC 前半40分 ぺ・スンジン(横浜FC)

 いずれも至近距離からのクロスやシュートを防ごうとした選手の手や腕にボールが当たった場面。結論から言えば、ハンドリングが認められたのは⑤だけで、いずれも正しい判定だった。⑤では相手シュートに対し、ブロックを試みたぺ・スンジンの腕が大きく上に振り上げられており、「不自然な位置」にあったことで「意図的である」と判断された。

 それ以外の場面はすべてノーファウルが正しい判定だった。その中でも②〜④の場面では、守備選手が直立した状態でぶら下がった手や腕にボールが当たっており、不自然な位置にはないとは言えず、ボールが当たることを予見できるような距離でもなかったため、記者たちからも異論が出ることはなかった。

 一方、①のケースでは左サイドからクロスを上げようとした選手に対し、ブロックを試みた飯尾の浮き上がった左手にボールが当たっており、報道陣から「不自然では?」「意図的に腕を残しているのでは?」という質問が多く挙がった。たしかに映像を見ると、当たった腕は身体から離れているように見えた。

 ただ、上川氏の説明はハンドなし。飯尾は右足を伸ばしてブロックしようとしており、左手が振り上がったのはその反動で、「意図的なものではない」「不自然とも言えない」という見解だった。また、出席した主審からは「別角度のカメラだと見え方が異なるのでは(つまりノーハンド)」という指摘もあった。

■注意しておきたいオフサイド
 オフサイドは「後方から2人目の相手競技者」よりゴール寄りで味方のプレーに反応した攻撃選手を罰するためのルール。ピッチサイドで目を光らせる副審の判断が最も重要になるため、際どい抜け出し以外で議論に発展することは少ないが、以下のようなケースではやや複雑な判断が求められる。

(1)パスが出た後、オフサイドポジションにいた攻撃選手がボールに触れず、オフサイドポジションにいない攻撃選手がプレーを続けた場合
(2)守備選手が意図的にプレーをした結果、オフサイドポジションの攻撃選手にボールが渡ってしまった場合

▼ボールに触れなくてもオフサイドになる?/(1)のケース
 (1)のケースでは、オフサイドポジションにいた選手がボールを触れずとも、「相手の視線を遮ることで、相手がプレーするのを妨げた」「ボールにプレーしようと試みたことで相手に影響を与えた」「ボールをプレーする可能性に影響を相手に与える明らかな行動を取った」場合にはオフサイドが成立する。

 勘違いされやすいが、ここで重要なのはオフサイドポジションの選手が「プレーに関与したか」ではなく「相手を妨害したか」どうか。こういったケースでは、オフサイドポジションにいなかった選手がシュートを決めた場合に議論が過熱しやすいが、今回提示された映像でもそういった場面が続いた。

映像にあったのは以下の4場面。
(選手名は最後にシュートを放った選手)

①J1第26節 柏×清水 後半17分 白崎凌兵(清水)
②J1第23節 清水×浦和 後半18分 金子翔太(清水)
③J1第29節 C大阪×G大阪 前半2分 ソウザ(C大阪)
④J1第29節 横浜FM×札幌 前半16分 チャナティップ(札幌)

 ①では清水の攻撃選手2人がオフサイドポジションに残った状態で、後方からすかさず浮き球が供給されたが、オフサイドポジションにいなかった白崎がPA内に飛び込んでゴールを決めた。オフサイドの攻撃選手2人は「ボールにプレーしようと試みていなかった」などことから、ゴール判定がそのまま支持された。

 ここでは記者から「相手選手に心理的な影響を与えているのではないか」という疑問が上がった。攻撃選手2人がオフサイドポジションに残っていたことで、守備選手がボールを流すような仕草をしていたからだ。もっとも、この場合では攻撃選手がボールへのプレーを行う様子がないため不問とされるようだ。

 ②〜④はシュートの軌道近くにオフサイドポジションの攻撃選手がおり、ボールに触れないながらも「妨害」が疑われた場面。②ではゴールが認められたが、③と④は認められなかった。その中で「ボールにプレーした」かどうかが明白だった②と③には大きな異論は出なかったが、④では議論が分かれていた。

 ④はチャナティップのシュートの軌道上に攻撃選手がおり、ボールを避けた先にゴールが生まれた。上川氏によると、避ける行為も「妨げる行為」にあたるという。回避動作も相手に影響を与える行為の一つであり、オフサイドを避けるためにはそのまま立っているか、より大きく逃げることが求められるようだ。

▼「意図的にプレーする」とは?/(2)のケース
 2015-16シーズンに競技規則改定により、守備選手が「意図的にプレーした」後、オフサイドポジションの攻撃選手にボールが渡った場合、オフサイドはないというルールに変更された。なお、守備選手がただボールに触れたというだけでなく、それが「意図的なプレー」であったかどうかが焦点となる。

映像にあったのは以下の3場面
(選手名は最後にシュートを放った選手)

①J1第24節 川崎F×仙台 後半10分 中村憲剛(川崎F)
②J2第30節 千葉×東京V 前半10分 下平匠(千葉)
③J2第35節 徳島×甲府 前半6分 ピーター・ウタカ(徳島)

 いずれも守備選手がボールを触れた直後、オフサイドポジションの攻撃選手にボールが渡り、ゴールネットが揺らされたという場面。①と②はゴールが認められた一方、③は認められなかった。すなわち、前者は守備選手が「意図的にプレーした」とみなされ、後者は「意図的にプレーしていない」とされた形だ。

 ①では仙台の大岩一貴がトラップをミスし、ゴール前の中村にボールが渡った形。②では東京Vの井林章がヘディングでクリアしようとし、背後の下平にボールが落ちた。いずれも自ら積極的にボールを扱おうとしていたことが分かりやすく、記者たちから異論は出なかった。

 ③では守備選手が相手シュートに対してブロックを試みた結果、後方にボールが転がっており、ボールを止めるという意味では「意図があった」ようにも思われる。しかし、ブロックは不可避的な行為であって「意図的にプレーした」とは言えない。すなわちオフサイド。基準が明白なので、ここも異論は出なかった。

■そのほか…
 上記で述べたように、使用された映像はJクラブに説明する際に使われたもの。そのため、安全に配慮が足りない危険なスライディングや、選手の安全を守るためにプレーを止めるべき場面、また、ゲームのイメージを壊してしまうようなレフェリーへの抗議など、注意喚起の映像も紹介されていた。

 次々に場面が切り替わっていたため、具体的な詳細を述べることができないが、「過剰な力」による足裏スライディングでレッドカードが提示された場面、選手同士が激しい衝突をしたのにプレーが続けられた場面、正当なジャッジへの抗議で主審を囲い込む場面などを用い、選手たちに配慮を求めた模様だ。

 なお、説明に使われた映像の多くは13日、JFA公式サイトにも公開されている。


(取材・文 竹内達也)
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