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[MOM603]早稲田大FW蓮川雄大(4年)_“5年生”の覚悟

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早稲田大のFW蓮川雄大

[4.28 関東大学L第3節 早稲田大1-1中央大 味フィ西]

 昨季王者の早稲田大が引き分けながら開幕からの連敗を2で止め、今季初勝ち点を挙げた。前半27分にCKのこぼれ球を押し込んで先制点を決めたFW蓮川雄大(4年=FC東京U-18)は「正直、勝たないといけないゲームだったけど、勝ち点を1に出来たのは大きい」と前向きに話した。

 覚悟の5年目に突入している。記者がその言葉を聞いたのは今年2月に行われた早稲田大の納会だった。大手企業への就職、教員……。卒業する4年生が進路を報告する中で、ただ一人、「ア式にもう一年残ります」と留年を報告した。それが蓮川だった。

 蓮川はFC東京の下部組織出身で、トップ昇格に最も近い選手として期待されていた。規格外の馬力。14年の天皇杯予選では早稲田大、国士舘大を連破する原動力となり、トップ昇格は間違いなしと思われていた。

 しかし当時、本人には迷いがあったという。そして同じFC東京U-18から大学に進学して急成長を遂げ、大学在学中にFC東京に復帰していたFW武藤嘉紀(現ニューカッスル)の存在が蓮川の背中を押した。実際、武藤にも相談する機会もあったのだという。だがその決断が蓮川に試練を与えることになろうとは。この時は考えもしなかった。

「僕自身、早稲田からオファーを貰った時点で、早稲田に行きたいという思いが強かった。その時点でトップチームに行っても試合に関われる自信がなかった。高校3年生の時に武藤選手が慶應から戻ってきてというタイミングだったので、僕もすぐに戻れればという“甘い”考えがありました。そこでプロで結果を出すんだという気持ちがあれば結果は変わっていたと思う。でも当時は自分に自信がなかったんです」

 MF相馬勇紀、FW岡田優希、GK小島亨介、DF冨田康平。のちにJリーガー4人を輩出する世代にあって、蓮川の知名度はNo.1だった。だが1年生の10月より歯車が狂いだす。左足の前十字靭帯を断裂。2年の夏に復帰したが、シーズン終了後の12月に今度は右足の前十字靭帯を断裂。約2年間のリハビリを経てようやく復帰が見えてきた昨年夏の練習試合で右膝の前十字靭帯を断裂。大学4年間で3度目の前十字靭帯断裂と不運に見舞われた。

 蓮川が入学してからの4年間、チームは激動だった。1年生の時は1部で優勝。しかし翌年はまさかの最下位に終わって降格となると、3年時に2部で優勝。1部に復帰した昨年は見事な優勝を勝ち取るシーズンになった。さすがに昨年の夏に怪我をした時は「引退して次の道に進もうかなと思った時期もあった」というが、目の前にあったのは同期の躍動する姿。未練を断ち切ることは出来なかった。

「続けるか続けないかは相馬だったり小島だったりには結論が出てから話をしました。でもその決断をリスペクトしてくれて、頑張ってほしいと言ってくれた。プロに進んだ4人は全員試合に出ていますし、僕にとっては刺激になっています。両親もお前にはサッカーしかないだろうと言ってくれた。心配かけましたし、迷惑もかけたので、その分恩返しがしたいんです」

「今はサッカーでこの先に進んでいくことしか考えていません。その自信があるからこそサッカーを続けています。もちろん、怪我をした事実がありますし、明日また怪我するかもしれない怖さはある。そこを乗り越えて自分がプロになることで怪我している選手の希望にもなると思う。3回怪我してもやれるという見本になりたいと思います」

 4月6日の19シーズン開幕戦。背番号11を背負った蓮川は、先発11人の中にいた。5年目にして大学リーグ戦初スタメン。学生コーチとして支えるしかなかった昨年のことを考えれば、外池大亮監督も「奇跡」と驚くしかない。蓮川の今年にかける思いの強さが、すべてを可能にさせた。

「昨年の(得点王の)岡田、(アシスト王の)相馬レベルの活躍が求められていると思う。今年はあの2枚が抜けたということをどの大学からも言われる。そこを埋めるだけの活躍が僕自身には求められているし、向き合っていかないといけないなと思います」

 4月21日の天皇杯予選となる東京都サッカートーナメント準決勝で、PKながら復帰後初ゴールを記録した。そして28日の中央大戦では、“大学5年生”にして自身関東リーグ初となるゴールも奪った。感覚が戻ってきた手ごたえも感じている。「外池監督からも、プロでFWとして生きて行きたいんだったらもっとゴールに貪欲になれと言われています」。自分の夢を叶えるために我を通した蓮川。周囲への感謝を忘れず、これからも貪欲に結果だけを求めて行く。

(取材・文 児玉幸洋)
●第93回関東大学L特集

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