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全盛期の調子取り戻したルカク、大一番でラッシュフォード以上のキーパーソンに

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ロメル・ルカクの活躍に期待

 ベルギー代表歴代最多ゴール数を誇るFWロメル・ルカクは、マンチェスター・ユナイテッドでの無得点の期間に多くの批判にさらされたが、価値あるゴールの数々を生み出すことによって見事なカムバックを見せた。

 10日にはUEFAチャンピオンズリーグラウンド8・バルセロナ戦へと臨む。劣勢を強いられる可能性が高いだけに、一撃必殺を求められるエースの奮闘が必要だ。違いを見せてきた10番マーカス・ラッシュフォードとともに、9番を背負う大きな背中には重責がかかっている。
(文=ピーター・ストーントン)

 ストライカーの仕事は、ゴールを決めることだ。

 FWに守備やポストプレーなど様々な能力、そして「偽9番」としての役割が求められるこの時代には、その事実は簡単に忘れ去られてしまう。

 ただロメル・ルカクに関して言えば、いかに味方ストライカーの力を引き出したか、あるいはチームメイトの攻撃参加を促したかによって評価されるタイプのプレイヤーを目指しているわけではないだろう。

 つまり、ルカクのプレーははっきりしている。彼のパフォーマンスは、得点以外の要素で評価する点は見当たらないのだ。

 彼は常に点取り屋として試合に臨んでいるのであり、自らのゴール数によってのみ評価が下されることを要求するようなプレースタイルを自らに課している。ゴール以外によってもたらされる評価は、彼にとってボーナスでしかないのだ。

 チャンスであろうとなかろうと、ボールを持っていようがいまいが、ルカクはそのプレースタイルを貫いている。ファンはルカクがボールを持った際には彼の名を呼ぶか、「シュート」と要求するが、ボールを持っていない時には厳しい視線が注がれている。

 オーレ・グンナー・スールシャールの就任によって、マンチェスター・ユナイテッドのメンバーの多くは調子を上げた。そして中でも、自分らしいプレーを見せて最初に輝きを放ったのはマーカス・ラッシュフォードだった。

 ジョゼ・モウリーニョ体制での最終ゲーム(リバプール戦)でプレーしたルカクだったが、スールシャール体制がスタートした時には、個人的な理由により試合に出場することができなかった。

 これによりセンターフォワードとしての出場機会を得たラッシュフォードは輝きを放つ。彼はモウリーニョ政権下で数年間味わった不遇を乗り越え、自らの価値を示してみせたのだ。ルイス・ファン・ハールのもとで頭角を現すと思われていた彼だったが、金に物を言わせてズラタン・イブラヒモビッチ、ルカク、アレクシス・サンチェスを起用したモウリーニョ指揮下では無力であった。

 しかし、邪魔者が誰もいなくなってチャンスが訪れると、ラッシュフォードは自分の力を証明してみせた。

 ルカクをどこで起用するのかといった問題は残されたが、1999年のユナイテッドにとって最高のシーズンの中で、アンディ・コール、ドワイト・ヨーク、そしてテディ・シェリンガムとポジションを争わなければならなかったスールシャールは、調子の良いストライカーを複数抱え、そこに緊張状態を生み出すことのメリットを知っていたに違いない。

 当然だが、ノッているストライカーは、1人よりも複数人いたほうが心強いのである。

 しかし、ルカクの起用がまばらになると、背番号9はリズムを失うことになる。今シーズンの初め、モウリーニョ体制下ではゴールを決めてきた彼だが、スールシャールの元で与えられた機会においては力を発揮できていなかったのだ。

