beacon

「夢の劇場」を制する者はプレミアを制す。リバプールの優勝を占う苦手オールド・トラッフォードでの大一番

このエントリーをはてなブックマークに追加

マンチェスター・ユナイテッドはホームにリバプールを迎える

 プレミアリーグの首位は結局どっちなのか。それは日曜日に明らかになるだろう。リバプールが今シーズン第27節を消化し、マンチェスター・シティとの試合数が同じになるからである。

 リバプールは東ランカシャーへと旅立った。迎え撃つのは最大のライバル、マンチェスター・ユナイテッドオーレ・グンナー・スールシャールの下ですっかり元気を取り戻したユナイテッドは、タイトルを狙うユルゲン・クロップのチームに打撃を与えようと待ち構えていることだろう。

 当然、両者のライバル関係を考えれば、リバプールがオールド・トラッフォードを訪れるときはいつも大事な試合であるが、今回の試合はより一層重要だ。アンディ・ロバートソン曰く「とてつもなく」重要なのである。今季を決定づける試合になるかはわからない。しかし、5月までのタイトルレースに大きく影響することは確かだろう。

 負ければリバプールは単独の2位となることを認めねばならない。シティに得失点差で劣り、長く守ってきた首位から正真正銘の陥落となる。残り11試合であることを考えるとタイトル争いはまだまだわからないが、それでも難しくなることは確かだ。

 ジョゼップ・グアルディオラ率いる前回覇者のここ数週間の巻き返しを考慮すれば、試合数が並んだ状態でリバプールが首位を譲れば、夢は遠のくことだろう。もちろんこれは最悪のシナリオである。勝てばリバプールが勝ち点差3で首位に立つし、残りの対戦カードも見かけ上ではそれほど苦戦が予想しづらい。オールド・トラッフォードで永遠のライバルに土を付ければ、イギリス特有の曇り空もKOPにとっては晴れ上がったように感じるはずだ。

 しかし、問題が一つある。クロップは3度オールド・トラッフォードを訪れているが、まだ一度も勝っていないのだ。2015-16シーズンのヨーロッパリーグの対戦では引き分けてリバプールが準々決勝に進出したが、歴史を見ると常に苦しんできた。

 1980年代に覇権を握っていた頃でさえユナイテッドの本拠地で勝つことは稀だった。その10年間でリバプールが勝ったのは1度のみ(1982年4月に1-0で勝利)。残りの試合は僅差の負けや1-1の引き分けばかりだ。

 1990年代最初の試合はジョン・バーンズがユナイテッドサポーターの目の前でゴールを挙げて2-1で勝利した。ケニー・ダルグリッシュ率いるリバプールはその2か月後に通算18タイトル目となるリーグ優勝を果たす。その年ユナイテッドは7位に終わってしまったが、再起を図ったアレックス・ファーガソンがその後黄金時代を築いていく。

 他方、リバプールにその後何が起こったかは全員が知っているだろう。19タイトル目はいつまで経っても獲得できず、オールド・トラッフォードでの苦戦もずっと続いている。バーンズが得点して勝ったあの1990年の試合以降、オールド・トラッフォードでの33試合中たった5試合しか勝利していない。

 直近では5年前のこと。ブレンダン・ロジャーズ率いるリバプールがデイビッド・モイーズのもとで混乱するユナイテッドを撃破した。「相手のホームだし周りは相手サポーターばかりだったが、我々のフットボールをすることができた」と話したロジャーズはそのシーズンでリバプールを2位に導いたのだった。

 当時、スティーブン・ジェラードやルイス・スアレスがプレーしていたチームは、結局タイトルを獲得できなかったが、オールド・トラッフォードでの勝利こそが自信を深めたことは見て取れる。

 逆に、ユナイテッドOBのガリー・ネビルはアンフィールドでの勝利は「チャンピオンたる資格を得た気分にさせる」と話す。なお、ユナイテッドはプレミアリーグ創設以降アンフィールドで10回以上勝利している。

 オールド・トラッフォードで全く勝てないリバプールとアンフィールドでも勝利を積み重ねてきたユナイテッド。対戦成績がどれほど一方的であろうとこのカードは見るものを楽しませる伝統の一戦なのだ。

 過去のプレミアリーグ覇者を見てみるとオールド・トラッフォードでの勝利がカギを握っていたことが多い。アーセナルは2002年の優勝をオールド・トラッフォードで決めたし、1998年と2004年のオールド・トラッフォードでの勝利は優勝を確実なものにした。

 マンチェスター・シティは2011年に6-1のスコアで世界を驚かし、2014年にはモイーズのユナイテッドを3-0で撃破。さらに昨季、記録的優勝を果たした“ペップ・シティ”もオールド・トラッフォードで勝ち星を挙げている。カルロ・アンチェロッティチェルシーディディエ・ドログバ弾でオールド・トラッフォードを制したのは2009-10シーズン優勝のポイントとなった。レスターによる2016年の「奇跡の優勝」もユナイテッドと敵地で引き分けたことが大きな意味を持つこととなっている。

 リバプールにとって日曜日の勝利は首位奪還を意味するだけではない。ここ数試合、立て続けに引き分けが続いたことによって再燃してきた「リバプールはタイトルのプレッシャーに弱い」というイメージを払拭するきっかけにもなるのだ。

 シーズン後半にユナイテッドと対戦することになるシティは、今週末は同じ町のライバルの健闘を期待しているに違いない。シティも同じ日にチェルシーとタイトルを争う重要な一戦(カラバオカップ決勝)があるが、オールド・トラッフォードでの状況を常にチェックすることになるだろう。

 リバプールにとって多くの意味を持つ一戦。この大一番がクラブの歴史を左右することになる。

文=ニール・ジョーンズ/Neil Jones

●プレミアリーグ2018-19特集
●吉田、武藤の試合も!!“初月無料”DAZNでライブ配信中
世界のサッカー情報はgoal.com

TOP