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「ボールを持つチームの生命線」奪い取りが向上、18名決定の日本高校選抜は攻守でさらに質上げて欧州へ

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2本目3分、日本高校選抜FW染野唯月が先制ゴール

[3.31 練習試合 日本高校選抜 2-3 流通経済大]

 第97回全国高校サッカー選手権の優秀選手を中心に構成された日本高校選抜は静岡合宿最終日の31日、流通経済大と練習試合(25分×3本)を行った。欧州遠征メンバー18名が発表された日本高校選抜はこの後、4月11日から千葉県内で直前合宿を実施。同13日から欧州遠征を行い、第57回デュッセルドルフ国際ユース大会(ドイツ)に出場する。

 月1回ないし2回の活動の中で個の成長、将来のために刺激を与えられてきた日本高校選抜は、チームとしての戦い方の大枠も固まり、連係面が向上。欧州での戦いを前に、チームとして確実に良くなっている印象だ。

 前日の桐蔭横浜大戦はメンバーを入れ替えた4本目に逆転されたものの、先発組が戦った2本目までをリードして終えている。この日の1本目の序盤は、選手同士が細かな部分を合わせながらの面も見られて相手にボールを握られたが、徐々に慣れてくると、その後は高校選抜のペースに。特に高まってきている「奪い取り」の意識、攻守の切り替えの速さがチーム全体に勢いをもたらしていた。

 ボールを握り、主体性を持って攻める高校選抜にとって、攻守の切り替えは「ボールを持つチームの生命線」(朝岡隆蔵監督、市立船橋高)と重視する部分。この日はMF秋山裕紀(前橋育英高→新潟)が「きょうの1本目とか(天笠)泰輝とか良い出足で奪えたのがあった。前は1試合で10本とかカウンターを受けていたけれど、なくなってきている。意識してできている」と分析したように、奪われた後に人数をかけてボールを奪い返していた。

 攻守の切り替えの意識高い高校選抜は、良い形でボールを奪うと、CF染野唯月(尚志高、新3年)や右FWバスケス・バイロン(青森山田高→いわきFC)のラストパスにインサイドハーフのMF天笠泰輝(青森山田高→関西大)とMF鈴木唯人(市立船橋高、新3年)が走り込む形などから決定機を作り出した。

 15分にバイロンがパス交換からゴールネットを揺らしたシーンは微妙な判定でオフサイド。だが、キレを増してきた主軸MF天笠や左FW武田英寿(青森山田高、新3年)、鈴木、バイロン、染野が技術力、ゴールへの意識の高さを表現して崩し、シュートシーンに絡んでいく。

 また、中盤からPAまで走り切っていたシーンの他にも、CB西田翔央(東福岡高→早稲田大)が右SBの外側から攻め上がったり、CB白井陽貴(矢板中央高→法政大)、SB水野雄太(大津高→早稲田大)がドリブルでスペースを駆け上がっていくなど、チーム全体で前へ出る意識があった。

 DF面でまだ課題になっている部分があったのは確か。対戦した流経大はトップチームではなかったものの、年代別日本代表経験者やポテンシャルの高い新入生たちが先発し、彼らに競り負けるシーンや攻め切られるシーンが幾度かあった。

 だが、MF岡井駿典(市立船橋高→中央大)やGK飯田雅浩(青森山田高→国士舘大)がカバーする形で1本目は0-0で終了。そして、朝岡監督からビルドアップの際のボランチのサポートや、SBの攻撃時のかかわりについて指摘された高校選抜は、それを意識して臨んだ2本目に先制点を奪う。3分、高校選抜は左サイドへの展開から、駆け上がってきたSB豊島基矢(青森山田高→順天堂大)がグラウンダーのラストパス。これを染野が右足でゴールに沈めて先制した。

 直後にポゼッションのミスを突かれて同点に追いつかれたが、奪い返しの部分は2本目も多くの時間帯で継続。2本目半ば以降は単独での仕掛けや相手ボールを奪い切れない場面も増え、押し返されてしまっていた。それでも23分、左サイドから強引に仕掛けたバイロンがPKを獲得。自ら蹴ったPKを一度はGKに止められたが、こぼれ球を左足で決めて2-1とした。

 メンバー8人を入れ替えた3本目は、染野と武田の新3年生コンビで決定機を作り出したほか、バックアップメンバーのSB後藤裕二(矢板中央高→順天堂大)が長い距離を走り切ってシュートを打ち込むシーンもあった。流経大に逆転を許してしまい、トータルのスコアは2-3とされてしまったが、「ゲーム内容、取り組みも向上している」(朝岡監督)というチームは成長も感じさせる戦いで4日間の合宿を打ち上げた。

 バイロンは「チームとしての手応えもありますし、もっともっと良くなると思う。攻守に渡って安定したプレーができるように。自分たちにできることはまだあるので、それをしっかりやって大会に臨みたい」。朝岡監督、スタッフ陣は欧州遠征メンバー18名から外れながらも、静岡合宿に参加したバックアップメンバー5選手に感謝。全国4000校以上の高校サッカー部の代表選手となった18名は、バックアップメンバーたちの「デュッセルドルフで絶対に優勝して欲しい」というエールにも応えて、欧州で個々のプレーヤーとしての器を広げ、デュッセルドルフ国際ユース大会連覇も果たす。

(取材・文 吉田太郎)
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