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「リアルな『死ぬ気』がここにある」。JIFFが北澤豪会長出演の映画「蹴る」の先行上映会を実施

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右から中村和彦監督、永岡真理、吉沢祐輔、Jリーグ・米田惠美理事、北澤豪会長

 日本障がい者サッカー連盟(JIFF)は27日、JFAハウス内で電動車椅子サッカードキュメンタリー映画「蹴る」のバリアフリー先行上映会を開催。イベントにはこの映画を撮影した中村和彦監督や出演者の永岡真理(横浜クラッカーズ)や北澤豪氏(日本障がい者サッカー連盟会長)らが出席した。

 電動車椅子サッカーをテーマにした「蹴る」は、この競技に挑む選手たちの日常を追ったドキュメンタリー映画。生まれながらにして難病「SMA(脊髄性筋萎縮症)」を患い、まだ1度も歩いたことがないが、試合では華麗で激しいプレーを見せる永岡真理や、進行性筋ジストロフィー(ベッカー型)の影響で呼吸器を手放せない状態にも関わらず、国内屈指の実力を誇る東武範を中心に、日本代表選手や周囲でサポートする人たちを6年間、追い続けた。生き甲斐となるサッカーに夢中になり、その過程で抱える葛藤や濃密な人間関係から生まれる恋愛事情まで彼らのありのままを映し出した。

 登壇した中村監督は「2011年、なでしこジャパンが世界一になる前日に、電動車椅子サッカーの試合を見にいって、気持ちが伝わるプレーをしていた永岡真理選手の後ろに炎が見えた。その彼女に一目ぼれして、はじまりました。(映像の中に)彼らの生き様を刻み込みたかった。こういう重い障害がある人がこんな激しいスポーツをするんだという、彼女たち、彼らの思いを感じ取っていただきたいです」とあいさつ。

電動車椅子サッカーに初挑戦した原博実理事長

 出演した現役選手の永岡真理も「様々な人の葛藤や思いがたくさん詰まった映画だと思います。それぞれが抱えた課題に命がけで向き合っているところやバックグラウンドで支えてくださっている人たちの思いを是非ご覧いただきたいです」と続けた。

 出演者のひとりでもある北澤会長は「現役時代にサッカーをしてきたときに『死ぬ気で』と思ってサッカーをしてきましたが、この映画を見るとまだまだ力を発揮できたな、と思うぐらい、電動車いすのサッカー選手の皆さんは死ぬ気でプレーしている姿を観れる。映画とこの競技をぜひ見ていただきたい」とアピールした。

 先行上映会に先立ち、永岡らと同じピッチで電動車椅子サッカーにトライしたJリーグの原博実副理事長は初体験。現役時代、日本代表で歴代4位の37得点あげたストライカーも、手の指の微妙な操作で車椅子の動きが変わってしまう勝手の違いや繊細さに少し戸惑った。

「普通のサッカーより難しい。(車椅子同士で)当たるこわさとかあるから恐怖心も芽生える。ボールを(車椅子の)横でも蹴らないといけないから、回転ができても、いいタイミングでボールを蹴るのが難しい。だから映画を見て改めて(永岡らの)彼らの情熱が伝わってきました」

電動車椅子の構造に興味津々の村井満チェアマン

 また上映会に先立って、Jリーグの村井満チェアマンが中村監督と永岡、出演者の吉沢祐輔を激励に訪れた。事前に行われた上映会を観た村井チェアマンは「涙が出るほど感動しました。私はサッカーをやる団体の責任者ですけど、サッカーの奥深さ、喜びとか悲しみとか、どんな競技種目にも共通するものが表現されている。Jリーグの選手、日本代表の選手にも見てもらいたい。障害のあるなしに関係なく、サッカーに打ち込む姿、困難を越えていくプロセスとかは、Jリーガー、代表選手が励まされること、気づくことが絶対にあると思います」

 村井チェアマンは具体的なシーンにも言及した。

「真理さん(永岡)が結構感情の起伏がありながら、あきらめないで続ける姿が感動的です。ほかの選手が成長している感じもわかる。これは私が映画を見た印象ですが、(映画を)撮る側の個人的な思いをなるべく排除して事実をずっと追い続けるリアルのすごさを感じました。日本のサッカーを愛する人たちがこの映画を見ていただければ、サッカーという競技の奥行きの深さをわかってもらえると思います」

「蹴る」は3月23日、ポレポレ東中野より全国順次公開される。

(取材・文 林健太郎)

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