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“10年後に通用する選手を育てること”をテーマとした取り組み。「2019 umbroユースチャレンジ」で指導者もサポート

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UEFAプロライセンスを保有する濱吉正則氏が参加チームの指導者たちにアドバイス

 3月9日から2日間に渡って、高校年代のフェスティバル「2019 umbroユースチャレンジ」が行われた。西日本の注目17チームがJ-GREEN堺に集まった今大会は、総当たり戦と各ブロックを勝ち上がったチームが対戦するミックス形式で大会を実施。各コートで白熱したゲームが繰り広げられると同時に、ピッチ外で今大会ならではの取り組みである「umbroアカデミー」も実施された。

「umbroアカデミー」とは、“10年後に通用する選手を育てること”をテーマに行う取り組みだ。昨年は講師にUEFAプロライセンスを保有し、SVホルン(オーストリア)の監督も務めた濱吉正則氏(現・九州産業大監督)を迎えて、計6回の講義を実施。今回は、大会初日に各試合をスカウティングし、その日の夜にフィードバックと「ヨーロッパの育成・指導との違いから考える、日本サッカーの現在と未来」についての講義を行った。

 大会について、濱吉氏は「ガンバ大阪ユースを筆頭に高校年代のトップクラスが来ている大会なので、非常に高いレベルのチームが来ていたし、個々で見ても光る物を感じる選手がいた」とコメント。中でも印象に残ったチームが東海学園高で、「ビルドアップの時に縦パスを入れたり、ボールを受ける際にターンをしたり、選手も指導者もチャレンジしていた。リスクを恐れず崩したり、意図的な攻撃を徹底してやろうとしている所が好印象だった」。大きなCBにビルドアップをさせたり、サイドの選手に積極的な仕掛けを求め、プロで通用する選手を育てる意図を感じたというG大阪ユースや、全敗で終わったものの最終ラインからのビルドアップを徹底した高知中央高の名前も挙がった。

 講義で濱吉氏が伝えたのは、チームで共通認識を持つことの重要性だ。この10年、日本は個の育成が叫ばれたが、オン・ザ・ボールの部分しか教えないチームやボールを持ったらドリブルしかしないチームなど、組織的な戦いが不足しているチームも増えてきた。組織と個の育成は相反する物だと考える人も多いが、それぞれを別で考えるのではなく、チーム全体で共通理解を高めることで、それぞれが持っている能力を出しやすい環境を作るのが理想だ。そのためには、1日に行うトレーニングが全て繋がっていなければいけないという。

 また、様々な指導にまつわる情報を摘まみ食いする問題についても指摘した。スペインやドイツなどワールドカップを制した国のスタイルだけでなく、その時々の日本代表監督が志向するスタイルが流行してきたが、「近代サッカーには、チームとしての共通理解とプレースピードという普遍的な部分がある。そこにトレンドが加わっているだけ」(濱吉氏)。そうした理解ができれば新たなトレンドが来ても、アレンジを加えるだけで指導者は対応できる。また、10年先にどんなスタイルが流行り、どういった選手が求められるかも予測しやすくなるという。

 講義を受けて、すぐにチームと選手は変わらないが、共通理解とプレーモデルの言語化する重要性を口にする指導者がいた。大会2日目には視察を行う濱吉氏の下を訪れ、意見を求める指導者の姿も見られた通り、選手だけでなく、指導者にとっても価値のある大会であったのは間違いない。

(取材・文 森田将義)

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