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横浜F・マリノスフトゥーロがキックオフミーティングを開催。フトゥーロが掲げた3つの挑戦

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フトゥーロを率いる宮下幹生監督

 横浜F・マリノスが持つ知的障がい者のサッカーチーム「横浜F・マリノスフトゥーロ」が20日、横浜市内で今年度最初のシーズン説明会を開催した。選手や関係者、参加希望者あわせて150人が出席した。

 2004年に発足して今年で16年目を迎えたフトゥーロは今季からトップチームと同じユニフォームで試合に出場することを発表した。早ければ5月24日から開幕する「全国障がい者スポーツ大会 関東ブロック予選会」でお披露目となる。これまでずっと働きかけてきた就任14年目の宮下幹生監督は笑みを浮かべた。

「選手には(マリノスの)プライドということをずっと言い続けてきて、だから同じものを着させてあげることが筋だと思っていました。マリノスと同じファミリーですし、育成組織はすでに(トップチームと)おそろいでした。(トップチームを支援する)アディダスさんやクラブの計らいで実現してうれしい」

 2020年の東京五輪パラリンピックに出場するブラインドサッカーをはじめ、障がい者サッカー連盟に所属する日本代表選手でさえ、各競技団体のスポンサーとの兼ね合いで、現時点では日本代表と同じユニフォームではない。一方、横浜F・マリノスはJリーグのクラブの中で初めて知的障がい者のチームを発足。横浜市体育協会や障がい者スポーツ文化センター横浜ラ・ポールと三位一体となって、障害がある人たちのスポーツに精通したスタッフや環境をそろえてきた。日本の障がい者サッカーのルーツの存在感を示した。

 2つ目の挑戦は、フトゥーロの選手2人をクラブの仕事に一部参加してもらう“雇用”へのトライだ。マリノスのスタッフと一緒に、平日1回、週末1回、ボランティアとしてサッカー教室の指導員になってもらう計画がある。横浜Fマリノスの望月選・ふれあい事業部長が明かす。

「障がいがあっても、本当の意味で自立して生活できるようにもっていきたい。選手たちはまだ狭い世界の中で生きている。サッカーを通してなら自分の意見を言うことが出来ても、一歩外に出るとそれができなくなってしまうんです。指導する、という行動を通してコミュニケーションのスキルを身に着けてほしいし、彼らは現役選手でもあるので、どんな声のかけ方をすればいいかを学ぶことで、選手としてもプラスに変えてほしいんです」

 これまで横浜F・マリノスがフトゥーロの選手を採用したことはない。クラブが現場スタッフ等でフトゥーロの選手を採用したい、と考えるぐらいの人材に成長させたい、という思いがある。

公表された新ユニフォーム

 3つ目の挑戦はJリーグクラブなどが中心となった知的障がい者のクラブによる全国リーグ戦構想。今季からJ2に昇格した鹿児島ユナイテッドFCが知的障がい者のチームを持っており、鹿児島の公式戦の前座試合にフトゥーロが招かれている(日時未定)。望月部長が続ける。

「将来的に知的障がい者の全国大会に発展できればいいと考えています。そこに向かっていくために、Jクラブが持っているチーム同士のリーグ戦を実現したい。鹿児島と試合ができることが、その最初となればありがたいです」

 変革は現場から起こすもの。93年、Jリーグ発足時に歴史的開幕カードを戦った老舗クラブが、障がい者サッカーの世界でも先陣を切っていく。

(取材・文 林健太郎)

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