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電動車椅子サッカー元日本代表の東が映画「蹴る」出演にこめた思い

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映画の共演者の東と永岡(右)がボールを争う

[3.16 第22回ドリーム・カップ5-6位決定戦 ナンチェスターユナイテッド鹿児島 4-0 Yokohama Red Spirits](平塚)

 23日に公開される映画「蹴る」に出演する東武範(ナンチェスターユナイテッド鹿児島)がドリーム・カップで3試合ともフル出場。3試合目となった5-6位決定戦のYokohama Red Spirits戦ではハットトリックを達成し、チームの快勝に貢献した。

「(それまでの)2試合で点をとれなかった苛立ちはなかったです。チームは去年、おととしとこの大会で2連覇していたのですが、チームと言うものは変わるもので、相手も強くなってきている。こちらがその変化に追いつけていない。そのレベルの差を感じましたね」

 東は4歳の頃に発症した進行性筋ジストロフィー(ベッカー型)の影響で小学6年生の頃から自力歩行が困難になり、呼吸器を手放せない状態だが、国内屈指の実力を誇り、2017年にアメリカで行われたワールドカップにも出場したほど。所属クラブには11人の選手がいるが、学生など若い選手が多く、時期的な問題や資金的な壁もあり、この大会は試合でピッチに立てる4人しか遠征に来られなかった。東は大会前日の15日、新幹線を乗り継いで9時間近くかけて鹿児島から上京していた。

「電動車椅子や呼吸器、吸引機にもバッテリーが必要で、ただ飛行機で移動しようと思うと事前の申請が結構大変なんです。なので長旅になったとしても手軽に取り出せる新幹線にしました」

 映画「蹴る」は命がけでこの競技に挑む選手たちの競技にかける思いや、日々の葛藤を中村和彦監督を中心とするスタッフが6年間、追い続けたドキュメンタリー。東や周囲で支える人たちの心の揺れも映し出されている。 

「ちょうど映画を撮っていただいた時期に体がキツくて体重も20㎏台まで落ちて……。サッカーをやめようか、とずっと考えていました。そこである大きな決断をしました。もしサッカーをしていなかったら、その決断はしていなかったと思います」

 そのプロセスは映画の中で丹念に表現されている。重大な決断によって東の体調は回復し、W杯にも出場し、サッカーをこうして続けられている。どうしてそこまで身を削りながら東はサッカーを続けるのだろうか。

「基本的に誰よりも強くありたい。ゴールした時の感覚も気持ちいい。その辺りは、普通の人と一緒です。サッカーがうまくなりたいと思ってやっていて、ただ単に普通にサッカーがしたいんですよ。映像の分析をして、相手を攻略するためにパスで崩すのか、ドリブルで崩すのか。そこをチームで考えて、練習でやってみて、失敗してはまた改善して。そういうところはやっぱり楽しいですね。いつ引退になるかわからないけど、それまでにやりつくそうかなと思っています」

 映画の出演者として、東はどんなところを見てもらいたいのだろうか。

「(普通の人と体の状態が違うことが)かわいそう、と考えてもらうことではなく、ほかの人と形が違うけど同じスポーツを楽しみたい。そういう気持ちは同じなんだよ、という部分を観ていただきたいです」

 31歳の自称”サッカーバカ”は、最後は笑って会場を離れた。

(取材・文 林健太郎)

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