 こうしてルカクの未来にクエスチョン・マークが付いたわけだが、プレミアリーグにおいて25歳までに110ゴールを達成した彼の将来を疑うことなどあってはならない。

 ルカクはプレミアリーグと代表で、ストライカーとしての実力をすでに証明しているのであり、彼に必要なのは自信とリズムだけだったことは後にわかるのだ。

 良い兆候が見え始めたのはアーセナル戦。ルカクはその試合で中央にとどまらず、サイドに流れてプレーをした。そのポジションでのプレーは、2014年のエヴァートン時代にアーセナル相手に完璧なプレーをみせた際、また、同じ監督ロベルト・マルティネスの元でプレーしたロシア・ワールドカップのブラジル戦での実績があったのだ。

 そして1月のその夜、ルカクは自身の技術の高さを再度証明し、監督の信頼を確固たるものにしたのである。

 得点こそなかったものの、その試合でルカクは2つの見事なアシストを決めた。これはゴールのみでその道を切り開いてきた彼のキャリアでは非常にまれな出来事だ。指揮官はルカクの長所を活かし、彼が早く眠りから目を覚ましてくれるようなゲームプランを遂行したのだ。

 しかし、それからルカクが波に乗るには少し時間がかかった。9試合もの「乾季」によって、ゴールに飢えるルカクは完全に潤いが失われ、その波から遠ざかっていたのだ。

 そして、スコアレスドローとなったリバプール戦で素晴らしい働きを見せた後、ついに溜まっていたものが爆発した。

 始まりはアウェーでのクリスタル・パレス戦の勝利だった。トリッキーな布陣でその試合に臨んだユナイテッドであったが、ハーフタイムをまたいだ2つのルカクのゴールによって、チームの懸念が間違いなく払拭された。

 自信を取り戻したルカクは、続くサウサンプトン戦でも勝利に貢献。ネットを揺らした2ゴールはどちらも狙いすました素晴らしいものであり、もし最後にポール・ポグバがペナルティキックを譲っていれば、彼はハットトリックを達成していたであろう(※ポグバは失敗)。

 ユナイテッドがシーズンの中で、今ほどルカクの力を必要としているタイミングはないだろう。アレクシス・サンチェスはプレーが安定せず、現在も負傷中。ラッシュフォードの負担を軽減することは必要不可欠なのだ。そして、ルカクの流れを決定的に変えたのが、望みが薄い状況で迎えたパリ・サンジェルマン(PSG)戦であった。

 先制ゴールはどんな試合においても重要であり、それが残りの試合時間の空気を左右することもある。昨年8月のスパーズ戦で、ルカクがウーゴ・ロリスをかわして角度のないところから放ったシュートは、惜しくも枠を外れていった。それが決まっていれば、ジョゼ・モウリーニョは今もベンチに座っていたかもしれない。

 結果として彼らは完敗を喫し、この9番のミスは不名誉なハイライトシーンとなってしまった。それでも、スパーズ戦で犯してしまったミスを、ルカクがフランスの地で繰り返すことはなかった。試合開始わずか2分で、彼は貪欲に相手のミスをゴールへと結びつけたのだ。ユナイテッドはそこから調子を上げることとなる。

 そして2点目に関しては、ルカクはゴールキーパーがファンブルすることを見越していたかのようにゴール前へと詰め、その仕事を完遂させた。ミスを恐れ、同じ状況で積極性を失うストライカーの姿はよく見られるが、ルカクは違った。ストライカーに常に求められているものは、ゴールの匂いであり、それはどのような状況でも忘れてはいなかったのである。

 彼はこの先も成長を続けていくだろう。とてつもなく強情なプロフェッショナルとして、彼への批判も相手センターバックを跳ね返すように対処していくはずだ。そして、たとえ批判に関心があろうとなかろうと、彼は本調子を取り戻すまで、変わらないプレーを見せてくれるだろう。

 そして、ルカクにゴールの近くで仕事をさせるために、ユナイテッドの攻撃陣をうまく組み立てたスールシャールの功績は称賛に値する。とはいえ、ルカクが本当に過去の輝きを取り戻せるかどうかは、これからの彼のプレーにかかっている。まずはバルセロナとの一戦が試金石となりそうだ。

文=ピーター・ストーントン/Peter Staunton

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