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”元ラガーウーマン”工藤がブラインドサッカーの女子日本代表戦で初ゴール

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報道陣のインタビューに応じる工藤

[2.23 さいたま市ノーマライゼーションカップ2019 女子日本代表 10-0 IBSA世界選抜 (さいたま市・サイデン化学アリーナ)]

 縁の下の力持ちが、大舞台で輝いた。6-0で迎えた後半14分、日本代表のFP工藤綾乃が記念すべき代表初ゴール。女子日本代表の得点者は2017年にチーム発足以来、これまで菊島宙、斎藤舞香だけだったが、3人目として工藤が新たに名乗りをあげた。

「相手の主力選手が3人ぐらい抜けた時間帯だったので、この時間帯に点を取っていこうと話をしていたんです。距離があるところから(意図的に)狙ったわけではなくて、ボールを(ドリブルで)運ぶとボールロストのミスが出るかもしれないと考えて、相手に触られる前に打ってしまったほうが、威力あるボールになると思って打ちました。(打った直後は)入っていない、と思っていたので、周りが『ワッ』ってなって、入ったのがわかりました」

 左ひざには氷のうが巻かれていた。約1週間前の日本代表のトレーニングマッチで痛め、決して万全ではなかった。後半途中で交代するときには足を引きづる状態。体を張って、痛みを乗り越えて奪った初ゴールだった。 

 工藤がブラインドサッカーの存在を知ったのは約8年前。男子日本代表のエース川村怜から話を聞いて、競技の存在は知っていたが工藤が本格的にはじめたのは約3年前から。突然目の病気になったことがきっかけで、川村が所属するAvanzare つくばに入れてもらってプレーをはじめた。

「最初はこわかったです。(ブラインドサッカーをやる前は)女子ラグビーをやっていて、スクラムの最前線でぶつかるプロップだったので、ぶつかったりすることについてはそんなに怖くなかったけど、目の情報がない中でプレーすることはまた違ったこわさがあります。でもみんなの声を聴きながらやると、そういう怖さも緩和されるんです」

 目が見えていたのに、突然障害がある状態になったからこそ、工藤が訴えていきたいことがある。

「視覚障害をもった方が入りやすい環境にしたいですね。私自身もそうでしたが、競技のことを知らないと入り込めない。視覚障がいのある方は普段は行動範囲が狭められているかもしれませんが、ブラインドサッカーでは、壁の中なら自由に動けるよさがあります。だから(一般の人が)知る機会があったほうがいいし、そのためにできることをやっていけたらと」

 工藤がラグビーでやっていたPR(プロップ)のポジションは、スクラムを1㎝押すだけで、スクラムからもっとも遠くにいるプレーに全く関与しない相手のFB(フルバック)の選手にもプレッシャーを与えられるといわれる。それほど、目立たないけど重視されるポジションだ。自分を前面に出さない工藤はこれからもひたむきにプレーする中で、ブラサカの広告塔の役割も担いたいと考えている。

≪女子日本代表の過去戦績≫
▼2017年5月6日 「IBSAブラインドサッカートーナメント」(オーストリア・ウィーン)
〇2-0イングランド・ギリシャ選抜:菊島宙(2)
〇2-0ロシア・カナダ選抜:菊島宙(2)
〇1-0IBSA選抜:菊島宙
〇1-0IBSA選抜(決勝戦):菊島宙

▼2018年2月24日 さいたま市ノーマライゼーションカップ
〇7-3アルゼンチン選抜:菊島宙(6)斎藤舞香

▼2019年2月23日 さいたま市ノーマライゼーションカップ
○10‐0 IBSA世界選抜:菊島宙(9)工藤綾乃
【注】得点者の( )はゴール数。「IBSA」は国際視覚障害者連盟の略称

(取材・文 林健太郎)

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