beacon

スペシャルオリンピックス世界大会の結団式を開催。SOサッカー日本代表の目標は「金メダル」と「全力で楽しむ」

このエントリーをはてなブックマークに追加

 知的障害のある人たちにスポーツを通じて社会参加を応援する国際組織による世界大会「スペシャルオリンピックス(SO)夏季世界大会 2019」が14日からアラブ首長国連邦の首都アブダビで開幕する。190の国、地域が参加し、24競技が行われる予定。11競技104人のSO日本代表選手が都内に集結し、結団式が行われた。

 前回2015年のロスアンゼルス大会は知的障害のあるアスリートのみのメンバー編成だったサッカーは、今回から初めて知的障害のある「アスリート」と知的障害のない「パートナー」が同じチームでプレーする7人制の「ユニファイドサッカー」に挑む。ピッチには必ず4人以上のアスリートがいることがルール。前回大会では出場32か国中4位だったSO日本代表は、2018年の日本代表選考会で優勝したSO長野の選手を軸に、アスリート6人、パートナー6人が選ばれた。

 SO京都を指導してきた西野累コーチがヘッドコーチとして指揮をとる。今回のチームの大半を占めるSO長野の選手を指導し、この大会のピッチを離れた部分の総務的な役割を担う長野SOの春原紀子コーチは「(目標として)勝つことはベースにあります。金メダルをとりたい。その上で、せっかくの機会ですから全力で楽しんできたいです。2017年に世界最大のユースカップ・ゴシアカップでスウェーデンに行ったとき、たとえばイタリア伝統の『カテナチオ』とか、本当にその国ごとのサッカーが存在した。そういうことも見て、日本のサッカーとの違いとか、いいところは取り入れたりとかしてほしいです」

 SO日本代表はパートナーの井上敬之が正GKのため、ピッチ上では4人のアスリートと2人のパートナーがいかに工夫しながらコミュニケーションをとるかが勝敗のカギを握る。昨年12月から計5度集まって行われた合宿では、パス練習ひとつをとってもアスリートとパートナーが組んでパス交換し、部屋も一緒にして、お互いを深く理解しあえる関係づくりをしてきた。

「選手たちには、アスリートを最優先にしてそのために僕たち(パートナーがいる)という発想はやめてほしいと話をしました。アスリートを勝たせたいではなく、自分が勝ちたいと思ってやってほしい、と。チームを勝たせるためにどう動くか、ということをみんなで考えて欲しいんです」(春原コーチ)

日本代表・春原紀子コーチ(左)と丸山祥太主将

 指示通りに動いてもらえない場合、どういう指示の出し方をすれば、動いてもらえるか。そこにアスリートとパートナーを分ける、という発想は存在しない。仮にメンバーの能力に違いがあったとしても、「勝つ」という同じ目標に向かってお互いに要求し、工夫してチームで目標を実現させようと努力するプロセスは、サッカーにとどまらず、社会に出ても同じだ。

 SO日本代表の主将をつとめるアスリート・丸山祥太は学生時代、テニスや水泳など個人競技に励んでいたが、長野のサッカーチームが発足した2016年7月から競技をはじめた。チームスポーツに取り組む中で、指示を忠実に守ってこなすだけでなく、自分の意見を持って、人に伝えられるようになった。現在、ヤマト運輸で働く24歳は6日、社内の朝礼で「アブダビに行く丸山さんを日本から応援してください」と紹介されたという。 

「うれしかったですね。障がいがあっても、それまでやったことのないことにチャレンジできたことは成長したと思います。(主将になって)すべての場面ではないですが、みんなが何かあったときには声をかけられるようになりました。(アブダビでは)英語を喋れるわけではありませんが、ピンバッチの交換をしたりして他の国の人とも交流したいです」

 帰国後の朝礼に、金メダルを下げてのぞみたい。丸山は大きな期待と夢を抱き、世界を制する旅に出る。

【SOサッカー日本代表】
アスリート井上友博(長野)
アスリート石山裕太(長野)
アスリート丸山祥太(長野)
アスリート赤沼大地(長野)
アスリート春原翔(長野)
アスリート橘勇佑(京都)
パートナー井上敬之(長野)
パートナー望月大輔(長野)
パートナー山﨑大輔(長野)
パートナー髙橋佳汰(長野)
パートナー小山光(長野)
パートナー安部大河(京都)

ヘッドコーチ西野累(京都)
コーチ春原紀子(長野)
コーチ山本杉樹(長野)
※( )はSOの所属

(取材・文 林健太郎)

●障がい者サッカー特集ページ

TOP