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天才ビニシウスを手にしたレアル。アザールを大金で獲得する必要はあるのか?

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ビニシウス・ジュニオールが活躍する中、エデン・アザールは必要か?

 レアル・マドリーにとって夏の移籍市場最大のターゲットとなるMFエデン・アザールだが、FWビニシウス・ジュニオールが活躍をみせる今、彼らはチェルシーのスターに固執すべきなのか?

(文=ダニエル・エドワーズ)

 現在、レアルは揺れに揺れている。クラシコでの連敗のみならず、UEFAチャンピオンズリーグでアヤックスに逆転を喫したことで、サンティアゴ・ベルナベウのファンの信頼は失墜し、近年欧州で成功を収めてきた彼らの姿は嘘であったかのようだ。

 そんなファンたちの怒りの炎を消すための「消防士」として、他の誰よりも適任と思われる伝説の男、ジネディーヌ・ジダンが再び呼び戻された。しかし、チームの再建を図るジダンにとってキープレーヤーとなるのは誰なのだろうか?4度のチャンピオンズリーグ制覇に貢献したDFセルヒオ・ラモスとFWガレス・ベイルは、やはり優遇されるのか。それとも、この沈みかかった船から避難するために違う選択肢を選ぶのだろうか?

 新たなスタートを切るチャンスとなる2019-20シーズン開幕までの数か月以内に、張り詰めた空気の中ですべては決まるだろう。

 こうした混乱の中で、レアルが近年あまり大きな動きをみせていなかった移籍市場に救いを求めるのは当然だ。レアルはここで大枚を叩くことで、チームの再建を図ろうとするだろう。実際にジダンが復帰に合意した理由の1つとして、移籍市場における莫大な予算を保証されたことが挙げられており、その額はおよそ3億ユーロ(約380億円)と報じられている。

 中でも最大のターゲットとされているのは、ジネディーヌ・ジダンから高い評価を受けているエデン・アザールであり、レアルは現在、喉から手が出るほどに彼を欲している。すでにファースト・コンタクトは終えており、そこではアザールに対して1億1600万ユーロ(約150億円)が提示されている。

 しかし、ここ最近の悪夢のような数週間の中で、非難を逃れた数少ないプレーヤーの1人であるビニシウス・ジュニオールの存在を考えれば、レアルは補強の方向性を変え、もっと移籍市場で節約をすべきなのかもしれない。まだ18歳の実力は本物だ。その若さでトップチーム選手の代役を果たすことなど、並大抵の者ができることではない。

 ジダンの前任者であるサンティアゴ・ソラーリは、ビニシウスをペナルティエリア内で勝負させるよりも、主にレアルのビルドアップの中で大きな役割を担う、左サイドのアタッカーとして起用してきた。そうした中で、彼は今シーズンの全大会で26試合に出場して4得点を挙げている。しかし、彼の本当の意味でのチームへの貢献はそれだけではない。

 コパ・デル・レイだけでも、ビニシウスは6つのアシストを記録している。彼の巧みなドリブルやスタンディング・スタートからの驚くべき加速によって、ディフェンダーは心が休まる瞬間がないのだ。とはいえ、かつてフラメンゴでプレーしたこの天才には、今の実力にプラスして、フィニッシュの際の冷静さが求められている。シュートがゴールネットを大きく外れ、あられもない方向へと飛んでいってしまうことも多いのだ。

 しかし、彼が並外れた才能の持ち主であることは疑いようがない。世界で最も優れた10代フットボーラー50人を選出している『Goal』の『NxGn』において、彼が2019年の2位にランクインしたことがそれを証明している。

 もし加入が決まったとしたならば、アザールにはどのような役割が与えられるのだろうか? チェルシーのスターの役割は、ビニシウスと似た点が多いとみられている。アザールも左サイドからのカットインや、同サイドでのチャンスメークを得意としており、さらにはコンスタントにゴールも決めてしまう。レアルは以前から彼を欲しており、アザール自身も若きスターであった頃のジダンのファンであったことから、移籍に対して前向きな姿勢をみせている。

 とはいえ、交渉は難航が予想される。現在係争中ではあるが、チェルシーはFIFAからの処分を受け、2度の移籍市場における補強禁止の危機に直面している。補強無しでエースを失うことは、チェルシーにとって受け入れがたいシナリオであることは間違いなく、そうなるよりは、およそ1年後の契約満了を待って、アザールをフリーで移籍できる状態にしたほうがおそらくマシであるといえるだろう。

 当然ながらチェルシーにとっての最優先事項は、この28歳と新たな契約を結ぶことだ。これに伴い、アザールはキャリアの晩年までをスタンフォード・ブリッジで過ごすことを約束する「生涯契約」を結ぶことで、チェルシー史上最高額の年俸を受け取る選手となる可能性がある。

 チェルシーは、アザールのレアルに対する愛着と敬服を、カネの力でねじ伏せられることを願うしかない。

「レアル・マドリーは世界一のクラブだよ。今日は嘘をつきたくないんだ。(レアル・マドリーでプレーすることは)小さな頃からの夢だったんだ」

 昨年10月に彼はそのように語り、レアルへの気持ちが本物であることを認めていた。

「朝、目覚めた時に、ときどき今いる場所から去りたいと考えている自分がいるんだ。でもまた別の時には、残りたいと思うこともある。難しい決断だよ。自分自身の未来がかかっているからね」

 レアルもまた、難しい決断を迫られている。それはもちろん、アザール獲得のために大金をつぎ込んでチェルシーを説得すべきなのか、それとも、ティーンエイジャーのスーパースターに全幅の信頼を寄せるべきなのかといったことだ。

 アザールの移籍がどう転んだとしても、レアルは、おそらく向こう10年間活躍してくれるフォワード・ラインの一角を手にしたことについては安堵している。ビニシウスはあまりプレッシャーを意に介さない性格のようであり、唯一無二の存在であるFWクリスティアーノ・ロナウドが担っていた、左サイドの穴を埋めるための挑戦に意欲を燃やしている。

 不運な怪我により今シーズン中の復帰の見通しが立たず、3月のフレンドリーマッチでの代表デビューもお預けとなったビニシウスだが、その復帰は遅くとも、レアルが新たな顔ぶれを揃えて心機一転で迎える2019-20シーズンには間に合うだろう。

 ニューフェイスの中には、アザールの顔もあるかもしれない。そして移籍が実現していれば、このフォワード・ペアが共存することだって考えられる。そうなれば、ビニシウスが右サイドに移るのが現実的なシナリオだ。そしてこのケースでは、もしベイルが次の移籍市場で売りに出されなかった場合、彼のレアル内の序列はさらに格下げされることとなる。

 誰が干されるか分からない状況の中で、マドリーの選手たちにはここから先の数か月間での必死のアピールが求められている。しかし、その中でも才気あふれるブラジル人だけは、自らの地位を確保していると言ってもいいのかもしれない。

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