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19年日本高校選抜、“最終決戦”はPK負けも個、チームとしての成長印象づける

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前半14分、日本高校選抜左SB水野雄太(大津高→早稲田大)が右足で先制ゴール。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[4.22 デュッセルドルフ国際ユース大会 日本高校選抜 1-1(PK3-5)エバートン]

 個人、チームとして成長した日本高校選抜が将来への貴重な経験を積んだ――。欧州遠征中の日本高校選抜は22日、第57回デュッセルドルフ国際ユース大会5位決定戦でエバートン(イングランド)と対戦。1-1で突入したPK戦の末、3-5で敗れた。

 日本高校選抜は19年チーム最終戦となるエバートン戦で前日から先発6人をチェンジ。GK松田亮(東福岡高→東京国際大)とCB吉村仁志(大津高→流通経済大)が今大会初先発を果たした。

 4-3-3システムのGKが松田で4バックは右SB後藤裕二(矢板中央高→順天堂大)、CB吉村、CB大石悠介(山梨学院高→国士舘大)、左SB水野雄太(大津高→早稲田大)。中盤は岡井駿典(市立船橋高→中央大)がアンカー、オフェンシブの位置に天笠泰輝(青森山田高→関西大)と鈴木唯人(市立船橋高3年)が並んだ。3トップはCFを染野唯月(尚志高3年)が務め、2シャドーにはバスケス・バイロン(青森山田高→いわきFC)と武田英寿(青森山田高3年)が入った。

 試合開始前、日本高校選抜はベンチ前でコーチ陣、選手18人全員で円陣を組み、“最終決戦”へ。前半5分に今大会初戦で先制FKを決めている染野の右足FKが枠を捉えたが、これはGKのファインセーブに阻まれた。

 守備面での奮闘光る天笠と岡井、鈴木の中盤3人が攻守に渡ってボールに絡み、この日も気持ちの入った動きを見せるバイロン、ボールを引き出す力を発揮する武田がチームに推進力をもたらす。その高校選抜は10分にも武田から前線の染野に縦パスが入り、落としを受けたバイロンが強引にシュートまで持ち込んだ。

 そして14分、岡井から左中間でパスを受けた武田が左タッチライン際に張る水野へパス。斜めに切れ込んだ水野は、PAまで持ち込んだところで切り返すと、右足シュートをニアサイドのゴールネットに突き刺した。水野は「結果を出せてよかった」。ベンチのコーチ陣、サブ組とハイタッチしてゴールを喜んだ。

 24分にはエバートンに速攻からシュートを打たれたが、GK松田が冷静に対応。逆に高校選抜は、天笠とバイロンをMF秋山裕紀(前橋育英高→新潟)、FW宮崎純真(山梨学院高→甲府)に入れ替えた後半開始直後にも鈴木が個人技でPAへ切れ込むなどチャンスを作る。

 8分には、吉村のループパスを受けた後藤がDF1人を巧みにかわしてラストパス。これを宮崎が右足で叩いたが、ボールはわずかに左外へ外れた。直後に武田が放った左足ミドルもGKの手とポストを弾いて外れてしまう。

 守備面では朝岡隆蔵監督(前市立船橋高)が「今日はパーフェクトじゃないですか」と讃えた吉村が、エバートンの大型FWに対して空中戦を制圧。大石も粘り強い守備を見せるなど後方の選手たちに支えられた高校選抜は攻撃時間を増やしていた。

 だが、15分に武田の左足FKがゴールのわずか右に外れ、17分に吉村のど迫力ヘッドを起点に作ったチャンスも武田の左足シュートが枠を外れてしまう。この後、ボールを握られる時間の増えた高校選抜はセカンドボールを拾うことができず我慢の展開に。そして25分ハーフゲームの22分、サイドでのクリアを中央で拾われると、巧みなシュートを決められて同点に追いつかれた。

 高校選抜は直後に水野を左SB豊島基矢(青森山田高→順天堂大)へスイッチ。1-1で突入したPK戦では、武田、吉村、大石が決めたものの、2人目の染野の右足シュートが右ポストを叩いてしまう。PK戦を得意とするGK松田のセーブが期待されたが、止めることができず、3-5で敗れた。

 朝岡監督は始動当初から結果だけにこだわるのではなく、将来へ向けた刺激を選手たちに与え続けてきた。「やれることをやろうじゃなくて、新たなチャレンジをして、高みを目指していく」。その言葉通り、チームは戦術を理解しながら少しずつ向上し、最後の2試合は結果こそどちらも引き分け(エバートン戦はPK戦で敗戦)だったが、中盤の構成力とバランス、SBの攻撃参加、ビルドアップ、展開力、また守備でファイトする部分や切り替えの速さ、相手の前に入ってボールを奪う部分など個人、チームとしての成長を印象づけた。

 朝岡監督も「一個一個階段を上がってくる手応えを感じながらやっていた」とコメント。慣れない戦術に悩んだ選手がいたことも確か。だが、今後プロや大学、社会人のステージに上がっていく彼らは、様々な判断や戦術を求められることになる。朝岡監督は「このチームでそれを与えられたならば半分は成功。欲を言えば、決勝トーナメントへ行きたかった」と悔しげな表情を見せたが、選手たちの今後に期待を寄せていた。全国4000校、16万人の代表として“高校サッカー”で成長を続けた選手たちは、国内合宿や欧州遠征の貴重な経験を将来に繋げる。 

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2018
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第57回デュッセルドルフ国際ユースサッカー大会公式サイト(別サイトに移動します)

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