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ワールドグランプリで銅メダルを逃したブラサカ日本代表主将・川村「これが今の実力」

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 2020年の東京五輪パラリンピックにむけた「プレ・パラリンピック」と位置付けられる「IBSA ブラインドサッカーワールドグランプリ 2019」は24日、3位決定戦が行われ、日本代表はスペイン代表に残り3分で失点。0-1で敗れ、銅メダルを逃した。

 試合終了のブザーが鳴ると、フル出場してチームをけん引してきた主将の川村怜がしゃがみこみ、そっと瞳に手をあてた。

「相手のよさを消して自分たちのリズムで試合はできていましたが、厳しい結果になってしまった。そう簡単には勝たせてくれない。悔しいです。5試合目で本当、体が動かなかったですけど、たくさんの声援をいただいて、スペイン相手に最後まで戦うことが出来た。だからこそ、結果と言う形でお返ししたかった」

 21日のグループリーグ第3戦の再戦だった。スペインは守備の要・ハビエル・ムニョスが出場停止から復帰し、守備に厚みが増した。川村がシュートを放つときも、2,3人と群がり、間合いを与えない。シュートをまもとに打てたのは、前半3分と12分過ぎの2回の計3回ほどだった。

 川村にマークが集まれば、もうひとりのストライカー、黒田智成にスペースが開くが、黒田は大会中に左足付け根を痛めていた。

「左足でシュートを打つことが難しかった。右足では蹴れたので、カットインから切り返していけるかなと思ったが、うまくいきませんでした」

 黒田はチャンスと見たら強引に突っ込み、そのことで国内では決定的なチャンスを作れるが、手足の長い海外選手にはボールを奪われる危険性がある。最近の国際試合ではその傾向が増えていた。大会中に左足を痛め、モーションを普段よりひとつ多く入れなければシュートに持ち込めない状態。黒田がボールを失う可能性はおのずと増えた。それでも、交代要員で入った加藤健人や、佐々木康裕に任せきれないところに、日本代表の悩みがある。

高田敏志監督は佐々木康裕ら控え選手の力をどう引き上げるか注目だ

 高田敏志監督が就任以来、過去の歴史は塗り替えてきた。今まで勝ったことのないリオ・パラリンピック銀メダルのイランに勝ち、今大会も本気できた世界4位のスペイン代表を撃破した。ただ、勝たなければいけない試合に勝てない弱さもある。

「ひとつは僕のマネジメントの問題です。もうひとつあるのは、試合経験が圧倒的に少ないことです」

 今回の大会に向けた直前の代表合宿も仕事の関係で集合日に全員はそろわなかった。週4~5日管理できるアルゼンチン代表などとは環境面では雲泥の差。そこは織り込み済みで高田監督も引き受けている。その分、綿密な情報分析に基づいた対応力で対抗しようとしている。それには主力以外の選手も、試合に出て肌感覚で対応力を理解する必要がある。現時点で6月と8月に海外遠征が予定され、8月は今大会準決勝で敗れたイングランドと3試合ほど組まれる見通し。川村、黒田や田中章仁佐々木ロベルト泉とGK佐藤大介以外の選手にいかに出場時間を与えられるかがカギとなる。川村が言う。

「日本代表には絶対的ストライカーが育っていない。試合がどんなにいい展開をしても決めきる力がないと、こういう難しい試合になってしまう。ゴール前での迫力、強度、最後バランスを崩した中でも決めきる力をつけないといけない」

 あえて「僕が」と言わず、「日本代表には」と切り出したところに、日の丸を背負う覚悟が見える。ブラインドサッカー日本代表は東京五輪で初めてパラリンピックに出場するが、目指しているのはメダル獲得。快挙達成には厳しい道のりになることはわかっているが、川村はひるまず、前に進む。

ワールドグランプリ 日本代表メンバー
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(取材・文 林健太郎)

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