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[もうひとつの高校選手権]4大会すべて4強。豊田高等特別支援学校がどうしても優勝したかった「深イイ理由」

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黒谷厚志校長(中央、青いキャップの方)や父兄らとの記念撮影風景

[2.17 もうひとつの高校選手権3位決定戦 愛知県立豊田高等特別支援学校 3-2(前半1-1)三重県立稲葉特別支援学校]

 第1回王者の意地だった。3位決定戦は、豊田特別支援学校はアディショナルタイムに1点差につめよってきた三重県立稲葉特別支援学校を振り切った。この試合で2得点した犬塚陸、1回戦、準々決勝で2得点した今井翔太と1年生が活躍。これで第1回から4年連続でベスト4に入り続けている。豊田特別支援学校の林正記監督が振り返る。

「1年生は、犬塚選手も今井選手もサボらないで頑張り続けてくれた成果だと思います。毎年4強に入れているのは、生徒たちの頑張りがないとここまで来れません」

 林監督が同校に赴任した1年目、「もうひとつの高校選手権」の記念すべき第1回優勝校となった。その大会直前、当時の杉浦健太郎監督(現・引率教諭)と頭を突き合わせて「当たり前のことを当たり前にやれる人間」「ピッチの中だけでなく、ピッチ外でも日本一を目指してほしい」という願いをこめて、「サッカー部5箇条」を作った。以来、選手は練習前、声に出して唱えて、心に刻んでからピッチに入る。苦しいときに踏ん張れる「心」をコツコツ作っていることが強さが崩れない理由だ。

「一つ、挨拶。先手必勝、心を込めて元気よく。」
「一つ、全力。さぼらない、プレイはもちろん、準備、片付け、集合、何ごとにも全力で行え。」
「一つ、オフザピッチ。よき生徒であれ、学校生活、家庭での生活をきちんと送れ。」
「一つ、チャレンジ。挑戦し続けろ、ミスを恐れず、常に上を目指せ。」
「一つ、仲間。仲間を思いやれ、仲間のことを考え、仲間を大切に。」

 3位決定戦後、静岡・藤枝まで応援に来た黒谷厚志校長や、選手の父兄が集まって記念撮影を繰り返した。林監督が続ける。

「今年はどうしても勝ちたかったんです。黒谷校長は2日間とも応援に来てくださったんですが、今年で退職されることが決まっていまして……。私たちは第1回大会で優勝させてもらいましたが、その年だけ優勝旗がなかったんです。ですから勝って、校長先生に優勝旗を持っていただきたい、という思いで来ていました。私が監督になった第2回大会以降も、ベスト4に入れていますが、2位、3位というのはやっぱり負けていますんで……。勝たなきゃ見えない風景があると思っています」

 富士山のふもとで頂上を仰ぎ見る。お世話になった校長先生の花道を添えられなかった無念をバネに、来年こそは頂上に返り咲くつもりだ。

(取材・文 林健太郎)

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