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デフフットサル日本代表がイタリアでプレーする前橋育英高出身の「秘密兵器」を招集へ

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イタリアでプレーする鎌塚剛史(左)

 11月にスイスで行われるデフフットサルワールドカップ(W杯)の予選を兼ねたアジア太平洋ろう者フットサル選手権(タイ)で準優勝し、W杯への出場権を獲得した男女の日本代表が25日、帰国した。4月に兵庫県内で行われる男子の日本代表合宿に、イタリアのフットサルリーグ・セリエCでプレーする鎌塚剛史(23)を招集する意向であることがわかった。

 今まで日本代表に一度も選ばれたことのない鎌塚は、名門・前橋育英高サッカー部出身。幼稚園の時から難聴で補聴器をつけていたが、鎌塚はかねてから憧れていた前橋育英高に進学。高校時代はトップチームでのプレー経験こそないが、同期には佐藤祐太(現・YS横浜)、1学年下に全国高校サッカー選手権で準優勝したときの主力、渡邊凌磨(アルビレックス新潟)らがいて、200人近い部員の中でサイドハーフとして他の選手としのぎを削っていた。

 高校卒業後は大東文化大に進学し、社会人チームでプレーを続けていた。その後、フットサルに転向し、2年前からかねてから夢見た海外でのプレーを実現するために自ら動き、イタリアのフットサルリーグ4部に相当するセリエCのオルヴィエートFCとプロ契約。大学を休学してイタリアに渡った。2年目の今季はフットサル・カペッツォに移籍した。いずれのチームも鎌塚以外に障がいのある人はいない。鎌塚はイタリア語も勉強しながら難聴と言語の壁を乗り越えて、周囲とコミュニケーションを図っている。

 セリエCの外国人枠は各チーム1つで、フットサル・カペッツォには鎌塚しかいないため、コンスタントに試合に出場。FWのような役割を求められることも増え、20試合で8ゴールを決めている。3月で同クラブとの契約が切れる鎌塚は日本へ帰国する意向で、日本代表が呼びたい時期とタイミングが合致した。

 日本代表の川元剛監督は「直接会ったことはありませんが、映像で見ました。かなり身長も高くて左利きと聞いています。イランにいるような選手。難聴の人で海外でプレーする選手はなかなかいない。今の日本代表は前線で点をとれる選手がいないし、彼の屈強な体とメンタルに期待したいです。兵庫の合宿にも呼ぶつもりです」
 
 名門・前橋育英で多くの選手にもまれ、イタリアでも「サッカーの本場」の厳しさを知る鎌塚が世界一を目指す日本代表のカンフル剤となる。

▼アジア選手権に参加した男子日本代表メンバーはこちら

(取材・文 林健太郎)

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